2014年5月16日 のアーカイブ
ひこうき雲のシネマメモ(^2^)
第2回目は吉右衛門様ついに
読破の「八日目の蝉」です。
あらすじは、衝撃的なキャッチフレーズである
「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」が
全てを物語っていると思います。
この映画の冒頭は、裁判での
本当の母親の独白で始まります。
私はその始まり方が好きで、
理由は舞台のようで、とても質素だからです。
希和子は法廷で
「四年間、薫(かおる)を
育てさせて頂いたことに
とても感謝している」と言い放ちます。
薫というのは、希和子が勝手に付けた
誘拐した赤ん坊の名前です。
彼女たちがどのような逃亡生活を送ったか。
また、それから10数年後の
現在の薫(本当の名前はエリナといいます)を同時に描きます。
エリナはあの事件の事を聞きたいと
尋ねてくる自称ライターの女と
誘拐犯である野々宮希和子と四歳までの自分が
辿った軌跡を追うことにします。
誘拐した母親を演じたのは永作博美さん、
大きくなった子供を演じたのは、井上真央さんです。
永作博美さんの演技は、よく言われる、
まさに体当たりというものだったと思います。
トイレで髪を鋏で切り落とし、
ホテルで泣き止まない
薫に出ない母乳を与えようとして泣く。
私はこういう女の人の鬼気迫る演技が好きなので
暗い話が好きじゃない方にはお勧めしません。(笑)
大学生になったエリナは
結局本当の両親の元から離れ、一人暮らしをしています。
四歳の薫は、両親を本当の親だと認識できなかったのです。
その溝は埋まらず、更にエリナは希和子と同じように
不倫相手の子を身籠ることになります。
NHKの明るいヒロインを演じた井上真央さんが
こんなに暗く、無愛想な役をやるとは思いませんでした。
笑わない彼女のはっきりとした顔立ちを見たとき
変な言い方ですがすごく綺麗で男性的なのだなぁと感じました。
お子さんのいる人には
この話はただ悲惨に映るかもしれません。
自分が他人行儀で観られるのは
親になれていないからかもしれません。
ただ!私がこの映画で
どうしてもイチオシしたいのは!!
二人の女優に負けず劣らず、
寧ろ色んな意味で食ったかもしれない、
フリーライターを演じた小池栄子さんです!!
彼女も実は秘密を抱えているのですが
脛をかじってライターをやっているという設定、
のっけからの挙動不審な態度に
清々しいまでの気持ち悪さを
感じるのです!(めっちゃ、褒めてます)
お気に入りのシーンはやはり
希和子と薫が別れる時ですね。
捕まるってことなんですけど。
「その子は、まだご飯を食べていません。
よろしくお願いします」って言うんですよ。
その子は私の娘です、とか
幾らでも泣き喚く事は出来たと思うんですけど
心の底から母親になりきっていたと感じる悲しいシーンです。
うわあ・・やめてくれーと思いながら(笑)
どわーっと泣きました。
私はあんまり映画館で
泣かない方だと思います・・・。
でもこれは堪え難かったです。
終始不安な緊張が走る映画ですが
とても明るい方向が見える終わり方をします。
そして、それは少しだけ小説とは
違う終わり方なのだそうです。
私は小説を読んだことはないのですが
映画にそのシーンをいれなくて正解だなあと思いました。
他人の子を誘拐するというのは許してはいけないことですが
希和子の姿は必死で、何故か感情移入してしまいます。
これもまた自分の為じゃないから
嫌悪感を感じないのかもしれませんね。
(言い換えれば自分のエゴの為に誘拐してるんですけど)
エリナの母親は、母親なのに
親になれなかった苦しみの所為で
自分のことばかりに重心を
置くことになってしまいましたから。
-『八日目の蝉』★★★★★
タイトルの意味は、蝉の寿命が七日間であることに関係しています。
映画を見るとその意味が、分かるんじゃないかと。
次回は洋画で、好きな映画
「羊たちの沈黙」を予定しております(^-^)