三島湖。
桟橋。
ともゑ釣舟店。
晴天、微風。
気温26度、減水1.2m、水温18度、水色澄み。
五月晴れの桟橋には魚が沢山居た、の巻。
西城秀樹さんが二度目の脳梗塞を患ったという。
この報に触れたのは四月の上旬の頃。
ちょうど自分が手術後半年の検査で入院する直前であった。
西城さんと言えば七十年代後半の大スター。新御三家の筆頭だ。
確か八年前の今頃、
懐かしの名番組「ロッテ歌のアルバム」の復刻版が観れると言うので、中野サンプラザに出向いた事がある。
司会は「一週間のご無沙汰でした」でお馴染みの故玉置宏さん。
三田明さん、あおい輝彦さん、錦野旦さん、大場久美子さん…、
この多彩な出演者のトリを務めたのが、西城さんであった。
大盛り上がりのステージで、西城さん登場。
玉置さんとの軽妙な遣り取りの後、
観客にYMCAの振りを練習させてから、熱唱された。
自分も慣れない手振りで女房共々、一生懸命、歌い踊った。
あの頃の西城さんは一度目の梗塞から復帰したばかりで、
オレは大きな元気をもらって、落涙してしまった。
以来オレは、西城さんのファンと成った。
西城さんが出演する歌番組、トーク番組は積極的に視聴した。
その西城さんは今、
鳥のさえずりや道端の花にも感動しているという。
そして、アナウンサー教本までも購入して、
リハビリに励んでおられるとのこと。
オレのような馬鹿で怠惰な人間は、凝りもせずに繰り返すが、
西城さんは病気と真正面から向き合い、
それを克服した筈であっただけに、オレは悔しい。
……、
♪ヤングマン、さあ立ち上がれよ......
ゆううつなど吹き飛ばして、君も元気出せよ......。
オレを心から元気づけてくれた、この歌。
そしてこの歌を、もう一度聴きたい。
西城秀樹さんの復活を祈ってやまない。
五時半、
愛車に荷を積載して、ナビゲーションをセット。
数秒後に算出された到着予定時間は、七時。
七時かあ…。時間の確認をしてから傍らのiPhoneで、
ダイヤルした先は、三島湖ともゑ釣舟店。
そう、今日は昨年一度しか竿を出せなかった三島湖へ行くのだ。
そして電話に出てくれた奥さんに、
今から、千葉の自宅を出発すること、
到着が七時頃に成ってしまうこと、
今年度の放流バッチを売って欲しいこと…。これ等を伝え、
西城秀樹のCD、ゴールデンベストを挿入して出発。
いつものように、房総半島をヒタヒタと南下する道中、
ステレオから流れるYMCAを聴きながら、今日の釣りを想う。
一昨日、若旦那に豚小屋と桟橋の釣況を取材すると、
桟橋に一時の勢いはないが、豚小屋下は好調、とのこと。
混み具合にも依るが、このどちらかに入釣出来れば嬉しい。
それが叶わなくても、湖の何処かに舟を浮かべて、
静かな時を過ごせればいい。
そして、数匹の魚に遊んでもらえれば、何も言うことはない。
午前六時三五分、
ダムサイド到着。
取水塔付近から眺める湖面には、いつも見慣れていた高島屋の桟橋は姿を消し、中央ロープもやや上流に移動していた。
高島屋さんが閉鎖したのは一昨年の秋。
それから大分経つのに、眼下の光景がやけに新鮮に映るのは、
あんなに好きだった三島湖への思いに変化が起きたのか?。
いやいや、そんな事はない。断じてない。
ちょっと間が空いただけ、だ…と思う。
話を湖面に戻すと、
釣舟の存在は鳥小屋とポンプロープの狭間辺りに、
一、二艘が浮かんでいるだけ…。
これなら希望ポイントに溢れても大丈夫。
ポンプロープの最下流、大オダの脇まで漕いでこよう。
……、
お久しゅう御座います。と入店すると奥さんが居られた。
早速、舟代のチケットと放流バッチを購入。
そして、破顔一笑。
懐かしく四方山話をしてからベランダへ。
そこで目にした光景はと言うと、
豚小屋には八艘位の舟が奇麗に散開。看板升は無論のこと、
心密かに狙いをつけていた桟橋前の一番升も売り切れていた。
