吉右衛門へら鮒釣り2011

  ◎第二回釣行
04月26日(金)

戸面原ダム。
桟橋裏・向田湾処。
戸面原ボートセンター。
曇り時々晴れ、風。
気温/20度、水温/不明、水色/澄み、水位/ー1.6m。 

底釣りで出会ったのは、感動だった、の巻。

無断欠勤をしてきた。
人生初の経験だ。
別に雲隠れをしたわけではないが、今日は事務所から電話があっても出るつもりはない。
こんな愚行に及んだのには、幾つもの理由がある。
昨日も腰痛で休んで、言い出し難かった。
コツコツと歩んできた、人生の緊張が切れかけてきた。
己を雁字搦めにしてきた、自分の常識を拒みたかった。
最近、何もかもを投げ出したくなる時がある。
そして、いささか厭世的になっている。等々だが、
後ろめたさと愉悦感。
このどちらが勝っているかといえば、愉悦感の方だから何とも度し難い。以前から恐れていた、「人生のタガの緩み」がやってきたと思えなくもないが、もしそうだとしたら、それはそれとして受け入れていかねばならないだろう。

午前五時二〇分。
人生初の悪さで何をするのかと思えば、魚釣りであった。
初釣りでオデコを喰らいこの趣味の行く末に一抹の不安も過ったが、魚釣りを選択したところをみると、オレの釣行意欲もまだまだ捨てたものではない。
そこで早起きをして今回も、戸面原ダムにやってきた。
何故か、意気軒昂であった。
ボートセンターの管理人である相沢さんに挨拶を済ませると、
オデコ明けの今回は、石にかじりついてでも十枚釣る…、と意気込みを述べた。今に始まったことではないが、オレはどうしてこうも軽薄なのだろうか。こんなどうでもよいことを所信表明されても、相手は迷惑以外の何ものでもないだろう、に。
さて釣況の方だが、寮下が釣れているようだ。
三桁の釣果を連発している。そこで、奥さんに舟の着け場所を伺うと、カーブに沿った辺りがよいらしい。今、この場にいる漁師の数は十名強。これからやってくるであろう人数も推定で十名。この辺りの事まで考えると、寮下はヤメた方がいいだろう。
そこで選択した場所は、駐車場下。
つい今しがたまでは考えもしていなかった、未踏の地だ。
結構釣れているようだし、腰痛が酷くなった時の撤収も容易だ。
しかし、よい事ばかりではない。気になることもある。
先ずは、塵(ごみ)の存在だ。
桟橋への渡しの下に雲霞の如く集結していて、コイツ等の機嫌を損ねようものなら悲惨なことになりかねない。
そしてもうひとつは、名称。
自分はこの「駐車場下」なる開業以来の由緒ある名前に、ケチをつけるつもりは毛頭ないが、あまりにも短絡的というか、色気が無さすぎる。そこでこの釣行記においては、桟橋の鉄柵にロープを結ぶ事もあり、勝手ながら「桟橋裏」と呼ばせてもらう。

釣行記写真
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本日の入釣場所の、正面図。
背後のロープは、桟橋の鉄柵に結んだ。

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同上を魚眼レンズで撮る。
本湖側(写真の左)には、塵が溜まっている。

◯本日のデータと予定。
・目標/十枚。
・竿 /嵐馬、12尺。
・浮子/忠相グラスムクトップ、10番。
・鉤素/450粍+600粍。
・餌 /(バラケマッハ+グルバラ)+アルファ21。
・納竿/十五時。

午前七時十分。
今季二度目の釣りが始まった。
魚影が濃そうだから直ぐに浮子が動くものと期待したが、挙動に変化が起きたのは二五分後。
しかし、浮子の沈下運動が終わりきると動きはやむ。
「さわってる、さわってる…。だけど、魚は上みたいですよ!」
そう言ったのは背後のギャラリー、相沢さん。
相沢さんは、後で舟底に溜まった雨水の掻き出し作業をしたい、と告げにきた。この作業。始めると凄まじい騒音を伴うらしいから、気を遣われるのだろう。
どうぞ、どうぞ!。愛想よく応える、オレ。
浮子の動きからして、リャンコで釣り上げ、ギャラリーの前でいいところを見せよう…。
色気を出して望んだが、見せてしまったのは、空振りの山。
確かに、魚泳層は上のようだ。
しかし、この時間で竿を短縮すると後半戦がキツくなる。オレは餌を上手く作れないので、刹那的な短縮効果は期待できても、副作用として魚泳層が更に上がってどうにもならなくなる。
そう、いつもの敗戦パターンに陥るのだ。
問題はバラケにある。
分かってはいるが、いつまでたっても解消できない難題だ。
しかし、今朝は一工夫して、バラケのレシピも考案したつもりだから、もう少し様子をみたい。
そんな埒の空かない展開だったが、八時丁度。
浮子が柔道でいう一本背負いのように消し込んで、釣り上げた。
釣れたのは大きく抱卵した、琉金型の準大型であった。
測るには到らないが、推定壱尺弐寸としておきたい。

