吉右衛門へら鮒釣り2011

  ◎第弐回釣行
05月06日(火)

戸面原ダム。
馬ノ背。
戸面原ボートセンター。
曇天、凪一時弱風。
気温/20度、水温/不明、水色/小濁り、減水/1.9m。 

「馬ノ背。一番槍をつけた」の巻。

ゴールデンウイークの最終日。天気予報が「微風」を告げた。
この日を待っていた私は、心躍らせ、いそいそと準備にかかる。
待望の、「馬ノ背」で底釣りをするためだ。

馬ノ背は戸面原ダムにある、この季節限定のポイントだ。
その場所を案内すると、ボートセンターが管理している桟橋から川筋方面を目指して行ったところに、溜め池状の広場がある。
この広場は、ほぼ全体がポイントになっている。
溜め池の入口というか西側には宙釣りの聖地、杉林があり、東側には前回世話になった道跡から隧道湾処(とんねるわんど)にかけての底釣りポイントが続く。
そしてこれらの、ど真ん中に位置しているのが、馬ノ背だ。
広場の大きさも説明したいが自分の稚拙な文章力ではとても出来そうにない。そこで下にYahoo!の地図を貼っておくので参照してもらうと有り難い。比較対象には月並みだが、東京ドームを選んだ。(縮尺を合わせてみてください)

 
戸面原ダム、馬ノ背。

 

 
東京ドーム。

馬ノ背は入釣するにも制限がある。いつでもよいわけではない。
場所が広場の真ん中にあるだけに風に弱い。吹きっ曝しになる。
風向きなど関係ない。どちらの方向から吹いてきても、容赦なく波が立ち舟を揺らす。
そしてもう一つ、大きな難題がある。水位だ。
満水では立木が水没しているので舟は結べない。
それ故、舟が結べるのは水を落とす田植えの季節からとなる。
しかし、減水も5米(メートル)にまで達すると、この釣行記の昨年の表紙のようになる。文字通り、馬の背中が露呈してしまうのだ。
(下のURLをクリックください。昨年の表紙にワープします)
http://www.kichiemon.info/fishing/2013.html
この状態になると、背中の上での釣りは出来なくなる。そこで今度は背中の周囲に林立した立木から外側に向かい竿を出す。背中の側面は屹立した崖になっているようだから、一部のかけあがりを除くと宙釣りだけとなる。
私には好きな場所がある。
道跡側に聳える大立木に舳先を結び、竿先の照準を隧道付近に合わせるのだ。
昨年はこの場所で、2.7米の減水時に12尺の竿を振った。
今朝の減水は、1.9米。
今の時期。水は毎日、10糎(センチメートル)ずつ減っていく。それを頭に入れると、ここで魚と出会えるのは今週と来週、多少の雨を見込んでも、せいぜい再来週までだろう。もたもたしていると渇水で底釣りが出来なるからだ。
そこで今回が駄目なら来週。来週も駄目なら再来週もやってくる覚悟だ。
私の技術では歯が立たないのは承知の上だ。
恐らくどうにもならないだろう。
それだけに足りない部分は精神力で補うつもりだ。
男の一念岩をも通す、ではないが、何としても魚と出会いたい。

待望の馬ノ背へやってきた。
周囲にはへら師が二人いた。杉林で浅い棚を狙っている。そして他には誰もいなかった。
今日は休日。それだけに駐車場も混雑していたが、今回に限ってここは不人気ということか。
いち早く大立木に舟を結びたいところだが、逸る気持ちを抑えてやらねばならぬことがる。水深計を用いての測量だ。
底釣りをやるからには、水深を把握せねばどうにもならない。
それだけに必要不可欠な段取りのひとつだが、いつも悪戦苦闘でこのような文明の利器も私が扱うと、ただの目安程度にしか活用できない。
今回の場合も、舳先の位置と竿の向く方向は決まっている。
それだけに、
(舟一艘分の長さ+竿の長さ+穂先から浮子までの長さ)の見当をつけ、その下を測量すればよさそうなものだが、これがなかなか難しい。それは左右の視力がアンバランスで遠近感が掴めないのと、操船技術が低いからだ。
今回も、3.6、3.8、3.9……。バラバラであった。
そこで、ボートセンターの管理人である相沢さんの助言と、過去に経験したデータから、竿は15尺と決めた。

