戸面原ダム。
杉林。
戸面原ボートセンター。
晴天、微風。
気温21度、減水0.9m、水温不明、水色澄み。
戦線復帰、の巻。
春爛漫、待望の戦線復帰を果たせた。
偶然にも一昨日、懸案の検査入院と運転免許停止処分のどちらからも解放された。そう、検査結果に異常は無く、免停の方も処分期間短縮の講習を受講したので三十日間の短縮が図れた。
今週は検査の結果次第で退院予定が未定だったので、仕事は全休にしておいた。それが、あっさりと退院出来たものだから昨日、千葉北警察署へ運転免許証の引取に行ってきた。
その道中の事。天気晴朗春爛漫とは、こんな日を指すのだろう。
この陽気に誘われて、自宅から警察署迄の往復十Kmの道のりをとぼとぼと歩いたのだが、その道すがら、この半年間のいろいろな思いが走馬灯のように駆け巡った。
大迷惑を掛けて辛かったこと、途方に暮れていたこと、
励ましてもらったこと、優しくしてもらえたこと、
支えてもらったこと…。
過去の人生で経験した事もなかった、艱難辛苦の日々であった。
然し、それも漸く終わりが近づき、自分にも春が訪れそう。
今だ未解決の部分もあるが、一刻も早く以前の生活に戻る必要に迫られている事もある。
退院時に医師から十日程度の右腕の安静を言い渡されていたが、それはもういいだろう。
突然ではあるが、オレは釣りに行く。
不覚にも三時半に目が覚めてしまった。
現在、医師からは睡眠時間の目標を八時間と申し渡されている。
それなのに昨夜寝床にもぐり込んだのは午前零時。
何てことはない、たったの三時間半しか眠っていない。
これじゃあ幾ら何でもマズイ。
そう思って夢の続きをみようと頑張ったが、まるで子供の遠足。
気分が高ぶって眠れやしない。
右腕の安静と睡眠時間。
どちらも遵守出来なくて申し訳ないが、今日は初釣りの日。
こちらもお許し願おうと思う。
午前四時十分、
自分に甘い性格を露呈させて恥ずかしいのだが、
本人は到ってルンルン気分。
穴川ICより突入し館山道をヒタヒタと南下する。
そうそう、書き忘れていたが本日の行き先は戸面原ダム。
そして夢を語らせてもらえば杉林のド真ん中で糸を垂らしたい。
杉林を選択したのに、理由なんてない。
戸面原での初釣りは「杉林」、との不文律を定めているからだ。そして富津中央ICを出てからの登坂道、
万感の思いとはこのようなことなのか…。
やっとこの道に戻って来れた嬉しさで、胸が詰まった。
午前五時半、
勇躍現地着。
駐車場はというと車、車、車…。
大凡三十名の釣り師が集結していて、今またバスが到着した。
相も変わらぬ混雑ぶりに、戸惑い乍らも入店。
管理人の相沢さんご夫妻に「お久しぶりです」と挨拶。すると、「もう、大丈夫なんですかっ!」気を遣って貰った。続いて
「北原さん(羽田の名人)が来てますよ」と教えてくれたのは、
奥さん。
「写真は後で飾っておきます」と言ってくれたのは、旦那さん。
そう、有り難い事にオレの拙い写真を飾ってくれるというので、
図々しくも過日、送っておいたのだ。
そして羽田の名人にも、ちょこっと挨拶をして車に戻る。
……、
出舟、十五分前、
桟橋の錠前が解放されて、例会組から入場。
今日のオレは積極的。
その直後にそそくさと搭舟手続きを終え、
宇藤木方面のスタートラインで静かに合図を待つ。
待つ事五分、ガァーッン!。銅鑼が鳴って一斉にスタート。
番手の位置取りからスルスルと抜け出す、オレ。
してやったり、先頭で漕ぎ抜け、無事「杉林」を確保出来た!。
と思いきや、オレを除く全員の目的地は宇藤木。
これにはガッカリ、慌てる必要なんてなかった。
◯本日のデータと予定。
・目標/三十枚。
・竿 /朱門峰凌.15尺。
・浮子/忠相グラスムクトップ.12番。
・鉤素/100粍+600粍。
・餌 /蛹爆弾+アルファ21。
・納竿/定めず。
午前七時二十分、
このワクワク感は何だっ!。
仕掛け作りでロスタイムが生まれたが、
釣りを始められることが、嬉しくて仕方がない。
