吉右衛門へら鮒釣り2011

  ◎第九回釣行
11月18日(月)

戸面原ダム。
ハウス下。
戸面原ボートセンター。
快晴、強風。
気温/18度、水温/不明、水色/茶色、減水/満水。 

「納竿」の巻。

銀杏の葉が舞っている。
気がつけば、こんな季節になっていた。
今年八度目の釣行を笹川湖にしたのが九月の上旬であったから、かれこれと七十日も開いてしまった。その間、十月の上旬頃まで長引いた残暑が終わると、秋を追い越すように冬の気配が感じられるようになってきた。
別に仕事が忙しかったわけではない。幾つかのアクシデントに釣行を阻まれていたのだ。
そのアクシデントとは二度の転倒による怪我と幾度となく襲ってきた颱風等だが、それも漸く落ち着き今回の釣行となった。
今年の釣行を振り返れば、施行回数は九回(今回も含め)と近年同様に少なかったが、やけに充実していたと思う。
今にして思えば、初釣りでオデコを喰らったのが良かった。
まさに怪我の功名たが、あのオデコがあったからこそ、底釣りに取組めたからだ。
印象に残った釣りは向田湾処(むかえだわんど)、三ツ沢穴釜、道の駅下と三度を数えることが出来た。
向田湾処での魚信の瞬間は今でも覚えているし、穴釜でブルーギルの集団に襲わた挙げ句、亀まで釣り上げ途方に暮れていた時に釣れた一枚は嬉しかった。そして初めての笹川湖で寸足らずとはいえ巨べらを仕留めた時の喜びといったらなかった。
そのどれもが一昨年の前島での、「渾身の一枚」に匹敵するような興奮の一枚であった。
そんな充実の一年も、今回の釣りで終わる。
今日は今年最後の釣りを、せいぜい楽しんできたいと思う。

思い起こせば一昨年以来、一年を締め括る釣りが出来ず、自然消滅的に年を越していた。一昨年は大病を患い、昨年は多忙だった仕事に加え検査入院までさせられて、釣りどころではなかった。
そこへいくと、今年はこうして竿納めの釣りが出来る。
これは、小さな幸せだと思う。
矢張り、人間生活に欠かせないのは健康で家族と過ごす事と生活基盤を安定させる事だとしみじみ感じる。
さて今回の向かう先であるが勿論、戸面原ダムだ。
実はこの秋の釣行計画として、毎年恒例になっている前島と再度の穴釜を企て、向田湾処で一年を締めようと考えていたのだが、前述のアクシデントでその計画は露と消えた。そして今回希望の向田湾処も自宅を出てきたのが遅かったから、既に売り切れているのではないかと心配だ。
過日、戸面原ダムの釣況を、ボートセンターの管理人である相沢さんに問い合わたら、宙釣りがよくないという。
それは颱風による増水で水が濁りきっているのが原因らしい。
颱風に襲われてからすでに幾日も経っているが、減水五米だった水位は溢れるばかりの増水に見舞われ、濁りが消えるのにはまだ幾日も要するというのだ。

午前七時十五分。
戸面原ダム到着。
長川橋を渡った瞬間に確認できた濁りの状況は想像以上だった。文字で表現すると、「茶色」そのものだ。
そう言えば初釣りの時もこんな色だったから、今年は濁りに始まり濁りに終わる事になる。
今回は前述もしたが、向田湾処に入りたいのだ。
こんな時間にのこのこやってきて入釣場所に希望を持つ事自体、図々しいとは思う。それでも入りたいから、事務所へ寄る前に、一縷の望みをもって偵察してきたが、矢張り無駄足であった。
想像通り、入口付近のA級ポイントは売り切れていた。A級は売り切れてもB級なら何とかなるような気もするが、先釣者の前を横切るのが嫌だからヤメておこう。そして遠くの杉林にも人影を確認出来たが、あちらは宙釣りをしているのだろうか。

相沢さんご夫妻に挨拶をして入室。
奥さんに作ってもらう今年最後の朝食を頂いてから桟橋に立ったら、何と、八時半にもなっていた。
不覚にも随分と話し込んでしまった。当方は納竿とは言えどうでもよい釣りであるが、あちらはさぞかし迷惑だっただろう。
さて、何処に行こうか。
向田湾処に入れなかった今と成っては何処でもよいのだが、どうせなら未踏のポイントに入りたい。
そこで思いついたのが、「ハウス下」だ。
相沢さんにハウス下について尋ねたら、もう一カ所、推薦をしてくれた場所があった。それは桟橋正面の小湾処だ。
昨日、この小湾処で釣行記の掲示板でお馴染みの、アンコウさんが見事に三十数枚も釣り上げたらしい。
この仮称、「アンコウさん湾処」から真正面の白い看板に向けば13尺、電柱なら15尺と微に行った説明まで頂けた。
昨日は日曜日。それでこの釣果ならと心も動いたが、季節は晩秋というよりも初冬。釣果よりもお天道様の恩恵を受けたい。
そこで日照権を得るためにハウス下を選んだのだが、結果からみるとこの選択が、凶と出た。

