吉右衛門へら鮒釣り2011

  ◎第四回釣行
06月03日(月)

三島湖。
三ツ沢、穴釜。
ともゑ釣舟店。
曇天時々晴れ、無風。
気温/21度、水温/19度、水色/澄み、減水/3.9m。 

釣行記百回記念。
冒険の釣り三ツ沢突入、の巻。

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ご愛読有難う御座います。
お陰さまで釣行記、「吉右衛門のへら鮒釣り」が今回の記事をもちまして、通算百回目を迎える事が出来ました。
初回から数えて五年半で達成出来たのですが、元を正せば、この釣行記が生まれたのは仕事の絡みからでした。
本業のホームページの委託先から、検索エンジン対策として頻繁に更新出来る補助のサイトを作って欲しい、との要望を受け趣味である野球か釣りかで迷い、こちらを選択したのが始まりです。
そういった経緯で、愛犬「吉右衛門」の名を拝借して始めたのですが、それまで文章とは縁の無かった私には面倒なだけで、これは大きな負担でした。それだけにあまり熱意もなく三十分位で原稿を書き、写真を数点添えるだけで簡単に済ませていました。
それが一年目の終わり頃です。
委託先から届いたレポートで、サイトへの訪問者数が通常月で二百人、多い時には四百人もいることを知りました。
私は驚きました。
訪問者が存在することなど、考えてもみなかったからです。
また、釣りの現場でも、読者の方とお会い出来たりもしました。
こんなにも反響があったのだ…。
改めてインターネットの影響の大きさを感じると共に、五十の手習いではないですが、前向きに取組んでみようと思いました。
それからです。釣りに行った翌日からは週に五日、毎朝十五分間程度を机に向かうようになり、釣行記の合間にも野球や仕事のブログを書くようになりました。
私は無学ですから文章を書く為の基礎を持合わせておりません。ですから毎回が試行錯誤の繰り返しで、なかなか上手に書けずにいます。
百回も書いたからといって、どうなるものもありません。
こちらも釣りと同じく「日が暮れて、道尚遠し」です。
そんなトルに足りない釣行記ですが、今日では月の訪問者数が八百人を越えるまでに育ってきました。
これもひとえに皆様のお陰です。
地に伏して、心より感謝致しております。
更新回数が減少しマンネリズムも打破できずに、申し訳なく思っておりますが、これからも環境が許す限り続けて参りますので、
どうぞよろしくお願い致します。
2013年06月03日

吉右衛門。


釣行記が百回目となった。
そこで百回目に相応しい記事を書こうと、今年最初の番外篇で取り上げた「三二年ぶりの三島湖」を密かに企画していたのだが、この釣行は、あの日と同じ日でなければつまらない。そしてその日は来週の月曜日であって、六月十日だ。
しかし、困ったことに、あの向田湾処で冒されてしまった釣り熱から未だに冷めやらないでいる。
そう、釣りに行きたくて、行きたくて、たまらないのだ。
そんな健気な自分を一週間も待たせるなんてことは、可哀想で出来やしない。そんな気持ちを満たすべく思い立った釣行だけに、急拵えの感も否めなくもないが、出来るだけの事をして、節目に相応しい釣りにしようと思う。
そこで肝心の場所だが、三島湖の三ツ沢を選んでみた。
そして、三ツ沢といっても、沢の奥だ。ここなら今、自分のなかで流行っている底釣りが出来そうだし、何よりも未踏の地だ。
しかし、この地を選んだのは春先なら兎も角、冒険だと思う。
いつもと同じ、オデコと一枚のせめぎ合いになることは必定だ。そう漠然と考えていたら意外にも、ともゑ釣舟店さんの釣果欄から、「三ツ沢中49枚11尺」なる情報が舞い込んだ。
なんだ。釣れているんだ…。
三ツ沢中と記されているだけでは、土地勘の無いオレにはそこが何処であるのかさっぱりわからないが、「おいで、おいで」とでも言われているような気がしないでもない。
まあ、何でもいい。
今回は未踏の地である、三ツ沢の奥へ突入するのだ。

