2011年3月13日 のアーカイブ

途轍もなく長い一日だった、の巻。

このたびの東北地方で起きた巨大地震の為、

最愛の方を失った方々に哀悼の意を捧げます。

そして被災されています多くの方々に、お見舞いを申し上げます。


2011.03.11。

十五時出発で頼まれていた仕事の前に事務をやっていた。

そして、その出発の数分前から揺れが始まった。

最初の頃は大した気にも留めずに、

直ぐに止むだろう程度の気持ちでいたのだが、

揺れが大きくなり、

窓がギシッギシッと唸りはじめ鉢が落下した頃になって

やっと腰を上げつつあったのだが、

キリのよいところまでやろう、と粘る自分もいてモタモタしていたら

ロビンマスクの「避難しましょう」の声に促されて席を立つ。

この判断は、本来俺がやらないといけない。

これは今後への反省、猛省。

何はともあれ、ロビンマスクには感謝。


全員、下の駐車場に避難した後、

納品先への出発の準備をしていたら二度目の大揺れ。

見上げてみたら、周囲のビルが左右に揺れている。

これはいけない!、

早く納品を済ませてきてしまおう、と慌ただしく出発。

出発してみて気がついた。こんな事をしていてよいのだろうか?

もっとする事があるだろう。

何よりも、社員さんたちを早く帰宅させないといけない。

納品の遅れについては後日関係各位に謝りにいこう。

そう決めて、またも臨時の避難所に戻り

今日の仕事の中止を告げ、帰宅の段取りを話す。

荒川区新宿区葛飾区の居住者を北組として、

獅子丸を頭に鶴とロビンマスク、それに一昨日からの新人の方。

南は大田区の田沼美冬と絵島マリン、川崎の恩田すみれとで頭はオレ。

話した後、目の前で進行している仕事の段取りを組み直すべく、

依頼先との折衝に動くが電話が通じない。

致し方ない、急いで新富町の相手先に出向き土日の対応を依頼。

応諾してもらって、帰社してみると北組は既に徒歩で帰宅したとの事。


十六時二十分。

愛車のベガ号に南組の三名を乗せて出発。

出発して直ぐに昭和通りに出たが、

さっきまでガラガラだった通りには車がギッシリ詰まって動かない。

それでは!、と東へ迂回して清澄通りを南下、

これが図星となりスイスイと進めたが、

晴海通りを右折して勝鬨橋を渡河する辺りで、またも渋滞に捕まった。

暇にまかせて窓外の光景を眺めると、外は既に夕暮れ。

同じように、後部座席に居るロマンチストのマリンも橋の向こうで

ビル群に沈み行く夕日に見蕩れて、「キレイ!」とひと言。

思わず肩に手を廻したかったが、ほかの二人に遠慮してヤメておいた。

ベガ号はどうにか築地から市場通りを汐留に向かい海岸通りを左折。

首都高速1号羽田線の下を芝浦、品川と来たのだが、ココからが駄目。

天王洲を右折したのが、痛恨の命取り。

空前絶後の渋滞に遭遇してしまった。

この渋滞は何だ!。

オレは過去に、こんな渋滞に巻き込まれた事はないぞ!。

まさに渋滞のレベルは、鬼。

あーあ、こんなんだったら天王洲を大井競馬場方面へ行くべきだった。

不安がられるので黙ってはいたが、

オレの判断ミスで遅延を招いた事に、

申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


十八時四十分。

すっかり動けなくなった。

そして気温も下がり小雨もパラツキだした頃、

美冬とマリンは、ココで下車して徒歩で帰る、と言う。

昨夜も遅くまで働いてもらったから早く帰宅して休みたいだろう。

二人の居住地までをナビゲーションで計測すると残りは、5.2キロ。

ごめんよっ!。こんな所で降ろすハメに成ってしまって……。

残念無念だが、後の展開を思案したら止む終えない。

後顧に憂い感じながら二人を見送る。

後部座席のすみれを前に呼んで、再度出発といきたいが走れない。

そして、そのままズッとズッと走るには至れない。

ラジオから流れてくる情報は凄まじいものばかり。

お隣の韓国が救援の意思を表明してくれているけど、

日本は救援に行くばかりで、来てもらう事があるなんて……、

こんな事態に遭遇するとは、考えてもみなかった。

いやはや、なんと言うか改めて事の重大さを思い知る。

すみれとは、彼女との定番である愛の貧乏脱出大作戦や

ジャイアントコーンの話をしていたのだが、話題が途切れると、

先ほどの二人が心配で、頭がそちらに支配されてしまう。

二人ともいい女だから変なヤツに絡まれていないだろうか、

転居したばかりで土地勘も乏しいだろうから、道に迷っていないか。

忸怩たる思いでいたら豈図らんや、すみれの携帯に美冬からメール。

何でもマリンと飯を食っているとの事。

ホッとひと息。安堵、安堵の三度笠。不安から解放された。


二十二時零零分。

すみれがジャイアントコーン屋を目敏く見つけ、

それを買いに行ってもらっている間に下車して軽く体操。

