戸面原ダム。
前島沖立木。
戸面原ボートセンター。
晴天、弱風。
気温31度、減水9.1m、水温27度、水色澄み。
またも前島へ、の巻。
石田島が黄金色に輝いている。
朝日のふりそそぐ本湖が美しい。
風がそよとも吹かない湖面は、まるで鏡のようだ。
そして、その鏡の中には青い空と白い雲が映し出されている。
──何と言う絶景だろう…。
私は今、戸逆橋の上の立ってこの光景を眺めている。
過去に幾度となく眺めたことのある景色であったが、こうも美しく見えたのは初めてだ。
一年前の九月は、散々であった。
それだけに、余計に感慨深く見えるのだろう。
今日もこの贅沢な空間に小舟を浮かべて釣りが出来る。
幸せだと思う。
今日こそは連続オデコの記録に終止符を打つべく、いつもより早く家を出てきたのだが、こんな光景に出会ってしまい、離れ難くなってしまった。
三十分も魅入っていただろうか。時間を忘れて過ごしていたら、巡回中のボートセンター管理人、相沢さんが通りかかられた。
「おはようございます」
オレをみつけ、車を降りて笑顔で挨拶をしてくれる、相沢さん。
その素敵な笑顔に挨拶を返しながら、今朝の減水状況を伺うと、9.1米なる答えが戻ってきた。
──9.1米かあ…。
前回は7.8米だったから、また更に1.3米も減ったことになる。
最近は全国的な雨不足でダムの貯水量が問題になっているが、少ない所では貯水量が10%を割ったダムもあるらしい。この戸面原ダムの現状はどの位なのであろうか。
それに、この残暑。
例年九月に入れば、涼しくは成らないまでも気配に秋が立つものだが、未だに酷暑が続いている。
自分の場合は、夏が好きだから気にはならないが、ココで商売をされている方々は大変だ。颱風とはいかないまでも、雨が降らないとそれこそ干え上がってしまう。
午前七時。
桟橋に立つ。
今日も向かうは、前島。
そして舟を結ぶ先は、前回世話になった大立木の沖に生えている小立木群だ。
前回は残念な結果に終わったが、今年も前島で型を見るまでは何度でも突撃を繰り返すつもりだ。
そんな思いで舟に乗り込むオレに相沢さんが悪戯っぽく笑いながら、こう言った。
「今日は釣ってきて欲しいなあ…」
釣りたいのは山々だが、
「最善を尽くします」とはとても言えない、オレ。
正直に告白すると、釣れる気はまったくしないのだ。
それでも前島を選択する。オレの頭の中は一体どうなっているのだろうか。
何はともあれ出航。
先ほど費やしたロスタイムで遅れはしたものの、そそくさと目的地の立木群に舟を結んで、陣を構える。
◯本日のデータと予定。
・目標/定めず。
・竿 /嵐馬.10尺。
・浮子/忠相グラスムクトップ.10番。
・鉤素/450粍+600粍。
・餌 /麩系両団子。
・納竿/十五時。
午前八時。
いつもより一時間早く第一餌を投ずると、あたかもそれを待ちわびていたかのように、あちらでポコン、こちらにポコン、とモジリが始まった。自分の付近ではないが、いつもとは明らかに違う魚の活性にほくそ笑む。
──今日は期待が持てそうだ…。
そう思って浮子を眺めていたが、九時が過ぎる頃には希望の光であったモジリは消滅し、十時を廻っても浮子は動かない。
朝のモジリが活発であったこと以外は、なんてことはない。前回のリプレーでもみるかのような展開となってきた。
午前十一時。
竿と仕掛けを交換。
・竿/朱門峰凌.9尺。
・浮子/杉山.2番。
・鉤素/330粍+400粍。
それしか考えられないのか…。
と誰かに言われそうだが、いつもの浅タナ仕掛けに替えて挑む。
正直、大して期待はしていなかったのだが、三十分ほど打込むと、浮子の挙動に待望の変化が表れた。
──小魚の母親でなければいいなあ…。
そうなのだ。前回は三時間の苦闘の末に釣り上げたのが、小魚(ヤマベ?)のお母さんだったのだ。
そう思って続けていると、魚信の頻度が増してきた。
三投に一度は力感あるツンが出る。
──これはへら鮒だろう…。
期待で胸が高鳴りだした。
そんな時であった。
ツンが消し込みに変わり合わせてみると、ずんと腕に痺れる重みが走った。
──やった!。
魚に出会えたのは、何時以来だっ!。
そんなことを思いながら七転八倒していると、水面に現れたのは片目のジャックであった。
ジャックは力持ちであったが、0.5号の鉤素が有無を言わさぬ威力を発揮して、ジャックを引き寄せた。
玉で掬ったジャックは、壱尺弐寸程度の大型であった。
魚を釣ったのは、二ヶ月前の第1カーブ以来だ。
嬉しい…。
この感激を誰かに伝えたくなった。
そうだ、相沢さんにしよう。
i-Phoneを手に取り、直ぐに電話。
「相沢さん!やりました。遂に釣りました!」
「やった!。よかったですねっ!」
「ハイ!。今日は三枚を目指して頑張ります…」
我がことのように喜んでもらえた。
一枚の重みを感じるに足りた魚でもあった。
そして記念写真を撮ろうとカメラを向けたのだが、跳躍一番。
渾身の力を振り絞って跳ね上がった、ジャックに逃げられた。
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本日舟を結んだ、立木群。
減水で背景の石田島も陸続きだ。 |
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正午。
目標の三枚を目指す。
そう思って再開するが、今回の釣行記における記述事項はここで終わってしまう。
適当にあった魚信が、あっけなく消滅したのだ。
正確に言えば、この後も角麩に替えたりして挑んだのだが、毎度毎度のワンパターンを書くのも、マンネリなのでここは端折らせてもらう。
そして納竿時間の十五時まで粘ったものの、浮子が動くことはなく、納竿と相成った。
竿を仕舞いながら、今日の釣りを想う。
オデコに終止符を打てたこと。
今年も前島で釣果をあげられたこと。
これだけで何も言うことはない。
満足を確認して、一件落着。
今年の夏の釣りが終わった。
お仕舞い。
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石田島にみる減水模様。
青線が満水ライン。
急斜面の下には平坦な緑が広がっている。 |
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○本日の釣況。
・08:00~10:55、10尺天々/0枚、両団子、
11:00~13:00、9尺2本/1枚、両団子、
13:15~14:50、10尺2本/0枚、角麩、
・合計 一枚。
○この日の釣果データ。
記事掲載のPDFデータはこちら>>>
○2012年データ。
・釣行回数/8回
・累計釣果/49枚、平均/6.1枚。
2012年10月28日(日) 。
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