吉右衛門へら鮒釣り2011

  ◎第三回釣行
05月22日(水)

戸面原ダム。
馬ノ背(大立木)・同(立木並木)。
戸面原ボートセンター。
晴れ時々曇り、無風。
気温/25度、水温/不明、水色/済み、減水/2.8m。 

馬ノ背入釣、の巻。

私は今夏、還暦を迎える。
そこで、改めて「還暦」なる言葉の意味を辞書で調べてみると、
──六十年で再び生まれた年の干支にかえるところから、数え年六一歳のこと。また、老い。──とあった。
過去にも節目の歳は幾度か経験し、その都度、それなりに年齢を自覚したものだが、今回ほどに感じることはなかった。
矢張り、還暦は大きな節目なのだと思う。
それ故だろう。過去に節目と感じた時や岐路に立った時は必ず、還暦までを目標にして仕事でも病気でも頑張ってきた。
しかし、還暦を迎えたからといって解放されることは何もない。寧ろ、今後のことに思考が及ぶと気が重くなることさえある。
家族、仕事、健康…。
考えれば考えるほどに、思考が負に陥り、雁字搦めな状況にもがき苦しむ。
それでも、何か得体の知れない達成感の様なものが感じられる。
そんな私に、家族が還暦を祝ってくれるという。
何処で何がしたいかと尋ねられたので、戸面原ダムの桟橋で、「家族で集合写真を撮りたい」と答えておいた。
仕事の窮地も多々あったし、大病も二度患った。しかし、概ねのところにおいては、面白可笑しく生きてこられた。
それは、家族の支えがあったからだと思う。
当日が楽しみだ。

先週のことだ。
戸面原ダムの釣果欄に、「馬ノ背」の三文字が踊った。
馬ノ背が釣れている…。
疼くものがあった。
前回(向田湾処)の釣りの、あの一枚がきっかけであった。
行きたい…。
そう思うや、そこには居ても立っても居られない、オレがいた。
そこで急遽、先週末にも予定を組み込んでみたのだが、仕事の都合で行けなくなった。まさに臍を噛む思いであった。
それだけに一日千秋の思いで、この日を待ちわびていたのだ。

午前六時。
出舟。
この日、誰も往くことのなかった川筋方面へ、舟を漕ぎだす。
馬ノ背での入釣場所は、ボートセンターの管理人である相沢さんから、川上魚昇さんの地図を使っての克明な説明を受けてきた。
それによると、道跡側に聳えたつ大立木に舳先を結び、餌は隧道(トンネル)に向けて打てばよい、とのことだった。そして、この微に入り細に入った説明を、作戦参謀から戦術を授かるようにきいてきた。それだけに、気分は否が応にも昂なっている。
しかし、最近の釣況は決して芳しいものではないらしい。
それもあってか、不釣だった時の逃げ場として、杉林前の立木を薦められた。ここで宙を狙えば確実に釣れるという。
それでは端から杉林前の立木に舟を結べばよさそうなものだが、
そうはいかない事情がある。それは、今回のテーマが昨夏に出来なかった、「馬ノ背で底釣り」をすることだからだ。

釣行記写真
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本日の入釣場所の、正面図。
竿先の直線上に、隧道がある。

釣行記写真
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昨夏に撮った入釣場所の、減水風景(減水7.8m)。
赤丸印が、今回舳先を結んだ立木。
2012年08月27日撮影。

◯本日のデータと予定。
・目標/一枚。
・竿 /嵐馬、12尺。
・浮子/忠相パイプトップ、13番。
・鉤素/250粍+320粍。
・餌 /ペレ道+つなぎグルテン+粒戦細粒。
・納竿/十五時。

