吉右衛門へら鮒釣り2011

  ◎第八回釣行
07月14日(月)

三島湖。
三ツ沢、農道跡。
ともえ釣り舟店。
晴れ、強風。
気温/27度、水温/度、水色/澄み、減水/0.77米。 

「三ツ沢農道跡(続編)、農道跡の釣りは奥が深かった」の巻。

農道跡で再び竿を出したくなった。
当初の予定では農道跡の次に行くのは、片倉ダム(笹川湖)のつもりだった。しかし、梅雨前線に釣行を阻まれているうちに、農道跡での再戦の思いが強くなってきた。
その心は、前回の釣りがとても面白かったことにある。
さらに手探り状態だった前回と違い、今回は一度とはいえ実戦を経験してきた。それに納竿間際に名人から教わった、餌の配合や空ツン対策等も試してみたい。
それらのことを現場に合わせてイメージしていると、図々しくも前回以上に釣れるような錯覚に陥ってきた。
そんなわけで、今回は珍しく釣果の上積みに挑もうと思う。

五時半。
三島湖、ともゑ桟橋。
天気晴朗なれど、風がある。
今朝の風は弱くはない。すでに湖面にはさざ波が立っている。
この時間でこの程度と言うことは、これから先は強風へと膨らむことになるだろう。
しかし、案ずることはない。
農道跡は風に強い、避風には最適の場所なのだ。

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本日の入釣場所の、正面図。

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黄色のピンが農道跡。
Google地図より。

七時。
三ツ沢、農道跡。
釣りを始める。
とりあえず、釣りを始めるには到ったが、舟を結び始めてから浮子下の調整を終えるまでに八十分も要してしまった。
こんなにも掛かったのは、奇怪な出来事と予期せぬ難題に遭遇したことにある。
前回の水位は満水だった。
それを14尺の竿でまかなった。おそらく、穂先と浮子の間隔は壱尺半位だったと思う。それに対し今朝の水位は、七七糎(センチメートル)の減水とあった。
(iPhoneで、三島湖管理事務所の水位を検索して調べた)
これは竿の長さに換算すると、二尺半、減水したことになる。
13尺にしようか…。
減水の程度からそう考えたが、13尺には仕掛けがないことを思い出した。そこで仕方なく前回と同じ14尺で間に合わそうとしたが、不思議な事に底が取れなかった。何度やっても棚取りゴムが着底することはなかった。
減水したのに、何故、水が深くなっているのか…?。
これは、奇怪なことだと思った。
私の頭ではとても理解できない出来事だった。
そこで何度も首を捻りながら、今度は15尺も出してみたが、これでもギリギリだった。底は取るには取れたが、困ったことに穂先と浮子の間隔は、浮子一本分しか確保できなかった。
それであれば、次は16尺、と言うことにも成ろうが、これも難しかった。頭上に樹木が待ち構えているからだ。
さらに難題があった。
舟をどうしても安定させられないのだ。
前回は舳先を結ぶのにサーベルを用いた。これを岩盤に深々と突き刺して固定することが出来た。そこで今回もサーベルを用いたが何故か深く刺せないでいた。力の限り槌で叩いても、半ば以上はどうにもならなかった。
こんな筈ではなかった。
前回の経験など、何の役にも立たなかった。
それでもこの場所からは離れたくない。
私は釣りをしたくて、農道跡にやってきたのではない。
農道跡で釣りをしたくて、やってきたのだ。
満足にはほど遠い形となってしまったが、頼りない着舟とギリギリで底が取れた15尺とで始めるしかなかった。

