吉右衛門へら鮒釣り2015

  ◎第二十回釣行
2016年8月03日(水)。

戸面原ダム。
塚山。
戸面原ボートセンター。
天候/晴天のち大雨、無風。
水色/小濁り、水位/減水1.9m。 

「またも豪雨に見舞われた!」の巻。

戸面原ダムの桟橋に立つ。
一昨日の旅釣り、西湖の釣りは散々だった。強烈なスコールを浴びて泊まりの予定はキャンセル。すごすごと引き揚げてきた。
それが因であろうか。昨日は悶々とした日を過ごした。もっと釣りがしたかったのだ。そこでそのような気持ちを抑えきれず、戸面原ダムへとやってきた。
が、本日も天気予報がよろしくない。
昨夕、予報士が不安定な大気の状態から、またもゲリラ豪雨の発生を示唆していた。しかし見上げた空は隅から隅まで青一色。見事なまでに夏空が広がっている。このような好天が崩れるとはとても信じ難いが、予報士がそういうのだから仕方がない。かといってここはホームグランドのようなもの。そうなったらそうなったで、さっさと帰ればよい。
さて、出航。
本日の出漁者はざっと十五名。その一番最後での離岸となった。
私が向かうのは上郷橋を越えた塚山の付近に並ぶ立木群。ここを選んだのは、最近の釣果実績に惹かれたものではない。単に舟が留め易いからだ。このような怠惰な姿勢と動機に些かの情けなさも感じるが、近頃つとにおのれの限界を感じているだけに、これも仕方がなかろう。
真夏の朝を楽しむべく船尾を前に、ゆっくりと漕いでゆく。
石田島を横切り、豊岡光生園を過ぎようかとしている時だった。一艘の舟がとてもスローなペースで進んでゆくのが見える。
もしかしたら、あの舟かもしれない。
あの舟というのは、出航時に池主の相沢さんから、可なりのご高齢な方が元気に舟を出されていると聴かされていた。
そしてその年齢たるや、なんと御年、九〇歳。
思わず両の踵を揃えて敬礼でもしたくなるようなお年だが、悠然と舟を進めておられる。これは黙って追い越すわけにもいかぬ。挨拶をすべく舟を寄せると、
「おはようございます」
ご老人の方から先に挨拶をいただいた。そしてさらに、
「どちらの方へ行かれるのですか」と尋ねられる。
これには迷惑を掛けぬようさらに舟を接近させて、こう答えた。
「おはようございます。私は塚山の方へ行ってみようかと思っております」
「そうですか。私はね。今日は寮下でやろうかと思っています」
かくしゃくとして話をされる。そして昔、梅の木で大釣りをした話とかを楽しげに話してくださる。それに耳を傾けながら並漕してゆくと、ご老人は予定通りの寮下で手際よく舟を結ばれた。

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本日の入釣場所の、正面図。
先鋒、十一尺。

 
本日の入釣場所。マークした地点は大まかです。
正確性は欠如しております。
(Yahoo!地図より)。

☻本日の予定。
・目 標/五〇枚。
・釣り方/チョーチン(散け+角麩)。
・釣り竿/特作伊吹、十一尺。
・浮 子/痴舟、一番。
・釣り糸/1号。
・鉤 素/0.4号、100粍+600粍。
・釣り鈎/バラサ針 9号+ サソリ3号。
・納 竿/十五時。

七時半。
一昨日、主力の小道具を濡らしてしまったので、ずっと昔に使っていた角麩用の仕掛けを引っ張り出してきた。
で、真夏にこれを使えば豊漁が期待できる。しかし、そこは私の釣り。釣果の目標は控えめに半束としておいた。
第一投目を投げ入れる。
当然のことながら無反応。が、二投目、三投目と続いた四投目に早くも浮子が消し込んで、最初のへら鮒が釣れた。
これを合図に後続の魚を次々と玉で掬う。
野球でいうと三打数一安打のようなペース。
こうなってくると、これはこれで面白くない。なんというか単純作業に従事しているかのようで、この釣りの醍醐味である浮子がゆったりと沈んでゆくサマを眺める喜びがない。
釣れなければ泣きが入り。釣れても文句を垂れる。
我ながら、ほとほと面倒な男、と思う。

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本日の第一号。
背景は上郷橋。
背びれの後ろに白く写りこんでいるのが、前述の大ベテラン。