午前七時四五分。
第一投を放り込む。
待ちに待った、馬ノ背での底釣りが始まった。
今回が通算三度目の底釣りになるが、果してどうであろうか…。
場所に関しては、ほぼ完璧だと思う。舟は相沢さんの指示通りに留められたし、竿先の照準も隧道の入口にピタリと定めた。
しかし、ここまではよいのだが、問題はここからだ。
肝心の底の計測に自信が無い。長く時間を掛けて、慎重かつ丁寧に測ったつもりだが、何かが抜け落ちている気がしてならない。
餌は前回の急拵えと違って、釣り堀風の配合で作ってみた。しかし、これが通用するのかどうかはわからない…。
そして餌打ちも、積極果敢に打てばよいのか、一餌入魂でじっくりと浮子を凝視していればよいのかもわからない…。
こう考えると、わからないことだらけだが、何はともあれ、いろいろと試していきたいと思う。

午前九時。
意外といっては魚に失礼だが、十分ほど前から浮子の挙動に変化が起きている。しかし、どれも微弱で小さな動きだから合わせるには到らない。
今、浮子の動きと書いたが、魚信すらも理解できていないから、消し込みやツン、そして空ツンがあるのかさえもわからない。それでも、いつかこの動きがあるのではないかと期待して待っているが、未だ現れない。こうなってくると魚種も疑いたくなる。先ほどから犯人と疑っている、ブルーギルは底にも棲息しているのか……?。
犯人が誰であろうと、もっと大きな魚信を演出したい。
そう考えて、グルテンの粉を練っていると、
ドッドッドッドッドッドッ!!!!。
湖面を揺るがすような、大爆音が辺り一面に鳴り響いた。
すわ、何事かっ?!。
上空を見上げると、驚きの先にいたのは、大きなヘリコプターであった。それも一機だけではない。二機、三機、四機といる。
これがオレの頭の直ぐ真上でホバリングをしているものだから、巨大な怪鳥にさえも見える。そしてこの怪鳥がホバリングを終えると周囲を幾度も旋回しだした。
索敵か、捜索か、訓練か…?
何れにせよ、何かが起きたに相違ない。
お隣の危険な国が何かを仕出かしたか。
山菜摘みに出掛けた老夫婦が昨夜から帰宅しないと騒ぎになっているのか。はた又、富津の信用金庫が襲われて犯人が戸面山に逃げ込み山狩りが始まろうとしているのか。
オレの頭がひねり出す想像なんてこんな程度だが、果して、呑気に釣りなどしていてよいものだろうか…。
早速、職場の萌ちゃんに連絡し、富津界隈で今、起きている事を調べてもらったが、特に目につく事件はないそうだ。

午前十一時。
とんだ邪魔が入ったが、湖面には静寂が戻った。
大爆音が始まってから数十分後に一機、二機と姿を消し、最後の一機が大空の彼方に姿を消したのは三十分ほど前だ。
彼らが過ぎ去った今、今朝のあの続きをやりたいのだが、以来、何の音沙汰もない。千載一遇の好機を逃したのだ。
ヘリの出動と魚釣り。
どう考えても優先順位は魚釣りの負けだから文句を言えた義理はない。しかし、こちらも滅多に浮子の動かないポイントで釣りをしているのだから、愚痴のひとつも言いたくなる。せめて浮子を動かした犯人の正体だけでも突き止めたかった。欲目であるにせよ、あれがへら鮒だったらと思うと、何とも切ない。
そして何の変哲も無く時間ばかりが過ぎてゆく。
駄目か…。
ヘリのことはさておいても、この地で釣果があがってから十日も過ぎている。それに、あの日は全湖でハタキがみられたという。
それが減水だけが残った今、湖底からみれば台地にあたるこの馬ノ背へ、魚は食い物を求めてやって来るのだろうか…?。
一刻も早くと駆けつけてきたが、時機遅しの感は否めない。
それでは、どうするか。
瞼を閉じて、この先に起こるであろう展開を想像してみたが、そこには、魚を釣り上げ小躍りしている自分の姿は無かった。
しかし、次回くる時には減水が進み、景色はこの釣行記のトップページのようになっているだろう。
そう考えると、おいそれと未練は断ち切れない。
今回のテーマは、馬ノ背で底釣りをすることだった。
それであれば折衷案として、テーマの後ろの部分を、底釣りから宙釣り、に差し替えて後半戦に挑もうかと思う。