八時。
釣りを始めてから六十分が経った。
早くも苦戦必至の様相だ。
今回の釣行にあたっては名人の教えを始め、いろいろな事をイメージしてきた。しかし、それどころではなかった。
始めると同時に、にくいようなタイミングで、風が勢いを増してきた。
本来、農道跡は風には強い場所の筈だ。
しかし、浮子の立つ位置が悪かった。風の通り道のギリギリに立っている。もう少し短い竿であったら回避できそうだが、こればかりは諦めるしかなかった。
さらに厄介なことがある。
舟が揺れることだ。
矢張り、舳先の固定が脆弱すぎた。
それに、穂先と浮子の間隔が短すぎる。浮子一本分の間隔では、舟の揺れは致命的だ。舟が左右に振られると、いとも簡単に浮子が引っ張られる。
これでは釣りが成立しない。
それを改善しようと、鉤素を長くしてみた。穂先と浮子の間隔を少しでも稼ぐためだ。しかし、そんなことをしたくらいでは、この状況を改善するには到らなかった。
それはそうだろう。よく考えてみればこの農道跡で餌が着底する
のは平坦な湖底ではない。急な斜面だ。それだけに、鉤素を長くしたところで餌は深みに落ちるだけのことだった。
(イメージ写真を後ろに掲出)
これは容易成らざることだと思った。
想像もしてこなかった、悪い条件が重なってしまった。
別に農道跡をなめていたわけではない。
しかし、農道跡の釣りの深さと言うか、奥行きの深さに呑みこまれてしまった。
今にして思うと、農道跡で竿を出すには、私の技術はあまりにも稚拙だったようだ。
それでも釣りは続けたい。
それではどうすればよいか。思案六法の末、結論が出た。
斯くなる上は、竿は手で持つしかあるまい。
餌を目標着水点に投げこんだ後、竿は竿掛けに置かず手で持つのだ。こうすることで竿掛けの出番は餌を付ける時だけとなった。これを一日続けるかと思うとめまいがするが、ほかによい手を考え出すことが出来なかった。

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本日の釣りのイメージを、減水時の写真に当てはめてみた。
舟の位置が、この日の着舟水位。
写真の減水、五米。

九時。
悪いことに、体調にも異変が起きたようだ。
今回の釣りは前々から楽しみにしていた。それだけに今日に備えて昨夜は早々と床に入ったが、日付変更線を過ぎたあたりで目が覚めてしまった。不覚にも睡眠調整に失敗したのだ。
今朝、早く出てきたのもそこにあった。
それに、今朝の風は湿気をも運んでくる。
睡眠不足と湿気が合わさって、粘い汗が出てきた。
まずいことに成った。
最悪の釣況も含めて、撤退か転進かの決断を余儀なくされた。
転進するなら左側の岸が入り江風になっている。風もあちらにまでは及んでいないから、湖面は凪だ。しかも日陰だから体を休めるにも、もってこいだ。
あそこに移動しないか…。
しかし、あちらの様相がわからない。
このような事に成るとは思ってもみなかったから、あちらの地形までは見てこなかった。
そんな時、上流から朝、ペチャクチャと会話を交わした大口バス師が下ってきた。
そのバス師に、
あちらの窪みに移動したいのだが…。可否を尋ねてみた。
多分大丈夫だろう…。バス師は答えた。
ありがとう…。決断がくだった。
移動は不本意だが、この状況では致し方あるまい。
残りの餌を打ち切ったら、移動しよう…。
そう決めて餌を打ち出した、数投目だったと思う。
惰性で浮子を眺めていたら、突然、力強く消し込んだ。
これにはびっくりした。嬉しさよりも驚きの方が大きかった。
それはそうだろう。
餌は漠然と打っているだけで、頭は移動後のことに飛んでいたからだ。
しかし、私の反応は早かった。
竿を手で持って、釣りをしていたからだ。
そんな事情はさておいて、掛かった魚は大きかった。
それを例の赤い竿で数分掛けて釣り上げた。しかし、これを桟橋に持ち帰っても、見届け人が居るわけではない。
そこで、一人寂しく舟上で採寸すると、壱尺三寸三歩もあった。
今年、三匹目の四十糎だった。
思っても見なかった展開だが、形勢は一気に逆転となった。

