2012年6月17日 のアーカイブ

ぷりめろ閉店。の巻。


私は毎朝、判を押したように10時10分前に、

地下に在る馬喰町駅から地上に這い上がってくる。

ここでひと息もふた息もついてから、

息が整うと同時に姿勢を立直し、何事もなかったかのように、

目の前の交差点に向かって歩き出す。

そして、馬喰町の交差点を左に折れ

清洲橋通り、金物通りを経由して事務所へと向かう。

このコースは遠回りなのだが、

広く整備された歩道と、充実した街路樹の景観を楽しめるので、

このルートを辿ることを、朝のルーティン・ワークとしている。


或る日の朝、このルーティンに異変が起きた。

朝っぱらから、「時には娼婦のように」を口ずさみ、

いつものルートをとぼとぼ歩いていると、

いつもと違う光景に気がついた。

お世話に成っている喫茶店、

「ぷりめろ」のシャッターが降りたままなのだ。


果て、女将さんが病気でも患って休んでいるのか…。

胸騒ぎがして、道路を渡って近づいてみると

小さな張り紙に、“5月末日で閉店”、と書いてあった。

オッと吃驚!。

慌てて、顔見知りのお隣のパスタ屋さんへ

準備中の非礼を詫びながら確認に行くと、矢張りその通りだった。


衝撃だった。

女将さんは昭和42年からやってるって言ってたから、

足掛け45年だ。

よく考えてみれば、お年もオレより10歳くらい先輩だったから、

無理もない。

でも、寂しくなるなあ…。


オレ、この店には思い出が、沢山ある。

三遊亭画伯の誠意有る辞意を受止めたこと、

田沼美冬と旅行の夜の馬鹿話をして、へらへら笑ったこと、

……、

書けばキリがないけれど、

ミーティングが終わった後、

いつも女将さんには元気をつけてもらった。


45年も続けた店を閉めるって、どういう気持ちだったろう。

オレにも、「お疲れさまでした」のひと言を

言わせてもらいたかった。

あの元気で明るかった女将さんは何処に行ってしまったのだろう。

どうか、お元気でお過ごしください。


こうして、オレの廻りからひとりふたりと人が去っていく。

堪んないね。

梅雨空が身に沁みる、昨今だ。


吉右衛門。


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