釣行記写真
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二度目の入釣場所の、正面図。

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初回の場所からみた、移動先。
赤丸の立木まで進めてきた。

・竿 /嵐馬、10尺。
・浮子/杉山パイプトップ、3番。
・鉤素/450粍+600粍。
・餌 /凄麩+ガッテン。

十二時半。
馬ノ背の端っこに並ぶ立木郡の左端まで、舟を移動してきた。
初回の入釣場所から隧道近くへ、大きく前進してきた感じだ。
当初、避難場所に予定していた杉林前の立木は、既に売り切れてしまっていた。しかし、売れたのは竹柵側であって立木は残っていたから、その気になれば出来なくもない。そこで、予定通りの行動も思案をしてみたが、何が悲しくて、男同士が見合いをしながら釣りをしなければならないのか、と考えると、オレにはそんな趣味は無いのでヤメておいた。
この辺りの地形は昨夏の釣行で立寄ったから覚えている。その時の記憶だと、この先は屹立した崖になっていて、ドン深だ。
それならば先ほどまでとは、正反対の釣りをしよう…。
そう考えて小さな浮子を糸に結んで、一本半の釣りを始めた。
この一本半の釣りで分からないのは、ハリスの長さだ。
取り敢えず、天々と同じ長さでやっているが、長過ぎるような気がしてならない。正解はどうなのだろうか…?。
これからの季節。この釣りを多用しそうなので、必須項目として解決しておく必要がある。
それと、餌。
この凄麩なる餌を選んだのに、然したる理由はない。
あれは四街道の今井つり具店さんへ買い物に行った時のことだ。
橙色の計量カップが目についた。しかし、この商品は付録品だから、餌を買わないと売ってくれない。
その餌が、凄麩だったのだ。
更に、女将さんからは、ガッテンも是非に、と言われた。
だから今、こうして混ぜている。
新しい餌を用いたからには、使った感想やら所感を書くのが本来の釣行記のあるべき姿だと思う。しかし、悲しいかな。オレはその類いの技術論をまったく論じられない。
釣りを語れない、釣行記…。
これでよいものだろうかと、いつも思う。

十三時半。
移動してきて六十分が経った。
真面目に餌を打ち続けているのが馬鹿らしくなるほど、魚の気配が感じられない。それに今日は水曜日。週の半ばの釣りは体に堪える。
諦めて、そろそろ、店仕舞とするか…。
そう決めて最後の一餌を投じると、何と、これが消し込んだ。
驚きながら合わせると、確かな手応え。
これは昨秋デビューの小僧だろう…。
しかし、喜んだのも束の間。水面に貌を出したのはムカつくような、ブルーギル。
ブルーギルが釣れたからには、へら鮒も近くに寄ってきているのではないか…。
そんな出鱈目を自分に都合よくこじつけて、続行。
続行を決めてから、十分、二十分、三十分、六十分が経過した。
そろそろ、続行したことに後悔の念が湧いてきた。
あの時、ヤメとけばよかった…。
そう呟いていたら、その時はやってきた。
またも突然、浮子が消し込んだのだ。
待ってましたっ!。
今度は竿先が柳のようにしなった。
この手応えは間違えない。そして期待は裏切られることなく、
土俵際で、はぐれべら仕留めて、一件落着。
ヤメなくて、よかったー!。

お仕舞い。

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土俵際で仕留めた、はぐれべら。

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隧道湾処から観た、馬ノ背図。


○本日の釣況。
・07:45~12:00、12尺底/零枚、両団子、
 馬ノ背の端っこへ移動。
・12:30~14:30、10尺一本半/一枚、両団子。
・合計 一枚。

○2013年データ。
・釣行回数/3回
・累計釣果/7枚。


2013年06月07日(金) 。
吉右衛門。



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