そして七ヶ月のブランクを感じさせない竿捌きで、今季第一投。
久方ぶりに視る浮子の動き、
トップが立上がると沈下が始まり餌落ち目盛り付近も通過、
どっぷりと沈み込んだ頃、浮遊を終えた下餌が追随してくる。
そうだ、そうなんだ。この動きから釣りは始まるんだ。
……、
十分、二十分、三十分…経過。
そろそろ、誰かが触りに来てくれると嬉しいのだが、
何度やっても浮子の動きに変化無し。
こうなってくると、始めた頃のワクワク感は消し飛び、
不安の虫が疼きだす。
浮子に変化も無いが、廻りに人影も無い。
宇藤木方面へは結構な人数が繰り出したが、
この杉林には誰も寄り付かない。
正確には朝一で舟を着けようとしていた御仁もいたが、
美味しい情報が入ったらしく、何処かへ行っちまった。
何だか、たったひとり見捨てられたかのよう…。
このままではマズイ、決断と実行!。
未だ六十分しか経っていないというのに、
本日持参の最長竿、十九尺を繰り出す。
・竿 /朱門峰凌.19尺。
・浮子/忠相グラスムクトップ.14番。
・鉤素/600粍+750粍。
・餌 /蛹爆弾+アルファ21。
午前九時、
十九尺の仕掛けも作っていたら、こんな時間になってしまった。舟を着けたのが六時半だったから、
釣りをしたのが一時間で、仕掛け作りが一時間半。
相も変わらず非効率な事をやっている。
非効率は毎度の事だが、気になることがある。
ココに舟を留めてから一度も、魚と出会していない。
もしかしたら、ご不在ではないのか……?。
それと先ほどから「馬の背」の立木が招き猫のように、
オイデオイデ、とオレを誘惑する。
馬の背かあ…、浮気の虫も疼きだした。
五年前に彷徨の末に舟を結んだ、馬の背。
あの時の思い出に浸るのも悪くない。
一瞬、玉砕覚悟で乗り込む事も頭の隅を掠めたが、
十時まではココで頑張ろう、と思い直す。
そして、再開。
十分、二十分、三十分…ホっ!。やっと浮子が動いた。
へら鮒であると嬉しいな…。
浮子の動きに笑みを浮かべていたら、ツンっ!、
「ありがとう」、今季第一号を釣り上げた。
第一号は明確な魚信で仕留めた。
玉の枠が尺なので型は推定、尺一寸五分って事にしておこう。
ホッと一息ついていたら、周囲に変化が起きた。
オレの釣果に釣られたわけでもなかろうが、新住民が登場。
人の動きがあったので、
そろそろ今日の杉林地区の状況を書き留めたい。
杉林には七ヶ月ぶりの復員兵と例会で頑張る方、
対岸の隧道ワンドには試釣っぽい方が一名、
そして愛しの馬ノ背も何処かの誰かに占拠されている。
以上がここいら辺一体の配置図である。
…………。
天気晴朗ソシテ波ハ凪、魚影ハ薄シ。
隣の引っ越しで暫くは諦めていたが、ココの魚は意外と鈍感。
直ぐに同サイズのデブが釣れてきた。
ココは地魚の住処なのか…?。と一瞬思ってもみたが、違った。
次に釣れたのは小童、更に小童。
釣った順に並べるとデブ、デブ、小童、小童…。
釣果は数えるまでもない四匹だが、
短時間の出来事であったのが嬉しい。
ココに踏み留まってよかった。
午前十時、
今泣いたカラスがもう笑た、の反対。
踏み留まってよかった筈が、俄に雲行きが怪しく成ってきた。
次に小童を捕まえたのは十時半。
コワッパ、コワッパ、と揶揄するものじゃない。
さっきまで遊んでくれていた小童に嫌われたら、
誰にも相手にされなく成った。
隣の優しいオジさんの所に行ってしまったのか…?。
そう思って、横目でチラっと観察したが、そうでもない。
とすると陽気に誘われて上層へあがってきたか…?。
ならば魚を追いかけて、十七尺を出そう。
今度は仕掛けの用意があったので、十分で交換完了。
勇んで餌を打ち出すが、何の沙汰もない。
チキショーっ!、竿替えが「凶」と出た。
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今回デビューの玉置き、
前島で湖底に沈んだ先代の代替品。
今年はコイツをフラシ化して大型を狙う。 |