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例によって、突然、魚が掛かった。
偶然にも写真機の片付けから始めていたので、
よい写真が撮れた。

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魚をもう少し持ち上げればよかったが、
格闘の始めでそうはいかなかった。
道糸がぶれてしまっているのは残念。

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背景は、松の木。

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計測、推定壱尺三寸三歩。

正午。
本日ただ今の釣果、五枚。
不細工な釣りながらも、前回と同じ釣果にまで辿り着けた。
悪かった体調も回復気味だ。病は気からではないが、案外いい加減なものだと思った。
それと結局、移動はしなかった。魚が釣れたからだ。
しかし、釣りの方は限界に達しようとしていた。舟の揺れが更に大きくなってきた。その揺れが原因でサーベルが土中から抜けそうになっている。
そんな時、思い出したことがあった。
名人の言葉だ。
名人は奥の樹木をロープで結んで、そこに舳先を結べば舟を前へ出せると言っていた。
そんなことが自分に出来るのだろうか…。
それと、もうひとつ。
舳先の向こうの奥に、黄色いバナナの皮が捨ててある。
皮の色からしてバナナの主は、昨日の入釣者と考えるのが自然だろう。
そう考えると、昨日の御仁はどうやって舟を固定したのか…。
名人の言葉も含めて現場を確認にいくと、今更ながら見つけたものがあった。
釘だ。
なんと釘が打ち込んであった。
地獄で仏は言い過ぎだが、そんな心境になった。
舳先を陸に持ち上げるような格好になったが、待望だった、舟の固定できた。
これなら少々風が吹いても、ぴくりともしない。
こんなことなら最初からもっと周囲の状況を探索しておけばよかった。しかし、まだ納竿予定時間までは二時間もある。
少しでも釣果の上積みを目指そう…。
そう思って二時間やってみたが、皮肉な事に舟が安定したからは一度も浮子が動くことはなかった。
固定前はボツボツと釣れていた。
最初に釣れたのが九時半で、中断したのが正午だったから、五枚の魚は、二時間半で釣ったことになる。
しかし、期待とは裏腹に、魚信すらもなくなった。
これでは残念ながら、納竿とするしかあるまい。
今日もいろいろとあった。
アクシデントの連続だったような気もするが、終わってみれば、楽しい一日であった。

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釘を見つけて、舟を結んだ。
最終着舟風景。
写真は納竿後に撮った。

十六時。
ともゑ釣り舟店。
陸に上がって若旦那に釣果の報告をすると、農道跡へ入釣したのは今日の私で四日連続とのことだった。
これには驚いた。前回の釣行記で軽々しくも、農道跡をB級ポイントを書いてしまったがこれは訂正せばねなるまい。
ごめんなさい。農道跡は立派な人気ポイントでした。
そんなことはさておいて、寂しいことを訊かされた。
いつも大変お世話に成っていた、あの番頭さんが引退されてしまわれたのだ。
番頭さんが引退された…。
いつぞの釣行記でも書いたことがあるが、私はこの「ともゑ釣り舟店」の方々が好きだ。
新参者ではあるが、こちらに草鞋を脱ぐと得も言われぬ温もりと安堵感を覚える。その中から番頭さんが抜けられた。この事で、楽しかった今日の釣りは消し飛ばされた。
気分がしょんぼりとしてきた。
担いでいた竿やら道具が、やけに重く感じられてきた。
そんな思いでの、一件落着となった。
番頭さんのことを書き出すと長くなってしまうので、今回はこれでやめにするが、秋には性懲りもなくまた農道跡にやってくるので、その時にでも書ければと思う。

お仕舞い。

○本日の釣況。
・07:40~14:40、15尺底/5枚、両団子。

○2014年データ。
・釣行回数/8回
・累計釣果/59枚。

2014年07月21日(月)。 
吉右衛門。



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