午前七時。
三島湖ともゑ桟橋を出航。
百回だとかなんとか言って意気込んでいたくせに、こんな時間になってしまった。家を出たのも遅かったが到着してからも女将さん、番頭さんと四方山話をしていたのが悪い。
この日は盛況。さっき訊いた情報だと、例会も含めて既に四十名前後が出舟したようだ。
そのせいだろう。行きがけに覗いてきたダムサイドから鳥小屋辺りにかけての下流域は結構な賑わいであった。
そんな状況下でも、オレが向かう先はC級ポイントだから蚊帳の外だ。滅多なことでは売り切れることはない。しかし、幾ばくかの不安がないわけでもないから、通りすがりのバス釣り青年に、すれ違いざま三ツ沢の状況を尋ねてみた。すると矢張りだ。沢の奥には誰もいないとの事だった。
それならば安心。勇躍、現場に乗り込んでみたが、そこで目にした光景は予想だにしないものであった。へら師が居たとしても揺れ止めロープより上手の方だと思っていたのだが、この日は岩盤と島との間に幾人かが関所役人のように陣取り、入口を塞ぐかのように奥との交通を遮断しているのだ。
困ったことになった。
しかし、こちらとてココを通らねば目的地には行けやしない。
遅れてきておいて、真剣勝負をしている方々の邪魔をするのは申し訳ないが、ここは関所の隅っこでも通らせてもらうしかないだろう。
蛮勇を奮い平身低頭で一難を突破すると、ここからは未知未踏の世界だ。つり具屋さんがよく例え話に使う、「川口浩探検隊」の一員にでもなったような気になって進む。
朝、番頭さんからもらった情報によると、ポイントは水路沿いに行った右岸の突端だそうだ。そして、それと思われる地点まで舟を進めてみたが、困ったことに突端はおろか、後にも先にも舟を結ぶ対象が見当たらない。減水の影響で地肌だけが真っ茶色に露呈していて枝も草も遥か頭の上となっている。それでも諦めずにコマメに探索してみると、〈穴釜(あながま)〉の辺りにやっと唯一の、小さな立木群を見つけ、舟を結ぶことが出来た。
(行程図は、文末に掲出)。
※上に記しました、穴釜の「釜」の字は当て字です。
いろいろと調べたのですが、(穴がま)の表記が多かったです。
趣味の世界なので、当て字をお許しください。

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本日の入釣場所の、正面図。
背後の小さな立木群に、舟を結んだ。
左奥を曲がると、行き止り。

◯本日のデータと予定。
・目標/一枚。
・竿 /嵐馬、12尺。
・浮子/忠相パイプトップ、13番。
・鉤素/270粍+320粍。
・餌 /ペレ道+バラケマッハ+つなぎグルテン+粒戦細粒。
・納竿/十五時。

午前九時。
釣行記第百回の釣りが始まった。
いつも魚の存在に疑念を抱く場所で竿を出しているが、今回は普段にも増してその感が強い。それに、ちょっと不気味でもあるし不覚にもiPhoneを愛車に忘れてきたから、孤立無援の状態だ。
それでも、ワクワク感で埋め尽くされているオレの頭の中は一体どうなっているのだろうか。
理性では、こんな場所で浮子が動く筈はないと思いながらも、密かに何かが起きる事を期待して、目を凝らす。
痺れるんだ、この感覚が…。
そんな緊張に酔いしれていると、四十分も経ったであろうか。
意外にも、チコンっ!、と浮子が動いた。
最初は錯覚かと思ったが、二度、三度と同じ動きを確認できればこれはもう、錯覚とは言わせない。
動きの頻度が増してきた。
そろそろだろう…。
そう思って絶妙のタイミングで合わせみたが、プルプルプルッ、
釣った魚は、ブルーギルであった。
コイツだったのか…。
それがわかると、それまでの緊張が消し飛んだ。

午前十時。
いやはや、大変な事態となってきた。
ブルーギルが釣れ続き、止まらないのだ。
今、水の中ではブルーギルの仲間同士による餌の強奪戦が繰り広げられているのだと思う。
もはや、浮子が立つ暇さえもなくなった。
餌が投入されるや、浮子は右に左に強制的に連れ去られる。そして蓮荘、両個(りゃんこ)で釣れ続き、針も呑まれる。
滅入るものがあった。
三ツ沢の奥地の正体は、ブルーギルの一大棲息地であり産卵所でもあったのだ。
これからどうなるのだ…。
頭のなかが不安で埋められた。
そう思っていたら、朝の番頭さんの言葉が思いだされた。
あれは三二年前の三島湖の写真をみせた時だった。
「この頃はマッシュでね。ジャミが凄くって水面が盛り上がるんだよ。それでもね。へらが寄ってくとジャミは散ったんだ。あのへらが寄ってきたときの〈間〉がね。よしっ!へらが来たっ!て興奮したもんだよ…後略」
へらが寄ってくるとジャミは散る…。
そう願いたいものだが、あの頃のジャミはヤマベで、今は北米産のブルーギル。獰猛さがまるで違うから、へらが寄って来たからといっても素直に退散するだろうか。

