豊英湖、
公会堂禁止ロープ手前。
豊英湖ボートセンター。
曇天時々晴れ、概ね無風。
気温22度、水温不詳、水位不詳、澄み。
豊英湖へもう一度行ってきた、の巻。
近々、週刊へらニュースに本業の広告を掲載する。
それについて、この釣行記で宣伝をするのは掟破りだと思う。
然し、自分にとって特筆とも言える出来事だけに、このページを借りて、ちょっとだけ宣伝をさせてください。
企画内容は、
「釣り場のポイント図をつくりませんかー分かりやすいデザインのカラー地図でお作りしますー」、と言うもの。
掲載回数は七月〜九月の第一週に合計三回を予定し、紙面もありがたい事に、表4(最終面)を使わせもらう。
今回この企画を立てた動機は、ひと口で言うと、
媒体を用いて自社製品を世間に広告宣伝をしてみたかった事。これに尽きる。
普段から仕事の受注と言えば、公共の文化施設(博物館・美術館・動物園)との直接取引と展示会・見本市業界からの請負とで、他の世界にも目を向けたかった。
そこで思いついたのがへら鮒業界にオーダーメイドのデザイン看板を販売する事。何と言っても自分もこの世界にお世話に成っているし、各釣り場にウチの事務所で製作したポイント図看板を置いてもらえらば……なんて、夢をみさせてもらった。
掲示面には地図上のポイント名称表記のほか、前日の釣果、出舟及び帰舟時間、放流情報等の、釣り師の望む情報をカラー印刷で分かりやすく表示するつもりだ。
あまり安価なものではないから、ご購入頂くにしてもご負担は少なくないと思う。然し、可成り良い材料を用い手間隙も掛けて作るので、お客様にご満足いただける自信はある。
まあ、この釣行記で宣伝をするのは本意でないので、このへんでヤメておくが、一報を頂ければ何処へでも飛んで行くつもりなので、果報を待ちたい。
昔から釣りに出かけるのは、未だ夜の明けぬ暗いうちから、と言うのが相場であった気もするが、既に青空が広がっている。
時計を見ると午前四時三三分、これから向かっても六時には着くだろう。これは暦の夏至を二週間後に控えた朝の事。
今日も大自然に囲まれた処で糸を垂らす……。そう、前回の余韻が今だに冷めやらぬ、豊英湖へ行くのだ。
道中略…………。
予測通りだ、午前六時ピッタシに豊英湖到着。
早速、管理人さんに入釣場所の案内を乞う。
吉「先日はありがとうございまいました。今日もよろしくです」
管「うんっ、今日は公会堂がいいよ」
地図で場所を説明してくれ、両手で魚の大きさを表しながら、
管「ココは、こんなデカイのが釣れるよ」だって……。
参ったなあ、折角だがオレの腕前では大きな魚は手に負えない、
吉「オレはヘタだから、デカイのは釣れないのですよ…」
と泣きをいれると、
管「大丈夫だよっ、スレだったら立上げればいいんだから……」
だって……。
吉「????」。
駄目だ、オレの話術が通用しない。
ありがとうございましたっ、と御礼の言葉を述べて退室。序でに川又方面も見に行くと、一級ポイントの角が売れ残っていた。
こっちの方が良さそうだな……。
再び事務所へ舞い戻り、川又での竿の向きと型とを質問すると、竿は対岸の松に向け型は大橋と同じ、との事。
なるほど、どう考えてもコッチの方がオレには向いていそう…。
然し、今は両団子に挑戦中の身だから、難易度の高い方に挑戦した方がよいのでないか……。意外な選択をする自分に驚いた。
いつもは楽な方、簡単な方を選択するのに、だ。
午前六時十五分。
「ヨーソロー!」。
朝靄のなか、ワレ公会堂ニ向ケ桟橋ヨリ出航ス。
自宅を出かけた時の青空は今は無い。ベットリとした灰色の雲に覆われている。この色は印刷用語で表現すると、スミ色40%。
この泣き出しそうな空色のもと、今日もひとり旅を始める。
本湖に進むのは二度目。そう、遠い昔にも一度だけ経験がある。
温故知新。
