吉右衛門へら鮒釣り2011
第四回釣行 2011年05月25日(水)。
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豊英湖、
奥畑滝脇、豊英大橋第一オダ。 
豊英湖ボートセンター。
晴れ、概ね無風。
気温20度、水温不詳、水位不詳、澄み。    

豊英湖って、こんなにも素晴らしい処だったんだ、の巻。

上下二本の針に麩エサを付けて釣る釣り、両団子。
この両団子の季節が今年もやってきた。
恐らく全国で数千人はいるであろうへら鮒釣り愛好家のなかでもこの釣りが一番ヘタなのは何を隠そう、このオレだと思う。
既にもう丸四年を経過したと言うのに、未だに五里霧中で突破口すら見えてこない。本当に困ったものだ。そして更に困った事は本人がこの釣りに魅力を感じ、これこそがへら鮒釣りの王道、と思っている事だ。
今年はこの季節を迎えるにあたり、エサのモデルチェンジを断行しようと思う。そう、エサのメーカーを替えるのだ。最近、やっとオボロゲながらではあるが、旧来使用していたエサ袋の特性が判りつつあったのにだ。
これまで使用していたエサとの出会いは2008年秋、埼玉県入間市の釣具屋さんに浮子のオーダーメイドに出向いた頃まで遡る。
この辺りの件は、その頃の釣行記に散々書いた気がするので端折らせてもらうが、あの時、浮子の製作についての打合せを終えると話題がエサに移った。するとご主人が作り方の実演と、作ったエサを用いて水中でのエサの動きを事細かに解説してくれた。
ここで口酸っぱく言われた事は、麩が壊れるので絶対に練ってはならない事、釣れなくてもあっちのエサこっちのエサと浮気をしない事、この二点だった。この秘伝を守るべく自分なりに頑張ってみたが、どうにも操を貫き続ける事に苦しさを感じ始めた。
一番困った事は、時の経過とともに作り方や仕上がりの軟度が段々と忘却の彼方へと消えていってしまった事。それでも、
「麩が壊れるので練ってはならない」。この教えだけは守ってきたつもりだが、反ってこの言葉が足枷と成り出来たエサがいつも脆弱になってしまう。もう何と言うか、やればやるほど、考えれば考えるほど、何が何だか解らなく成ってしまった。
所詮は遊びなんだから律儀にうろ覚えの事に縛られず、自由気ままにやればいいのだが、不器用で愚直な性格が邪魔をしてそうも出来ない。何と言うか熱弁を奮いながら教えてくれたご主人に気兼ねをしてしまうのだ。この前もご主人が、
「三名か宮沢に来れば桟橋でもう一度教えてやるよ」、と言ってくれたが自分なんかの為に、と思うとどうにも腰が引ける。
このエサのモデルチェンジを断行すると、釣れない原因をエサに求めているようだが、これは断じて違う。うまく表現出来ないので書くのはヤメるけど……、強いて言葉にすると、自分にハメた呪縛から解放されたい、とでも言う事に成るのか。

さて釣りの事。
今回は豊英湖に行こうと思う。
正直、密かに練った今年の釣行予定リストの中に豊英湖の名は無かった。今更だが今季の予定を書き出すとメインイベントは今年も戸面原ダムの立木シリーズ。これを真夏に行い、他は三島湖を主体として考えていたが、今回に限ってはちょっぴり浮気をしてみたく成った。そこで浮かんだのが豊英湖だ。
然し、彼処へ行くのには少々の不安がある。今年から管理者が交代した様なのだ。自分は人見知りがきついから初対面の方との相対が苦手だ。そこでリトマス試験紙を使った反応実験のように、事前に恐いもの見たさに電話を試みた。
吉「あのお、ひとりで釣りに行きたいのですが……」
管「釣りにって、何を釣りたいのっ!」
態度のデカそうなオヤジが出てきて、胡散臭そうに聞かれた。
吉「一応、へら鮒ですが……」
管「ふーん、それでやった事はあるの?」
吉「丸四年やって、今年が五年目です」
管「なあんだっ、じゃあ宙も底も出来るんだ」
痛い所を突かれた。
吉「底は出来ません、宙だけの初心者レベルです」
大丈夫かなあって感じで、
管「舟でやるんだけど、舟をロープで岸には着けれるの?」
吉「戸面原でちょっとだけやった事があります……」
管「それじゃあ大丈夫だな。釣らせてやるからおいで」だって。
オレの中での管理人の印象が、態度のデカそうなオヤジから面白そうなオジさんに変わったので、最後に一言付け加えておいた。
吉「オレは10匹釣れれば、ご機嫌ですから」、と。