九時。
本日ただ今の釣果、十五枚。
三十分ほど前より手を休めて、おのれで集めた魚が散るのを待っている。落ち着けば本日持参の最長竿である十四尺を出して、底釣りにでも切り替えるつもり。
その間休息するような形でぼぅっとしていると、否が応でも蝉時雨がこだましてくる。大多数を占めるのはアブラ蝉だが、それに混ざってミンミン蝉の大音声が響き、少数派ながらも同じセリフを繰り返すツクツク法師もいるようだ。
わたしは、この季節のへら鮒釣りが一番好きだ。
蝉時雨を耳にしていると、少年だった頃が蘇ってくる。
前号でもこのような事を記したような気もするが、蝉採りは並継ぎの捕虫網と自慢の虫籠を首からブラ下げて出掛けた。
捕虫場所は近所の公園。
ニイニイ蝉から始まり、アブラ蟬、ツクツク法師と続くのだが羽根が透明なのはツクツク法師だけで、狙いのミンミン蝉や蜩はひとシーズンに数匹採れたかどうかの希少性があった。
そしてこの頃の大きな思い出として、夏休みの自由研究で行った昆虫採集において、たいへん良くできました、の花丸印を連打してもらったことがある。これはその年の夏休みでクラス一番の評価だった。で、何がよかったのかといえば、標本箱に蝉類や甲虫類を混在させず、複数の標本箱に分別したことが高評価に繋がった。私は劣等生とはいかないまでも、勉学においては級友から遅れをとっていただけに、このことは義務教育時代の唯一の勲章だった。
しかし、そうとばかりも言えない。
昆虫採集の名の下に、どれだけの昆虫の生命を奪ったことか。
採集キッドの玩具のような注射器に胡散臭い薬液を注入して昆虫を標本にしていった。当時も子ども心に胸は痛んだ。が、自由研究の為、との大義名分でその心を打ち消した。
しかし元来、採集が好きなだけで研究心もなければ向学心すら持ち合わせていなかっただけに、後年、無慈悲なことをしたとの禍根が残った。
それゆえ、自分の子供には昆虫採集はさせなかった。
そんな心に苛まれていると、今更にして罰が下ったわけでもなかろうが、俄かに青空が雲に覆われて予報士の予言通りの展開となってきた。
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豪雨に祟られた。

またも土砂降りの憂き目に遭った。
視界が遮られるような豪雨に飲み込まれた。もう底釣りなどやらずともよい。少しでも雨脚が鈍ったらその隙に撤収しよう。そう決めて傘の下に太った身体を縮こめていると、ひとりの釣り師がやってきた。そして私の隣に入りたいという。
どうぞ、どうぞ。と招き入れると、この方はあのご老人の息子さんだった。年齢は私と違わないようだが、違うのは腕前。何せ凄い。昨年の釣果はなんと四屯。そして今年も既に二屯以上も釣り上げているそうだ。
このような名人と隣り合わせる幸運に恵まれた。
これはやめるわけにはいかぬ。
このまま続けてお話を窺おう。
そう思い直して雨が止むのを待つが、一向に気配すらない。
名人は雨合羽に身を包み臆することなく竿を振り始めた。私も続けたいところだが、私が着ているのはフザケタようなアロハシャツ。これではどうにもならない。
というわけで、今回も豪雨に見舞われ、一件落着。
わずか九十分間、竿を出しただけで、ギブアップと相成る。

お仕舞い。

☻本日の釣果。
・へら鮒/15枚、

☻2016年データ。
・釣行回数/20回。
・累計釣果/307枚。

戦いすんで日が昏れて。
いつも私の拙い釣行記をお読みくださりありがとうございます。
今回の更新で昨年の記事のすべてを公開することができました。
当時、この釣行が昨年の最終回になろうとは思ってもみませんでした。その理由は前号に記したことがすべてですが、九月の初めには西湖の舟も予約しましたし、紅葉の頃には戸面原ダムを訪れようともしました。しかしその反動は大きく年が明けても、なんだかんだと理由をこじつけては引き篭もっておりました。
が、今月(四月)三日、初釣りに出ました。
すでに乗っ込みの季節になってしまいましたが、今年もへら鮒釣りを続けようと思っております。初釣りの模様は今月下旬から来月上旬にかけて更新するつもりです。
どうぞよろしくお願い致します。

※お断り。
この釣行記はiPad等の端末に合わせて編集しています。

2016年08月15日(土) 。

吉右衛門。



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