午前十一時。
よかった…。
十分ほど前からブルーギルは消え失せ、浮子に静寂が戻った。
これが番頭さんの言う筋書の、間、であればよいのだが…。
そう期待込めて水面を眺めていると、浮子がズルっと動いた。
オッ!、確かな手応え。これはブルーギルとは違う!。
しかし、なにかへんだ。重量的には間違えないが右へ左へと走らず、ほとんど無抵抗だ。
長靴でも釣ったか…。
首を傾げながら竿を上げているとそこに、ぬっと貌を出したのはなんと、亀であった。
唖然呆然!、亀を釣ってしまったのだ。
嗚呼、驚いた。
予測を超えた出来事であった。
亀を釣るのは漫画の世界だけかと思ったが、そうではなかった。

釣行記写真
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玉に収めた、亀。
寸法は、尺に少し足りず。

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首を甲羅の奥深くに引っ込め、
針を外せないので泳いでもらった。申し訳ない…。

ブルーギルの猛攻のあとは亀。
いろいろなことが起こる一日となった。
この先、一体何が待ち受けているのだろうか…。
そう思うと、期待より不安の方が大きくなった。
移動も考えたが、又も関所をくぐり抜ける勇気はないし、周囲には移動するあてもない。もう、ここに賭けるしかなかった。
悄然としていたが、それを吹き飛ばすようなことが起こった。
水面から浮子が、こつ然と姿を消したのだ。
ビシッと合わせると、今度のヤツは暴れ方からして亀ではない。これはあきらかに魚の手応えであった。
しかし、今日に限っては姿を見るまでは安心できない。
丁か半か。吉か凶か…。
へらであることを願いつつ、息を呑んで水面を凝視していると、
顔を出したのは、へらだ、へらだっ!。待望のへら鮒であった。
やったぞーーっ!。
無人の奥地で快哉を叫ぶ、オレ。
頭のてっぺんまで、気絶するほどの快感が駆け抜けた。
これは、午前十一時十四分の出来事であった。

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渾身の一枚ポーズで。

正午。
ここにやって来たのが、大吉と出た。
あれから数匹のブルーギルに混じりながらも二度のバラシがあったから、へら鮒が寄ってきているのは明白だ。
そんな確信を得ていたら、突然、クライマックスがやってきた。
十三時までの一時間で、何と七匹も釣れたのだ。然も、釣れてくる魚はどれもが大きい。至福の時であった。
そして幾つか、わかったことがあった。
底釣りの魚信にも、ツンやカラツンがあること。
今日の餌は最善とは言わないが、次善の次の次くらいで通用すること。
ブルーギルは底であっても幾らでも居ること。
これまで抱いていた幾つかの疑問が解消された。

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魚の大きさは大体がこんなもので、壱尺弐寸上。

十三時。
本日ただ今の釣果、八枚。
この調子でいけば間もなく、十枚になる。
これは思いもよらなかった望外の数字だ。
振り返れば、あの亀が吉を運んできてくれたのだろう。
そうでもなければ、こんなに釣れるわけがない。
釣技のある方々にとってはなんてことのない数字だとは思うが、オレにとってはドン深の放流べら釣りなら兎も角、自分が釣ったとは思えないような数字だ。
そんなことを考えてきたら、俄に満腹感が湧いてきた。
あと二枚釣ったらヤメよう…。
名残惜しいわけでもないが、ヘボの分際でこんなに大きな魚を、沢山釣れば罰が当たるし、次回の反動も恐い。それに何よりも、
オレに大釣りは似合わない。
そう考えるとこのくらいがちょうどよい。
そんな謙虚な姿勢で臨むと目標は直ぐに達成できて、一件落着。
百回記念は愉快痛快が満喫できた、痺れるような時間だった。
波瀾万丈の一日が終わった。

お仕舞い。

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穴釜への行程図。
下に掲出した写真(帰路に撮った)のカメラ位置です。
地図の原図はYahoo!より。

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写真A。
段々畑前より、三ツ沢の入口を望む。

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写真B。
三ツ沢の入口から水路奥を望む。

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写真C。
入釣場所である、穴釜を望む。
赤丸印の立木に舟を結んだ。

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写真D。
水路、最奥で行き止まり。
満水時には、更に奥へも行けるらしい。

○本日の釣況。
・09:00~13:30、12尺底/十枚、両団子、
・合計 十枚。

○2013年データ。
・釣行回数/四回
・累計釣果/17枚。

2013年07月05日(金) 。
吉右衛門。



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