思い起こせば古の入間市在住の頃、所属していた釣り会の方が浅草へら鮒会の例会に参加するとやらで、連れて来てもらった事がある。あの時は何処かの立木に舟を留め数匹の釣果を得た後、不覚にも眠ってしまい、雨粒によって起こされた。
あれは、いつの頃であったか……?。
そうだ、思い出した。娘が誕生して間もない頃だったから、三三年前だ!。三三年前と言えば昭和五三年。オレはまだ二五才くらいの青瓢箪で、最初に就職した町工場と決別した頃だ。
閑話休題。
ポイントを覚えるため、名称の表記がしてある看板を見つけながら進む。出航した直後、視界に飛込んできたのが「橋跡」、背後の樹木にロープが垂れ下がっているからわかりやすい。次は右舷に「清水正木」、これは何て読むんだ…?。しみずせいぼく、きよみずまさき、よく分からない。それと着舟も難かしそうだから、オレとは縁が無さそう。
更に進んで右に大きく曲がると狭隘な水路があり、ココをくぐり抜けて公会堂へと進むのだが、水路の向こう側には既に竿が出ていてお目当ての看板もあった。近づいて読んでみると「堀切」。
狭隘な水路を抜けると視界が大きく広がり、今日も滝を見つけた。そして靄で霞んでいるが向こうの方にブイが見える。あれは何だろう、禁止区域との境界ラインか……?。
そう思って進んでいると、この日四枚目の看板は「公会堂」。
なあんだっ、もう目的地周辺に到着してしまった。と言う事は、あのブイは境界ラインで間違えなかろう。それにしても公会堂と名が付いているからには、建物の存在が気になる。ココへ来る時に、そんな大きな建物は目にしたかなあ?。まったく気付かないから、舟木一夫がリサイタルを開催するようなスケールではなく、地元の方が集会で利用する程度のものかもしれない。
何れにせよ、帰りに確認しておこう。
…………。
さて何処に舟を留めればいいのだ……?。
境界ラインまで行ってみたが、落着き先が見つからない。
仕方がないから、管理人さんに電話で聞いてみる。
「もしもし、公会堂に着いたのですが留める所が分かりません」
「ボサがあるからさあ、ボサが前に出た所に留めるんだよ」。
ボサと言われてもなあ、ボサが何であるかが判らない。
「あのお、ボサッて何でしょう……?」、聞いてみると
「えええっ!?、ボサが分んないのっ!ボサはボサだよ」だって。
あらあら、こりゃ駄目だ。自力でなんとかするしかない。
…………。
改めて考える。
管理人の言葉をヒントとして考えるに、出っ張った草むらの様なものがあるに違いない。然し、オレの数少ない経験では舳先は頑丈な立木等に結び、左右のロープは大きな三角形が出来るように広げて着けるから、問題は舳先の固定先だ。
ウロウロしてみて草むらの代わりに、境界ラインの約20m手前で先人が束ねた枝群を見つけた。然し、束ねてあるとは言えこの様な脆弱そうな枝群に、立木の代役が務まるのだろうか……?。
不安で仕方がないが、ここまできた以上は、やれねばなるまい。
嫌だなあ、蜘蛛の巣に手を突っ込み何とか完成させたが大丈夫だろうか……?。風に依る揺れも不安だが、この薄気味悪い湿気の奥に蛇が棲んでいまいかと心配だ。以前、峠坂の赤松で大量の蟻が乗船してきて閉口した。蟻くらいならまだいいのだが……。
◯本日のデータと予定。
・目標/十枚。
・竿 /嵐馬.13尺。
・浮子/忠相グラスムクトップ.10番。
・鉤素/600粍+750粍。(長さは不変で望む)。
・餌 /天々.1+グルバラ.1+GTS.1+水.1+スーパー団子1。
(数字の1は200cc)
・予定/納竿、15:00。
午前七時半。
期待半分、不安半分。
期待は雄大な自然の処女地に竿が入れられる歓び。
不安は場所と蛇と釣果。前回の滝壺脇もそうだったが魚の気配がまるで感じられ無い。それと何より、
管理人の言った場所はココで正解なのか……?。
正解だとしても魚は棲息しているのか……?。
棲息していないまでも、採餌回遊路となっているのか……?。
よく考えてみると不安の方が圧倒的に大きかった。そこで、先述した期待半分不安半分を、期待2不安8に訂正したい。