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遅ればせながら釣行二度目にして釣り上げた、今季第一号。

魚影が濃いのでいつかは釣れるものと思っていたが、五十分もかかってしまった。
それでも釣れたのは嬉しい。
しかし、喜んだのも束の間。風が出てきて、塵が動き出した。
落つかない風だ。
本湖から吹いたかと思えば、山からに転じる。
本湖から吹くと大量の塵が流入してきて一巻の終わりと考えていたが、意外にも人為的に縛られた丸太が通せんぼの役割を果たして、ココへの流入は完封される。多分、過日、入釣された方の知恵と仕業と思われるが、これは勉強になった。
しかし、問題は山からの風だ。これが吹くと分速二米の速度で丸太やら細かい枝、木屑が押し寄せてきて、辺り一面が埋め尽くされる。そして今がそう。とても竿を入れる余地はなくなった。
中段を余儀なくされたので、竿と仕掛けを替える。
予定より早いが、釣れるうちに釣っておこうと考え直したのだ。
・嵐馬、10尺+忠相グラスムクトップ、9番。
数分後、塵が散った間隙を突いて、再開。
すると直ぐに短縮効果がでて、小僧が三連荘。
即効薬とはこのことだ。量産体制に入って、一気に行くぞ!。
意気込んでみだが、又もや、塵。しかも、先ほどよりも酷い。
これは堪らん…。
釣りにならないから、舳先から鉄柵の隙間を潜って陸に上がり、腰痛体操やトイレ休憩をして塵が去るのを待つが、どうにもならなくなってきた。
それでも時たま竿を入れると釣れてくる。可成りの時間が空いた筈だが、こうも簡単に釣れるところをみると、相当数の魚が集結しているのだろう。
魚がいるのは結構な事だが、先の事まで考えると、塵の希薄な数米先への避難を考えざるをえない。それと先ほどから気になっている、水掻き作業はどうなったのだろう…?。これが始まれば後学の為に手伝わせてもらうつもりだが、始まる気配すらない。
まさかオレに遠慮しているわけでもなかろうが、そうだとするとこの場を離れた方がよいのかもしれない。。

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本湖からの風は、丸太で見事に完封されている。

向田湾処(むかえだわんど)に移動してきた。
この場所を選んだのに然したる理由はない。前回、前宇藤木から引揚げる際、湾処の奥に小さな流れ込みを見つけたからだ。
そして、またも相沢さんに世話を焼かせてしまった。
着舟場所を伺ったらココ迄、教えてにきてくれたのだ。
しかし、濁りが抜けた今、魚は去ったかもしれないという。
魚が居ないのは残念だが、それはいい。
今朝は既に琉金型も含めて幾枚か釣り上げたし、これから先は付録のようなものだから、湧き水の流れ込む音でも聴きながら、底釣りの真似事でも出来ればよい。

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二度目の入釣場所の、正面図。

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この湧き水の流れ込みが気に入った。

・竿 /嵐馬、12尺。
・浮子/忠相パイプトップ、13番。
・鉤素/300粍+370粍。
・餌 /(バラケマッハ+グルバラ)+α21。

午前十一時。
再開。
昨年の第1カーブ以来の、底釣りだ。
前回はあの釣りを、「底釣り擬き」と呼んだが、今回は針が湖底に沈殿している小枝や葉っぱを拾ってくるので間違えなく、
「底釣り」と呼ばせてもらってもよいだろう。
しかし、わからないことがある。
錘、針、湖底の位置関係が想像できないのだ。
今、トップが露出している幅は中層でバランスをとった時よりも数節多く沈没している。理屈だけで考えると餌の有無に関わらず
浮子の真下に針が着底すれば、その自重がトップに反映されなくなるので、露出幅は大きくなる筈だ。しかし、餌がアンカーの役目を担う以上、そこに水流や風の負荷が掛かれば浮子、錘、針の垂直関係が崩れて露出幅は少なくなると思うが、どうなのだろうか…?。
それともう一つ。ハリスの長さもわからない。
今の、300粍+370粍では湖底に這っているハリスが弛んでいるような気がしてならない。取り敢えず、エサを沖目に投じて竿尻で調整しているつもりだが、これでよいのだろうか…?。
名人は浮子を見るだけで、底の状態が把握できるという。
しかし、オレにそんな高等な芸当ができるわけはない。
こうして考えてみると、わからないことばかりであった。
そんなことを思考しながら、餌の投下ポイントをピンポイントに集中して進める。
いつにない、緊張の釣りになってきた。

