2014年5月6日 のアーカイブ

「三年ぶりに会った福田う太郎はきれいになっていた」の巻、後編。


続き。


この階段を登ると改札がある。

彼女はそこで私を待っている。そして笑顔で迎えてくれるだろう。

それに対して、この緊張感はなんだ。

昔、別れた恋人にでも逢いに行くような気分ではないか。


彼女の姿が視界に入った。

矢張りだ。

彼女も私を見つけたらしく、満面の笑顔で手を振ってくれている。

まずい…。

そう思うと体制を整えるべく、トイレに逃げ込んだ。

鏡の前で息を吸ったり吐いたりを数回繰り返すと、

大分気分がほぐれてきた。

やれやれ、これなら大丈夫。

何事もなかったのように、トイレから出て、

「待った?」

何食わぬ顔で挨拶する、オレ。


駅舎を出て、彼女の後ろを歩く。

素敵な並木道だ。

少し前には桜の花が満開だったらしい。

サクラのアーケードか…。

爽快な気分に満たされながら、尚も歩く。

何処に連れて行かれるのだろう…。

てっきり、駅前のファミレスかハンバーガー屋にでも

行くのかと思いきや、どうもそうではないらしい。

何処に行くの?。疑問を吐き出すと、

ウチですよ。簡潔な応えが返ってきた。

そう言えば彼女は新築の家を手に入れたといっていた。

大したものだ。

オレの新婚生活といえば、

木造プレハブアパートを転々としていたものだ。


並木道が途絶えると、彼女のお宅があった。

新築のきれいな家だ。

招き入れてもらうと、新築のよい匂いが漂っていた。

そして通されたリビングはキチンと整頓してあり、

端の方には産まれたばかりの坊やの遊具が置いてあった。

彼女が私のために茶と菓子を並べてくれた。

私はそれを待って、居住まいを正す。

そして改めて、在職中に私を支えてくれたこと。

今回は快く迎えてくれたことへの礼を述べたのだが、

彼女は訊いていたのか、いないのか、笑顔を絶やさない。

そこで出てきた言葉は、昔とちっとも変わりませんね、だって。

それからであった。

昔話に花を咲かせ、近況話にも花を咲かせた。

二時間ばかり、お邪魔しただろうか。

楽しい時間は、あっと言う間だった。

「二コタマゴロウが待っているから、帰らなくちゃ」

そう言って辞すと、ほんのりと暖かい気分に包まれた。


お宅を後にしてから思った。

彼女の明るさと優しは昔のままだったが、

とてもきれいになっていた。

それは幸せをガッチリと掴んだ余裕からだろう。


昨秋には名古屋へ画伯を訪ねた。

そして念願のマリちゃんとも20年ぶりの再会を果たし、

今春にはヨッちゃんも交えて食事をすることが出来た。


思えば多くのよい人と巡り会えた。

オレの人生も捨てたものではないと思った。


お仕舞い。


文末に、

福田う太郎の幸せそうな近況写真と

私との記念写真を掲載します。


お仕舞い。


2014年05月05日(月)こどもの日。

吉右衛門。



























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