クリックで
拡大写真
本日の入釣場所の、正面図。
周辺図は文末に掲載。

◯本日のデータと予定。
・目標/一枚。
・竿 /朱門峰凌、15尺。
・浮子/忠相パイプトップ、13番。
・道糸/1号。
・鉤素/0.5号、300粍+360粍。
・棚 /底。
・餌 /ペレ道+バラケマッハ+つなぎグルテン+粒戦細粒。
・納竿/十五時。

八時半。
風はそよとも吹いていない。静寂そのものだ。
その静寂の中、餌を投げ込むと、美しく波紋が広がる。
待望の馬ノ背での底釣りが始まった。
桟橋を出る時、相沢さんに最近の馬ノ背の釣況を伺ってきた。
それによると、まだ立木が顔を出したばかりで入釣者はあまりなく、先日挑んだ方も途中で移動されたとのことだった。
ということはだ。夢を語らせてもらえば、今日、ここで魚を釣るとオレが一番槍をつけることになる。馬ノ背一番槍だ。
そう考えると闘志が涌き上がり、益々意気が揚がってきた。

十時半。
意気込みとは裏腹に時間ばかりが過ぎていく。
気がつけば、二時間だ。
その間、黙々と餌を打ち続けたが、浮子は微動だにしない。
トップを四節沈めて、餌が半ばまで溶け終わると竿を上げる。それを生真面目かつ几帳面に繰り返す。多少、ルーティーン化したきらいはあるが、浮子の挙動にいつ変化が起きても対応できるよう、竿尻だけはしっかりと握っている。
しかし、心に不安というか動揺が出てきたのも事実だ。
好き好んで入った場所とはいえ、この先に進展はあるのか…。
突きつけられた現実を思うと、意気込みが動揺に呑み込まれそうな気がしてきた。

十一時。
浮子がこうも動かないと、わかったたことがある。
この浮子の下に、魚はいない。それがはっきりとわかった。
浮子の下だけではない。魚粉の匂いが届く範囲の何処にも魚はいない。
困った…。
魚のいない所で、魚を釣るにはどうすればよいのだ。
途轍もない難題に直面したことに気づいた。
場所に拘らず釣果を得ればよいというのであれば、魚のいる所に移動すればよい。すぐに解決が図れる。
しかし、今回は違う。
馬ノ背で、しかも底釣りで、釣果を得ることが目的なのだ。
こちらから出向くことが出来ないのであれば、魚にお越し願うしかないが、この過疎化しているポイントに、どうすればお越し願えるのか…。
ここが魚の周遊コースにでもなっていれば、待てば海路の日和ありだが、そんな事はわかりようがないから、どうにもならない。
自分に出来ることと言えば、たとえ待ちぼうけに終わろうとも、今まで通り黙々と餌を打つしかない。それは今日も次回も次々回もだ。
馬ノ背で竿を出すと決めたからには、それは覚悟の上だった。
しかし、一度の釣行で浮子を眺める時間を七時間とすると三度の合計は、二十時間となる。
二十時間、浮子が動かない…。
気が滅入って、逃げ出したくなるような話だ。
それだけに、それをやり遂げるには、堪え難きを耐え、忍び難きを忍ばねばならない。その覚悟はあるか…?
改めて自問自答してみると、ある、と即答した自分がいる。
更に、骨が舎利になっても続ける、とまでいう。
なにが自分をこうも突き動かしているのはわからないが、結論を先に言うと、事態が急展開して、骨が舎利にならずにすんだ。