午前四時。
千葉の自宅を出発。
いつもの道を、いつものように走り最終コーナーで三島湖コースに別れを告げて豊英湖到着。
出舟時間は調べて来なかったが、既に誰も居ないから出舟の喧噪は終わった模様。時計をみると、午前五時二十分。
ここで管理人さんと初対面、なあんだ普通の人じゃないか……。
先日電話した者です、と名乗ったのだがキョトンとしているので、既に忘却したようす。忘れられてもいいような事なので、まあ、どうでもいいや……と入釣ポイントを尋ねてみたら、タツボの立木と上流の滝の手前を紹介してくれた。タツボの立木は昨春に検量台付近で竿を出した帰路に見学したから認識は出来るが、上流の滝の方は未踏の地だ。
どちらにしようか……。
着舟で選ぶならタツボ、景観で選ぶなら断然滝だ!。
そんな事をひとしきり思案し、礼を言って退室。

午前五時三三分。
一年ぶりに桟橋に立った。
軽いラジオ体操と写真撮影をして、最初の目的地であるタツボに向かい出航。

釣行記写真
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豊英湖の桟橋模様。

駐車場に停車していた車両の数は十二台。そこから推定して今朝の出漁者の数は十五名から二五名くらいだろう。それを念頭に、朝の景色を楽しむべく逆向きに漕いでの、ひとり旅。
先ずは川又の角と水路に釣り人を発見、更に野中を過ぎてタツボに入ると、衝撃の光景が目に飛込んできた。
残念でした……目的地のタツボの立木は既に売り切れでした。
なんだチキショー、こんな事ならもっと早く来ればよかった…。
仕方が無い、もう消去法で上流の滝に進むしかない。
検量台を通過、昨年二月に入釣した時は杭に舳先を留め、正面の炭焼き小屋に向かってエサを打った記憶が有るが、あの時の杭が無くなっている。
ここから先は自分にとっては未踏の地。カーブを過ぎると右側に
草を被った看板があり傍に行って捲ってみると「一土対岸」。
ここが一土かあ、初めて来たが名前に馴染みがあったので処女地のような気がしない。少し嬉しく成り、更に進むと滝があった。
ココかな?。自信が無いので事務所に電話すると、もっと先にあるポンプの向こうとの事。
…………。
新たな滝を見つけた。
再び事務所に問合せたら、ココだと言う事。
今日は絶壁から流れ落ちる滝壺の傍の、何とも贅沢な空間で釣りが出来る事となった。滝と言っても石川さゆりが天城越えで歌う「浄蓮の滝」のような大層な代物ではないが、これはこれで充分楽しませてくれるだろう。

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本日の入釣場所の、正面図。
左前方に小さく見える看板は「奥畑道跡」。

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入釣場所の、上流図。
滝壺がチラリと見える。
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◯本日のデータと予定。
・目標/二十枚(豊英湖の過去最高釣果は十九枚)。
・竿 /嵐馬.12尺。
・浮子/忠相グラスムクトップ.10番。
・鉤素/450粍+600粍。
・餌 /天々.1+グルバラ.1+GTS.1+粘力1杯+水.1
    +スーパー団子1。
    (数字の1は200cc)
・予定/納竿、15:00。