次に桟橋はというと、無人。誰も居ない。
となると無条件で桟橋、ということになるのだが、
さっき見てきた鳥小屋とポンプロープも棄て難い。
桟橋か下流域かで思案してみたが、初心貫徹。
今日は桟橋にしておこう。
桟橋が活躍していたのはゴールデンウイーク。
ということは旬を過ぎたと言っても、大して時は経っていない。
上手くすれば、残りカスにありつけるかもしれない。
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本日入釣場所の、正面図。
この写真は昼頃に撮った。 |
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◯本日のデータと予定。
・目標/十枚。
・竿 /嵐馬.12尺。
・浮子/忠相グラスムクトップ.10番。
・鉤素/450粍+600粍。
・餌 /両団子。
・納竿/定めず。
午前八時十分、
このマッタリ感はなんだっ!。
どうもココに来ると、緊張感がなくていけない。
が、せめて第一投を投入する時くらいは、緊張しよう。
それが魚に対する礼儀だ。大きく深呼吸をして厳かに、第一投。
五月晴れの碧色の空のもと、今日の釣りが始まった。
空かさず、打つべし、打つべし、打つべし……。
リズミカルに打込む事、十分、二十分…。
この積極策が功を奏したのか、浮子の挙動に変化が現れた。
更に偏向眼鏡で覗く浮子の下では、
地魚が大きな口を開けて、パクパクと粉を吸っている。
アイツ等の下にいるのが、放流べらだといいなあ…。
それだと、残りカスにありつけるのだが…。
自分に都合良く、期待したが甘かった。
エサがどっぷりなじみこんだ後の動きで仕留めようとしても、
そうは問屋が卸してくれない。
餌落ち目盛り付近を通過すると、浮子の動きが途端に鈍くなる。
これはマズイ。竿の長さが不的確ではないか…?。
こういう決断は、早い方がよい。
十二尺竿は、何の戦果も上げないまま敢えなく、お蔵入り。
・竿 /嵐馬.10尺。
・浮子/忠相グラスムクトップ.9番。
・鉤素/350粍+450粍。
午前九時、
十尺竿への交換をしていたら、放流べらが群れで遊びにきた。
それをよく見ると、所々にピンク色の傷口らしきものが見える。
痛々しいなあ…。
ココに連れて来られて半年、
その間に随分と、痛い目、恐い目に遭ったのだろう。
鵜が彼らを食するのは生きていく所為だが、
オレのは遊びだから…。
そう思っていたら駄目を押すかのように、どこからともなく
土左衛門が流れてきて、穂先の一尺先にビタッ!と止まった。
合掌。
流れてきたのだから、流されていけばいいのに、いかない。
まるで意思があるかのように、ズッと留まって、
オレの釣りを邪魔している。
なんだかなあ…。
と気持ちが暗く成りかけていたら、背後で舟が軋む音。
何事かと振り向くと、番頭さん。
係留してある舟を束ねて釣りを始めるみたいだ。
「番頭さん、ご無沙汰です。岩村(オレの本名)です」
よかった。番頭さんにも挨拶が出来た。
「ホントに久しぶりだね。『来ないねえ』って話してたんだよ」
気にかけてもらって、ありがとうございます。
オレは生きています。
番頭さんとも四方山話をしながら、再開。
すると、ドキっ!。力強い、ツンッで魚が掛かった。
それを見ていた番頭さんが呟く。
「リャンコだね」
えっ!リャンコ?。
ホントだっ!、リャンコで釣れた。
リャンコで釣れたのが嬉して堪らないのに、
番頭さんの手前、平静を装う、オレ。
午前十一時、
「痛えじぇねえかっ!、馬鹿野郎!」
怒鳴られても仕方がない。
先ほどからスレ、スレ、スレの…オンパレード。
鱗を幾多、空に舞わしたことか。
カウンターの数字は「10」。
いつの間にか、今日の目標は達成していたが、
これと同じくらいの魚を、バラした。
そう言えば、朝、竿を交換した時に鉤素も短縮したが、
それが悪かったのか?。