…………。
準備が出来たが今日は始める前に、ひと事。
生意気だが、今回はハリスの長さは不変で臨みたい。そのココロは修正項目が沢山有ると悩んでしまうので、今回に限っての修正はエサと竿のみで行うつもりだ。
…………。
能書きはさておいて、エサ打ち開始。
いつになく積極果敢な姿勢で挑むが、完全に肩すかし。
三十分、六十分……何の反応も無い。
こうなってくると先述の不安がもたげてくる。
矢張り場所が違うのではないか……?。
頭上からガサガサと聞こえてくる不穏な音は……何だ!。
釣れないし気味が悪いし、どうしよう……!?。
今日は余程の事がない限り、最後迄ココで頑張るつもりだから、早く不安を打ち消すような事に出会えればよいのだが……。
午前九時。
開始九十分を経過して、最初の800cc攻撃が終了。
残念な事に反応が皆無であったので、配合替え(天々2+SD2+水1)を思いついたが、同じエサを前回の半分で作成。そして粉に吸水をさせている間に写真撮影をしていると、レンズを通して、本日初のモジリを発見出来た。
場所は穂先の先、十尺の位置か。
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入釣場所の、下流図。
写真奥に見えるのが、ダムサイド。 |
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写真なんか撮ってる場合じゃないっ!。
エサを急くように完成させ遮二無ニ打っていると、とうとう浮子が動いた。更に嬉しい事に、浮子が垂直に立ってから沈下運動を開始するまでの間に、間(ま)も出来だした。
これってハリスが弛んでいる時に、魚がエサに反応している事を知らせる、サインだろっ?。
好機到来!。
ココで少しでも浮子が動いたら仕留めてヤルっ!。そう心に決めてグリップを固く握りしめるが……アレっ?。魚信が無くてトップの動きも頼りない。これじゃ駄目だ、と七転八倒してみるが、二進も三進もいかなくなってきた。
…………。
カラツンの出るエサは正解間近の80点。と聞いた事がある。だとすればこのエサは80点未満と言う事だから、先ずはエサの点数を上げねばなるまい。
そこでエサを改良。
・天々.1+グルバラ.1+GTS.1+粘力1匙+水.1.25+SD1
(数字の1は100cc)。
水を25%増量して大分軟らかくした。そしてその副作用で発生するベトベト感は粘力を使ってカバーするつもりだ。
午前九時四五分。
待望のカラツン発生、どうやら80点のエサが出来たようだ。
さあゴールは間もなくだ、と期待を抱くがが甘くはない。文字通りのカラツンばかりで針が魚の口に掛からない。
エサの軟らかさは、今が限界。これ以上だと操れない。
さあどうする……?。
どうするって、どうにもならないから落ち込みのカラツンを見送ってみよう。浮子を凝視する事、数秒。
シメたっ!、ナジンだ直後のツンで仕留めたぞっ!。
先ほど、慌ててぶん投げたカメラを拾って無事に記念撮影。
いい絵が撮れた。
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本日の、第一号。
デカ頭だが取り込んでみると、壱尺弐寸半。
其れ程、大きくはなかった。 |
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嬉しいなあ。
苦節二時間半、紆余曲折の末、自分の書いたシナリオ通りに事が運び大願成就出来た。嗚呼、この快感。
舟上でひとり祝杯をあげていたら、また釣れて、二連荘。
釣れてくる魚の大きさからして、枚数は伸びないだろう。けれども二桁の確保は出来そうだ。そう期待に胸を膨らませて続けていると、俄に雲行きが怪しく成ってきた。
いくら何でもちょっと早過ぎるんじゃないか……。釣果につながったナジミ後のツンは無くなり、浮子の動きも鈍くってきた。