午前七時十分。
ワクワク感で胸がいっぱいだ。
釣りを初めてから、最高のロケーション。
渓谷の岩盤に舟を留め、滝の音を感じながらの釣りなんて、贅沢の極みで言葉も出ない。
豊英湖ってこんなにも素晴らしい処だったのだ。そう思うとエサのメーカーがどうだとかは、どうでもよく思えてきた……。
さあ始める。
期待をもっての、第一投。そして二投、三投、四投……と続き、大凡三十分を経過したものの、まったく反応が無い。
ここらで冷静さを取り戻してくると、不安要素ももたげてきた。思い起こせば、今朝桟橋を出航してから今の今まで、モジリはおろか魚の顔すら拝んでいない。
景色に浮かれてはしゃいでいたが、これはマズくはないか?。
それに先発で作ったあのエサ。あれは2008年に桟橋で教わったレシピで作ったが、軟度はあんなものだったか?。少し硬く感じたが……、間違えがあったとすれば、粘力の扱いか配合かだ。
不安で仕方がないから、もう一種類エサを用意する。
・ペル軽.2+天々.2+水.1(数字の1は200cc)。
こちらの方が嗅覚への刺激が大きいと感じたので、反応が出る事を楽しみにしたが、またも虚しい結果に終わった。
…………。
然らば、次はハリスの延長。
・鉤素/600粍+750粍、
これでエサの浮遊幅を300粍増やせる。
今度こそ、と好結果を期待するもどうにも結果を得られない。
前回の三島の桟橋では浮子が動くまでに二時間を要したが今回も負けてはいない。時計の針は九時少し前まできている。
エサが駄目、ハリスの延長も効果ナシ、という事は次は竿の交換と成るが、さてどうする。
今日は偶数竿を各種持参してきている。浮子が動かないので交換するなら延長、と言う事に成ろうが14、16、18のどれにしよう。いつか何処かの誰かが野釣りの竿交換は四尺刻みで、と教えてくれた。さすれば16尺となるのだが、あの竿は前々回の戸面原で大活躍した竿。出来る事なら栄光に傷はつけたくないが……。

午前九時。
出来る事なら使いたくなかったが仕方が無い、16尺登場。
・嵐馬.16尺+忠相グラスムクトップ.12番。
再開するも不安だらけ……。
これも駄目だった場合はどうすればよいのだ……?。
エサ、ハリス、竿の次に交換するのは場所、と言う事に成るが、出来る事なら、この場所は離れたくはない。何せ、こんな素晴らしい場所で糸を垂らせる事は滅多に無いのだから……。
然し、朝から浮子が一度も動いていない。これをこんな小細工ばかりで好転させる事は出来るのだろうか……?。
それとココには魚が棲息していないのではないかっ!。一匹でも居たら悪戯のひとつくらいはしてくれるだろう。それがまったく無いという事は、魚が回遊して来ない限り、未来永劫ココに置き去りにされるのではないか……?。
こんな事をブツクサ呟きながらエサを打っていたら、更に三十分が経過……ご愁傷さまだが、
ココで遂に疑念が確信へと変わった!。
そう、ここには魚が居ないっ!、と。
…………。
最後の切り札であるエースの16尺でも駄目だった。
ここは残留か潔く撤退かの決断をするしかあるまい。
滝の音を聞きながら座して死を待つか、一気に打って出るか!?。
散々迷って出した結論は、釣果を得る為に転進をはかる事。
ウジウジと未練たっぷりではあったが、この決断に至った決め手は、先ほどから仲よく成ったブラックバス釣りの青年の一言。
「上流ではへらが群れて泳いでいるのが見えましたよ……それにへらの釣り師も二人しか居なかったです」。
…………。
先日、大名人が釣行記の掲示板に書き込みをしてくださり、その文言を思い出した。「例会戦士は上流に向かう」、と。
オレは例会とは無縁だが今回は上流へと転進しよう。そこで携帯電話(i-Phone)で大名人のブログを呼び出し、これを羅針盤に舟を漕ぐ。