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本日の入釣場所の、正面図。

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同上、
正面は落合。
左端にチラっとみえるボートが桟橋。
右端には見辛いが石田島がみえる。

◯本日のデータと予定。
・目標/特になし。
・竿 /朱門峰嵐馬、14尺。
・浮子/忠相パイプトップ、13番。
・道糸/1号。
・鉤素/0.4号、350粍+420粍。
・棚 /底。
・餌 /ペレ道+バラケマッハ+つなぎグルテン+粒戦細粒。
・納竿/15時。

午前九時半。
今日は小春日和。
舟付けをしていたせいもあってか、汗ばむような陽気であった。
よい日に来れたものだと思う。
これならのんびりと釣りが楽しめそうだ。
上機嫌で今年最後の釣りを始めると石田島の方から、にくいようなタイミングでそよと風が吹いてきた。
意地悪な風だ。
湖面にさざ波を起こすとその影響でギラギラが発生し、浮子が見辛くなった。偏光メガネが役に立たないほどにだ。
更に風の悪戯で餌の着水地点が左にズレると、三節程度が露出する筈のトップが水没してしまう。どうやら凹があるようだ。
風とギラギラと凹。
この三重苦で大きなハンデを背負ってしまった。なかでも浮子が見辛いのは致命傷だ。ちょっとでも目を離すと所在を見失う。トップの立上がりから沈下運動への移り際に魚信らしき挙動を感じることがあるのだが、確証が得られない。
この風は止むのだろうか…。
当初の小春日和は何処へやら、俄に様相が怪しくなってきた。
行く先に不安を抱き始めたら、何故か、突然やんだ。
その瞬間だ。ありがとう。
浮子がツンっと入るのが確認出来て、ビューティフルな魚が釣れた。本日の第一号だ。
第一号は魚体の美しさと抵抗の激しさからして今秋、このダムに引っ越してきた新参者だと思う。
こちらは幸運だったが、相手はに食いついた瞬間に風が止んでしまったのが不運だった。
記念写真を撮って放流をすると、またも釣れた。
どうやら、魚が沢山いそうだ。
風さえなければ三十枚位はいけるのではないか…。
淡い希望に胸を膨らませたが、そうは問屋が卸してくれない。
またも風が騒ぎだした。しかも今度の風は頬をひんやりさせ背後の草むらをもざわつかせる。
風の勢いがここまで増すとこのような吹きっ曝しの場所は辛い。舟上に置いてある軽量の物のすべてが吹き飛ばされそうだ。
風に煽られ餌の投入もままならなくなった。
滅入るものがあった。
このまま待っても風が止めばよいが、その気配はない。
今更だが、アンコウさん湾処にしておけばよかったと思った。

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本日の第一号。
今秋より戸面原ダムの住民になった新参者だ。

午前十一時。
桟橋へ戻り、今日のこれからを考える。
既に釣りに対する情熱は失せたから、このまま帰路についてもよいのだが、今日は納竿日。いくら何でもこのまま帰るのでは消化不良というものだ。継続するなら緊急的に避難できる場所を考えなくては成らないが、思いつくのは桟橋正面のアンコウさん湾処しかない。しかし、ハウス下ほどではないにしてもこの風と波のなか、底の計測が出来るかどうか。
そう考えていたら幾分か風が和らいできたようにみえた。
これなら、もう一戦出来そうだ…。
消極的ながらも舟を漕ぎだすと、それを待っていたかのように、和らいだ筈の風が勢いを増してきた。
なんでこうなるのだ…。
それにもめげず舟を着けてみたが、どんぶらこと、波で舟が大きく上下に揺れる有様。
これは釣りどころではないだろう…。
何とも冴えない結果であったが、この状況では致し方ない。
納竿の釣りは僅か四五分で、一件落着となってしまった。

お仕舞い。

○本日の釣況。
・09:30~10:15、14尺底/二枚、両団子、
・合計 二枚。

○2013年データ。
・釣行回数/九回
・累計釣果/52枚。

後記。
吉右衛門のへら鮒釣りをお読みくださっている皆さまへ。
数年ぶりの納竿に出掛ける事が出来、一年を締めくくれました。
今年も近年同様に釣行回数が少なく、それに伴い更新も一桁に終わってしまったのですが、その内容は充実しておりました。
しかし、内容自体よりも釣りへ行けることに、小さな幸せを感じております。
本文でも述べました通り、生活の糧を得ながら健康で家族と過ごせる事。これが何よりです。
平成20年より始めましたこの釣行記も、お陰さまで今年、通算百回を突破し、来年からは七年目に突入します。
これまでは百回を目標にしてきたのですが、それを十年に切り替え、来年からも頑張っていければと思っております。
一年間のご愛読を有難う御座いました。
どうかみな様、健康でよい年をお迎えください。


2013年12月15日(日) 。
吉右衛門。



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