吉右衛門の営業日誌、初めてのお使い!の巻。
「とっても喜んで頂けました!今度サンプル持って行きましょう!」
このメールをスミレから受け取ったのは、14日金曜日の正午前。
そう、前号で記したように今日は何としても営業に行くつもりであっ
たのだが、昨日からの不調で断念。
そこでスミレに、初めての単独営業に行ってもらったのだ。
今回の営業は大事な、勝負所。失敗は許されない。
彼女は既に経験も能力も、ほぼ一人前。
それでも不安が拭えないのは、彼女を過保護にしているからだろう。
というわけで、
朝から期待と不安が入り混じり、そわそわ落ち着かない。
音楽を聴いていても漫画を読んでいても、何をしていても、だ。
何と言うのか、子どもを初めてのお使いにやったような気分。
そんな思いで、何度も何度も時計を見やりながら過ごしていると、
待ちに待ったメールがやってきた。
震える手で紐解いて、
冒頭の内容を読み終えた時は、寝床で小躍りしてしまった。
よくやってくれたっ!、スミレちゃん。
オレは嬉しい。
今年のオレはズッと彼女と、喜怒哀楽をともにしている。
ピーナッツが倒れた時の夜、震災の日の帰り道で食べたジャイアント
コーン、池袋での現場の帰路での真っ暗闇の首都高速、新緑が香った
鎌倉での設営、所沢からの深夜の帰宅も楽しかった。
あとは何だろう、利根川、秩父、多摩地区への営業。売れなくても売
れなくても突撃を繰り返すオレに、彼女はいつも笑顔で付いてきてく
れる。緊張を解す意味で車中、人生いろいろを歌ってもらったし、
浅草の鮨屋では中尾涁さんと同席した事もあった。
そうそう、
あの日の夜道は格別に星が奇麗で、まさに星影の小径であった。
僅か10ヶ月足らず事を、思いつくまま書き並べただけで、
こんなにもいろいろある。
然し、肝心の営業の方はというと、未だに成果ゼロ。
本来はバンバン売って、これが飛込みの営業だっ!とみせるつもりで
あったのだが、見せてしまったのは売れないダメ営業。
滅入るんだよねえ。
この日も歓喜の後、冷静さが戻ってくると、こう思った。
案外、オレが行かない方が上手く行くのではないか、と。
そんな忸怩たる思いで過ごしていた午後、
またしても、彼女からやってきたメールを開封してみると、
こんな事が書いてあった。
「元気になったらいっぱい営業しましょう」、と。
お仕舞い。
2011年10月14日、 吉右衛門。