ぶつくさと自問自答をしていた直後だった。
浮子が初めて、鈍く動いた。
普段なら見送る動きだが、浮子の動きに渇望していた。
竿を持つ手がとっさに伸びた。
ゴツンっ!。
いない筈の魚が掛かった。
これは思いがけないことだった。
しかも、手応えからして、魚は大きかった。
竿がアルファベットのUの字の逆形になって動かない。
これから、こいつが動き出したらどうなるのか…。
胴調子の竿を選んだことを悔いた。
そして、魚が動きだした。動いたというよりも走りだした。
思った通り、手に負えそうもなかった。
しかし、絶対にバラしてはいけない。
なんとしてでもこの魚にしがみつかねばならない。
そうしないと、今日のオデコが確定するからだ。
魚との闘いは、強迫観念との闘いでもあった。
背後の道跡に今しがた越してきた住民からは、
いつまで楽しんでいるんだ…。と思われているかもしれないが、
楽しんでなんかいない。オレは必死なのだ。
幾分かのやりとりがあったが、それも終わりが近づいた。
ガクっと抵抗がやんだ。
どうやら魚は観念したようだ。
鉤素が0.5号でよかった…。
オレの粘り勝ちだった。
玉を差し出すと、その身を委ねてくれた。
ヨイショっ!
玉の柄がグニャっとなった。ずんという重みだった。
大願成就がなった。
その瞬間、強烈な快感が全身を駆け巡った。
バンザーイっ!と大声で叫びたかった。
貌がぐしゃぐしゃに崩れているのが自分でもわかった。
先ほどまで魚はいないと、いじけていた自分が恥ずかしかった。
何分か経つと冷静さが戻ってきた。
そして、記念写真を撮ってから放そうとした時、新たな考えが脳裏に浮かんだ。三年前の秋に買っておいた、魚籠を卸したくなった。
魚籠はあの「渾身の一枚」と題した釣りの直後に買ったものだ。
この魚は、魚籠卸しに相応しいと考えた。
更に、桟橋にも連れて帰りたくなった。
桶は積んできていないが、こんなこともあろうかと今年からバッカンを餌袋入れとして持ち歩くようにしている。
魚の大きさは幾つだ…?。
検寸制限の40糎を超えているか…?。
玉からはみ出た大きさから推し測ると、41糎かもしれないが、39糎かもしれない。何れにせよ、写真判定に持ち込まれることは間違えない。今、この場で検寸定規で測ればよいが、そんな勿体ないことはできない。
魚籠が竿掛けと玉網置きの間に、初めて並んだ。
そして魚を魚籠に入れてから、思い出したことがあった。
「馬ノ背一番槍」のことだ。
どうやら、今年の、馬ノ背第一号は、オレが釣ったのだ。
それを思うと、喜びが二乗になった。

クリックで
拡大写真
馬ノ背一番槍。
餌会社のイラストのように撮りたかったが、
重くて持ち上がらなかった。

十三時。
本日ただ今の釣果、一枚。
そろそろやめようかと思う。
待望の魚か釣れて、本懐を遂げた。
目的を達したら、脱力感に襲われた。
残りの餌を打ち切ったら、やめにしよう。
そう決めて浮子を眺めていたら、やめられない事情ができた。
あれ以来なりを潜めていた、浮子が動きだしたのだ。
この挙動はへら鮒に相違ない。
据え膳食わねど… ではないが、ここでヤメるは男の恥だろう。
恥をかきたくないので続けてみたら、二枚、蓮荘で釣れた。
更に浮子は動くが、もうよかった。満腹だった。
釣れてくれた魚には申し訳ないが、感激もなくなった。
それに先ほどの魚が気になって仕方がない。
愛しの彼女の返事を待つ、少年の頃のようにときめいている。
もはや、釣りどころではなくなった。
今度こそ、やめる。
踏ん切りをつけると、一件落着。
そそくさと道具を仕舞い、納竿と相成る。
早く桟橋へ戻って、検寸の結果を待ちたい。

お仕舞い。

○本日の釣況。
・08:30~13:30、15尺底/三枚、両団子。

○2014年データ。
・釣行回数/二回
・累計釣果/14枚。

クリックで
拡大写真
本日の入釣場所の、周辺図。
この写真はピンぼけです。写真機の操作を誤りました。

クリックで
拡大写真
検寸結果。
写真判定の結果、ハナ差で残った。

クリックで
拡大写真
釣果欄にも載せてもらえた。

クリックで
拡大写真
私の馬鹿面です。
Photo by 相沢さん。

クリックで
拡大写真
初めて卸した魚籠。

2014年05月20日(火) 。
吉右衛門。



前の釣行記へ a 次の釣行記へ


掲示板
皆さま、お気軽にお書き込みください。



過去の釣行記
 
三島湖写真集
〔最終更新日2008年6月30日〕
へら鮒釣りに関する話題と情報を交換する掲示板「へら鮒釣りの広場」を新設!

 
三島湖周辺地図
 
戸面原ダム地図
   
   


▲このページの先頭へ
トップページ


a
a
博物館、美術館の企画展グラフィック、展示会パネル・サインのデザイン・制作なら
株式会社ラピス・ラズリ 〔東京都千代田区〕

Copyright(c)2008 Lapis Lazuli Co., Ltd. All rights reserved.

a
釣行記2010 釣行記2009 釣行記2008 釣行記2012