鐘の音が聴こえてきた。
正午を報せる、教会の鐘だ。
忘れかけていたが、事務所から何の音沙汰もない。
探されると面倒だが、これはこれで寂しい気がしないでもない。
職場にはアシストを置いている。
田代萌という。
この美大出身の萌ちゃんは、面喰いのオレの好みにあった、美人アシスタントだ。
普段であれば、出社は何時頃に成るとか、相談事があるとかいってくるのだが、今朝は何もいってこない。静寂を貫いている。
どうしたものか…?。
もしかすると今日の悪さは既に、彼女には見破られているのではないか…。
そう言えば、思いあたる節があった。
あれは横須賀への出張の時だった。
彼女が顧客との用件で中座した隙に、相沢さんに電話を入れたのだが、それを訊かれてしまったのかもしれない。
怒っているのか、秘密を覗いてほくそ笑むでいるかは分からないが、大人の対応をしてくれることを祈りたい。

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向田湾処と入釣場所の、鳥瞰図。
左のロープは上陸して結んだ。

向田に陣を構えて、百分が経過した。
相も変わらず、浮子の挙動に変化はない。
そもそも変化と言っても、浮子がどのように動くのかさえもわからない。それを知りたければ、次回は魚が確実に棲息する場所で勉強をすることだ。
そんなことを思案していた時だった。
風の悪戯で餌の投下場所が、ほんの少し右にズレた。
そしてこれが思わぬ、吉を呼ぶ。
浮子が、ムズッ!と沈んのだように見えたのだ。
魚信か…?。
この予期せぬ事に反応すると針に何かが掛り、竿が止まった。
根掛かりか…?。
そう思った瞬間であった、ギューーーッン!!!。
糸鳴りがして、何ものかが沖に向かって走った。
罠に掛かった魚も驚いたが、オレも驚いた。
狼狽であった。
まさか釣れるとは思ってもみなかったからだ。
幾分かの格闘の末に水面の現れたのは、デカ頭であった。
デカ頭は観念したのか、玉を差し出すとすんなり体を横たえた。
やったぞーっ!。
快感が脳天まで駆け抜けた。
初めて、底釣りで魚を釣った瞬間であった。
快挙であった。
大型だから桟橋に連れ帰って、検寸をしてもらおう。
この魚は昨秋に買っておいた、魚籠(フラシ)卸しに相応しい。
そう思っていたら、気がついた。
桶がない!。桶を積んでこなかったのだ。
痛恨であった。
桟橋まで魚を運ぶとなると、背後の崖をよじ登って桶を取りに行くか、魚籠のままで曳航するかだが、崖は転げ落ちそうだし、魚籠のままは掟破りだろう。それに大きさを測るためだけに桟橋へ連れて行くのは、遊んでくれた魚に対し、あまりにも無慈悲ではないか。
残念だが仕方がない。
よく考えてみれば、いつも桶とは無縁の釣りだから、桶を積む習慣などはありはしない。
そう考えれば、諦めもつく。

釣行記写真
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壱尺参寸強。四百粍前後の写真判定であった。

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流れ込みを背景に、「渾身の一枚」ポーズを試みたが、
魚が重くて持ち上げられなかった

魚を放してから数分が経過したが、いまだ興奮は醒めやらない。
まさかの出来事だったが、感動、また感動であった。
釣りの素晴らしさが再認識できた。
オデコを乗り越えてきてよかった、と思った。
生きていてよかった、と思った。
健康と生活の基盤があるからこそ釣りにこれる、と思った。
無断欠勤してきてよかった、と思った。
連休が明けたらしっかり働こう、と思った。
そして最後に、親身なって場所を指導してくれた、相沢さん。
底釣りの基本をレクチャーしてくれた、サンスイの武重店長。
このお二方に深謝して、一件落着。
オレは釣りました。

お仕舞い。

○本日の釣況。
・07:10~08:20、12尺天々/1枚、グルテンセット、
・08:40~09:20、10尺天々/4枚、グルテンセット、
 向田湾処へ移動。
・11:00~13:20、12尺底/1枚、グルテンセット、
・合計 6枚。

○2013年データ。
・釣行回数/2回
・累計釣果/6枚、平均/3枚。


2013年05月19日(日) 。
吉右衛門。



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