何だ、もう終わりかいっ!。
今泣いたカラスがもう笑う、なんて諺があったが、まさにその反対。暗澹たる気分に陥りそうな処で、午前の部終了。
午前十時半、休憩。
コレ迄の釣果について、頑張って二枚釣ったと満足するか、苦労の割に二枚しか釣れなかった、とすべきか。コロコロと変わる自分の気持ちに戸惑うが、釣況とは逆に生気の蘇ってきた空をみていると、こんな事はどうでもよくなってきた。
ココの空は航空路にでも成っているのか……?。
時折、天高く飛行機が飛来してくる。そしてその遥か下を鳶が飛行している。面白いからそれを比較してみると、人は鳥を模倣して飛行機を発明した事がよく分かる。
午前十一時。
燃え尽き症候群とは大袈裟な表現だが、二枚釣った事への評価は満足の方がズッと大きかった。依って、未だ時報も聞こえて来ないのに、既に満腹気分。
然し、いくら何でもココでヤメるのでは早すぎるだろう。そこで少しでも刺激に成ればと竿を11尺に短縮して戦闘続行。すると直ぐにだ。ありがたい事に、鋭くて大きな魚信が戻ってきた。
コレなら釣れるのではないかっ!。そんな期待は往々にして裏切られる事が多いのだが、ありがとう、無事に釣れてくれた。
ココの魚はどうやら二枚がセットのようだ。今回も前回のリプレイを見るような二連荘。
そして、この後も同じように深い眠りに突入し、次に釣れたのは七十分後の、正午半。
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本日釣れた魚の、サイズ。
概ね、管理人さんから聞いていた大きさだ。 |
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午後十三時。
本日ただ今の釣果、五枚。
最後の戦闘はグルテンで挑む。
・鉤素/100粍+600粍。
・餌/α21.1+水.1.5。(数字の1は50cc)。
打ち始めた数分後、鋭く魚信って直ぐに釣れはしたが、玉で掬った魚をよく見ると、残念でした、針が刺さっていたのは下唇の下で顎の部分。これは俗に言うアッパーカットだから、カウントは駄目。その直後、二枚セットの法則で、またもや針に掛けたが、魚が顔を拝ませてくれない。竿が満月と言うかグニャッと曲がったままだ。釣行記の前々号で浮子を揃えた理由を書いたが、この竿もそう。色が赤いと言うだけで買い揃えてしまった。購入した時の店員さんの言葉を思い出す。この竿は軟調子なので混雑した時や並んで釣る時は、周囲に迷惑をかけるので使えません、と。
そんな事を思い出しているうちに、魚も観念して玉網に納まり、六枚に成った。
…………。
もう、この辺でいいや。
どうした事か。折角釣れたと言うのに、ヤル気と気力、そして情熱までもが無く成った。
これでは続行してもロクな事はないだろう。そう判断して、突然の納竿と相成る。時計を見たら、十三時半。
最初の魚を釣った時の満足感もだが、仕事の合間の強行軍が堪えるようになってきた。矢張り週半ばの釣行はキツい。
というわけで、何だか変な一日と成ってしまったが、一件落着。
帰りも看板を見つけながら、桟橋へ戻るとしよう。
お仕舞い。
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今回も雄大な自然のなかで釣りが出来た。
この滝の下流(写真の右側)に、入釣場所が有る。 |
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○本日の釣況。
・公会堂、禁止ロープ手前。
07:30〜10:30、13尺天々/2枚、両団子。
11:00〜12:50、11尺天々/3枚、両団子。
13:00〜13:30、11尺天々/1枚、グルテン。
・合計 六枚。
壱尺弐寸零分〜壱尺弐寸五分。
○2011年データ。
・釣行回数/5回
・累計釣果/278枚、平均/55.6枚。
2011年06月17日(金)
吉右衛門。 |