午前九時五十分、
何て素晴らしい日なのだろう。
まるで川口浩探検隊の一員に加わって、ジャングル探検に行くかのよう。この歓びのワクワク感とウキウキ感とで小さな胸が埋め尽くされた。鍵掛け橋を通過する頃には、川幅も随分と狭くなってきたし頭上の樹木も原始っぽい。これがカヌーだともっと気分が出るのだが……。
つまらない独り言を言っていると、一気に視界が拓けて釣り人に遭遇した。どうやら目的地に到着したようだ。この辺りにもう一人釣り師が居て向かい合ってエサを打っている。その間を恐縮しながら通過すると岩盤に突き当たった。さて、ココはどっちに行くのだ…?。再び携帯電話を取り出してブログを見ると、写真で判断出来た。ここは左に向かうようだ。そしてこの水路の向こうの方にも、釣り師が一人。
…………。
大名人(私が勝手に付けさせて頂いている呼称)こと山田さんの
ブログ(五月四日の記事)を見ながらココまで辿り着けた。帰宅したら御礼のコメントを書き込んでおこう。
いつもご丁寧な解説とイラストをありがとうございます。
お陰さまで憧れの豊英大橋まで来る事が出来ました。

午前十時四十分。
移動に一時間をかけたが、この場所もワクワク感いっぱいのロケーション。あの水路の先は、川又から分岐する峠坂の水路とつながっているのではないか(帰宅して調べたら違った)。
適度な処に舟を留め、先ほどと同じ12尺で始動。
ココには魚が居る。歓迎してくれた魚が直ぐに浮子を動かしてくれて、大願成就は間もなくだ。息を凝らして見ていると、
ありがとう!。この日の第一号が釣れたのは、十一時ピッタシ。
…………。
ちょっとナジミ幅が少なく成ってきた。そこでエサを大きくしたり少し強く付けたりでナジミ幅の確保だけは優先する。
この対応がよかったのか、三十分で七枚も追加。
これはいける、とほくそ笑んだが……いかない。
十枚目が釣れたのは十二時十分。そして十三時でも十二枚。
釣れなく成った原因は技術よりも、緊張が切れてしまった事。それとあまりにも素敵な体験にハシャギすぎた。

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本日二度目の入釣場所の、正面図。
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午後十三時。
本日ただ今の釣果、十二枚。
くたびれたので、納竿予定を二十枚達成時もしくは十四時の早い方にして、下針にグルテンを付けて最後の時を過ごす。
・餌/α21.1+水.1.5。(数字の1は50cc)。
グルテンの効果は絶大。浮子が直ぐに元気を取り戻して二十枚達成は十三時四十分。予定ではここで終わる筈もヤメずに続行。
そして十四時に成ってもヤメない。
今ヤメると、帰路に橋の下の釣り師の間を通らないといけない。フラシを下げているのでどうやら例会らしい、それを邪魔するのは何とも辛い。こんな尤もらしい理由をこじつけたが本音は、朝の情熱が蘇ってきて、どうにもヤメる気が無く成った。

午後十四時。
俄然元気を取り戻し、エサも両団子に戻して再開。
三十分で三枚を取り上げた時点で思い出した。
そうだ、そうだった。今晩はナゴヤでダルビッシュが投げるんだ。昨夜からあまり寝ていないので早く帰宅して一眠りしてから観戦しよう。そう思うとあっさりと納竿、本日の釣りを終える。
それにしても何と言うか、素晴らしい一日が体験出来た。午後は少しダレたものの、ズッとワクワクしながらの時間を過ごせた。
今日の釣りが今後の釣行へ与える影響は大だと思う。
最近停滞気味だった釣行意欲がひと頃のように燃え上がってきた。名残惜しい光景ではあるがロープを解いて、一件落着。
桟橋へと帰る。

お仕舞い。

釣行記写真
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入釣場所から見た、豊英大橋。

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上記の写真の、逆光景。

○本日の釣況。
・奥畑、滝壺脇。
 07:10〜08:50、12尺天々/零枚、両団子。
 09:00〜09:40、16尺天々/零枚、両団子。
・豊英大橋、第一オダ。
 10:40〜13:00、12尺天々/12枚、両団子。
 13:00〜14:00、12尺天々/10枚、グルテン。
 14:00〜14:30、12尺天々/3枚、両団子。
・合計 二十五枚。
・七寸五分〜壱尺零寸零分。

○2011年データ。
・釣行回数/4回
・累計釣果/272枚、平均/68枚。

2011年05月30日(木)
吉右衛門。


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