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正午、
時報が流れる。
この時報が、人々に決断を促す。
隣の例会戦士は最後の決戦の地に往かんとロープを解いている。
オレも朝の燃える様な情熱はとっくに失せているが、
もう一度浮子が動くのを見てみたい。
そこで何の戦果もなかった十七尺を引っ込め、
本日の殊勲竿、十九尺を引っ張りだす。
……、
本日ただ今の釣果は、五枚。
十分、二十分、三十分…ホっ。
朝の十九尺登場時と同じ展開で、二時間ぶりに仕留める。
そしてボツボツ通りかかった魚を捕獲して、九枚迄こぎ着けた。
デブ、デブ、小童、小童、小童、小童、小童、中春、中春…。
中春とは尺の玉に少し満たないデブと小童の中間的なヤツ。
更に、呼称の事。大きな魚を、デブと呼ぶにも飽きてきた。
次号あたりで、この呼び方も改めようと思う。
……、
ただ今の時刻は十四時二十分。
もう既に何の未練も無いから何時ヤメてもよいのだが、
オレにだって、意地ってモノがある。
初釣りが九枚では、幾ら何でも寂しい。
それにココは泣く子も黙る、杉林。
ココを独占しての戦果が九枚では、孫の代まで笑われそう。
せめて二桁までは、頑張ろう。
帰りません、釣るまでは…。
餌ボールに残った僅かな餌。これでも五、六投は出来るだろう。
勝負っ、勝負っ!と意気込んだが、相手にされず…。
斯く成る上は、止むを得ない。新たに餌を作って戦闘続行。
嗚呼、天は我を見捨てず。
ボケっと通りがかった小童を捕まえて、大願成就。
更に続けていたら、もう一枚。
これでダルビッシュ有の背番号と同じ、十一枚と相成った。
そして奇麗さっぱり、未練無し。
十四時五十分、竿を仕舞う。
事務所に戻ると、
「飾っておきましたっ!」と奥さんの声。
有り難くも、オレの駄作のパネルが、
栄光の戸面原ダムボートセンターの壁面に飾られた。
この後も図々しく、三枚並べて頂く予定だ。
「ありがとうございます」。
ペコリと頭を下げ、謝意を表す。
そして、もう一度、
いろいろな意味を込めて御礼を申し上げ、一件落着。
山を下る。
お仕舞い。
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今季のホームページの写真。
「渾身の一枚」の意味は大きさな魚を釣った、ではなくて、
やっと釣り上げた、と言う意味です。 |
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○本日の釣況。
・07:20〜08:20、15尺天々/0枚、グルテンS。
09:00〜11:00、19尺天々/5枚、グルテンS。
11:10〜12:00、17尺天々/0枚、グルテンS。
12:10〜14:50、19尺天々/6枚、グルテンS。
・合計 十一枚。
七尺零分〜壱尺零寸五分。
○この日の釣果データ。
記事掲載のPDFデータはこちら>>>
○2012年データ。
・釣行回数/1回
・累計釣果/11枚、平均/11.0枚。
どーも、吉右衛門です。
漸く戦線復帰が叶い、竿を振る事が出来ました。
結果は相も変わらぬ……でしたが、
とても素晴らしい時間を過ごせました。
矢張り、釣りは楽しいです。
前回の番外篇で戦線復帰は五月と記したのですが、
予定より一ヶ月早く復帰出来たのは、
周囲の説得を受入れ免停期間短縮の講習を受講したからです。
この事については未だ忸怩たる思いを棄てきれないでいますが、浮き世のしがらみもあり、仕方がなかったです。
休載にあたりましては、多くの方から
掲示板やメール、或は年賀状で励ましを頂戴致しました。
本当にありがとうございました。
今後は健康に留意し、安全運転にも心がけて頑張ります。
次回は来月、三島湖のともゑさんへ行きます。
2012年04月30日(月) 。
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