久方ぶりに、足を地に着ける事が出来た。

そうこうしていたらマリンからも無事帰宅のメールが届いた。

やれやれ、なんだか仕事を半分だけだがやり遂げた気分。

現在地は、品川の南に位置する鮫洲付近。

ココは徒歩で帰宅した二人が下車した地点と彼女等の居住地の

真ん中あたり。

うーん、約三時間半で2.5キロか……。

すみれの家までは残り19.8キロ。

ココで残りの距離から推定到達時間を暗算してみる。

今迄走った2.5キロを3.5時間で割って、

残りの19.8キロを掛けてみたら……なんと残りは14時間。

呆れた!、魂消た!、途方に暮れた。

愕然としたが、

彼女を、心配して帰りを待つ親御さんの元に

送り届けるのはオレの使命だ。

それと序でに

昨日六本木に置き去りにしてきた罪滅ぼしもしたい。

兎に角、頑張ろう。


二十二時三十分。

なんだか、もうしわけないなあ。

営団地下鉄が動きだしたようだから、

あのまま待機させた方がよかったのではないか……。

そう思って、ひとりションボリしていたら、天は我を見捨てず!。

大井町を抜けた辺りで俄に流れ始めた、それも夢の時速40キロだ。

然し、その夢も続かない。環状七号線で又もつかまった。

そして二進も三進も行かなくなった。

これはもう勝負に出るしかないだろう。

馬込を過ぎたら住宅密集地に突入して獣道を中原街道に出よう。

ひとりブツブツと呟いていたら、隣からは寝息が聞こえてきた。


二十三時三十分。

上手くいった。

抜け道が図にあたって一気に突っ走れた。

さっきまでの落胆した気持ちは何処へやら。

どんなもんだい!、オレは何時でもタクシーに乗れるぞ、と

自慢げに話したら、寝息が豪快なイビキにかわっていた。

中原街道を越えて、多摩川を渡河して最後の直線、

南武線の下をヒタヒタと走り、到着。


二十四時二十分。

すみれの母上と初めて対面。そして娘の引き渡し。

得意の営業口調で、

すみれには、日頃から支えてもらい世話になっている事、

ヤクザなオレにいつも優しく接してもらっている事、

日々、遅く迄働かせていて申し訳ない事、

そして、今日は娘さんを無事にお届けした事。

四番目は口には出さなかったが、これらの謝辞を述べて一件落着。

母上にも喜んでもらえて、よかった、よかった。

なんだか、重大な役目を果たせてホッ出来た。


二十四時三十分。

すみれと彼女の母上に送られて出発。

彼女らの姿が見えなくなったあたりでブレーキを踏んで思案六法。

さて、これからどうしよう。

何処で寝よう?。

自宅のある千葉はガスタンクが引火したとかで

危険だから帰ってくるな!、と家内からメールが入っていた。

となると世田谷の母親のところか、大田の舎弟のとこか、

将又、荒川や北の子供たちの所か……。


何処って、考えるまでもなかった。

帰るのは、千葉の自宅に決まっているだろう。

危険とは言え、

家内は不安がっているだろうし、

幼い子供たちもこの手で抱きしめたい。

頑張れば鶏がなく頃には帰れるだろう。

これって、社長から父親に変身したって事だろうか……。


多摩川を渡河して駒沢通りから明治通りを抜けて新橋へ。

ここから市場通りを経由して清洲橋通り、

そしてとっておきの抜け道を通過して、

小松川橋を通って荒川を渡河出来たのは二十六時半。

14号の混雑が予想外だったので、新大橋通りに戻り

今井橋の通過は二十七時、千葉に帰ってきたぞ。

こんな時間なのに周囲は異様だ。

歩道には家路に向かう方が沢山の歩行しているし

車も地元のヤツではなく、

足立練馬ナンバーで車両の側面には社名が表示してある。

キッと電車が止まったから会社の車を利用してるんだ。

やっと357号に合流できたが、ここの渋滞もきつい、

それに今迄大人しくしていた、睡魔が襲ってきた。

ここで演歌のひとつも流したいが、

こんな日のこんな時に演歌を聴く事には後めたさを感じる。

然し、この際は掟破りだが仕方ない。許してもらおう。

遂に睡魔を打倒すべくiPodをオーディオにつなぐ。

越冬ツバメと雪国を聴いたら元気も回復。


二十八時。

二十八時は言い換えれば、午前四時。

普段なら魚釣りに出かける時間だ。

もしかしたら鶏に負けるのではないか?。

そんなつまらない事を考えていたら、船橋ららぽーとに到着。

ここらからは地元民のみぞ知る近道の海浜通りを選択。

液化上現象に驚きながらも走り抜け、

なんかとか二十八時四十分、自宅に戻れて、一件落着。

写真判定で鶏にも先着出来て、長い一日が終わった。

そして、大きな仕事をやり遂げられた充実感で心は満たされた。


終わってみて思う。

オレは年なんかとっていない、まだまだ頑張れる。

自信が回復してきたぞ。

長文失礼しました。

お仕舞い。


吉右衛門。



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