スレと鉤素短縮の、因果関係。オレには解らない。
解らないが、魚を苛めている事だけは確か。
暫く、ヤメよう。
ヤメて魚が離散した頃を見計らって再開しよう。
こんな事を考えていたら、十一時半。時報が鳴った。
……、
前号でも書いたが、時報は人の心に決断を促す。
背後の番頭さん、納竿。
そして豚小屋かも離脱者がひとり、ふたり。
オレは休憩、休み時間。
この休み時間を利用して、今日の周囲の状況を書き留めておく。
先ずは、オレの位置。
L字型に構築されている桟橋のLの字の要衝の、
角(外側向き)の部分に座を構え、
ともゑさんの崖下、竹薮の前に向かって打つ。
そして豚小屋は、ボート小屋が邪魔でよく確認出来ないが、気温の上昇とともに離脱者が相次ぎ、今は五、六名といった処か。
……、
写真でも撮ろう。
といつもの位置に構えたら、カメラに異常。
シャッターが降りてくれない。
肝心の正面図を撮り終えていないのに…とブツクサ言い乍ら、
カストマーに問合わすと、一部の機能が壊れているとのこと。
参ったな、参ったが仕方がない。
何とかしよう、と釣行記の分だけは写した。
正午、
天気晴朗ソシテ波ハ凪。
再開するにあたって、スレの対策を考える。
考えると言っても、知恵は無い。
知恵は無いが何とかしないとまた、鱗を剥しかねない。
先ほど因果関係は不明と書いたが、鉤素の長さを変えてみよう。
然し、延長か短縮かの判断がつかない。
判断がつかなくても確率は二分の一だから、可成りの高確率。
ハズレを選択しても次は当たりなのだから、気持ちは楽。
取り敢えず選択したのは、延長。
ココでいつもの、尺半+二尺に戻す。
……、
本日ただ今の釣果は、十枚。
朝の目標は達成出来たので、二十枚に上方修正して再開。
ココの魚影密度は濃密だと思う。
直ぐに魚信が出てきて、釣れた。
釣れたのは、朝の小童どもと違って尺の玉からはみ出たヤツ。
魚の群れが、地魚と入れ替わったか。
残念でした、入れ替わっていませんでした。
またも釣れてきたのは、小童。
小童ではあるが、これらが突如として怒濤のように釣れ始めた。
……、
気持ちがいいなあ。
どうやら鉤素を延長したのが、正解であったようだ。
再開してからは、魚にご迷惑を掛けること無く、スレ零を達成。
胸を張る!。
そしてカウンターの数字は、「三一」。
これだけ釣れればもういい。
そろそろ、ヤメにしようか…?。
名残惜しくもあるが、今日の釣りを振り返る。
残念乍ら若旦那は出張中であったが、
奥さんと番頭さんにお会い出来たし、
五月晴れに恵まれて、魚も沢山釣れた。
いい日に来れて、桟橋を選択してよかったと思う。
こうして思い残す事が何も無いのを確認して、
十四時五十分、竿を仕舞う。
駐車場でのこと。
荷を車に積載していると、
番頭さんが土産の玉子を持ってきてくれた。
そして、一年ぶりに楽しく遊ばせてもらった事と、
玉子の御礼を合わせて述べて、一件落着。
ありがとうございました。また来ます。
そう言って、家路に就く。
お仕舞い。
○本日の釣況。
・08:10〜08:50、12尺天々/0枚、両団子。
09:00〜11:30、10尺天々/10枚、両団子。
12:10〜14:50、10尺天々/21枚、両団子。
・合計 三一枚。
七寸五分〜壱尺壱寸五分。
○この日の釣果データ。
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この日の竿頭は、大名人の山田さんでした。
日刊スポーツ、釣り欄より。 |
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○2012年データ。
・釣行回数/2回
・累計釣果/42枚、平均/21.0枚。
2012年05月27日(日) 。
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