吉右衛門へら鮒釣り2011

  ◎第四回釣行
05月19日(月)

戸面原ダム。
前島。
戸面原ボートセンター。
晴れ時々曇り、弱風。
気温/23度、水温/不明、水色/小濁り、減水/3.8m。 

「前島。リターンマッチ」の巻。

開幕して三戦目で、早くも土がついてしまった。
初戦、二戦目と充実のファイトだっただけに残念だ。
しかし、あの悪条件ではやむを得なかったし、未だに風がなかったら釣れたと思っているから、運がなかったと諦めるしかない。
それにしても、あの日はきつかった。
意気消沈してハンドルを握った館山道。
とぼとぼと登った自宅マンションの階段。
帰宅すると直ぐ横になり、忸怩たる思いで天井を眺めた。
その黒星から一週間が経ち、随分と冷静になれた。
思い起こせば、昔の自分はいつもああだった。
学生時代は自治会と部活に明け暮れていた。
社会に出てからも工員時代は燻っていたが、人事移動で営業に転じたのが吉と出た。私は水を得た魚の如く仕事に熱中した。世はバブル期の前夜。面白いほど、仕事を集めることが出来た。そんな仕事に囲まれた緊張の日々を夢中になって駆け抜けてきた。
それがいつしか、そんな姿は消え失せた。
別に意識したわけではないが、世間さまからは穏やかともみられるようになった。それは、張り詰めていた緊張の糸が切れたせいなのか。少しばかりの余裕が生まれたからなのか。はたまた、体を壊して臆病になったのか。よくはわからないが、あの頃とは正反対の自分になってしまった。
私は体にハンデを抱えている。
主治医からは夢中になって興奮することや、根を詰めたりすることを固く禁じられている。
しかし、あの日は違った。
一瞬とはいえ、あの頃の自分の戻れたような気がして、とても嬉しかった。もう、あんな執念とバイタリティはどこにも残っていないと思っていたからだ。
今日もまた、前島へ、リターンマッチに向かう。
四週続けての釣行だ。
周囲に迷惑をかけない程度に、遊んでこれればと思う。

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本日の入釣場所の、周辺図。
出航前に、戸逆橋から撮った。

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本日の入釣場所の、地図。
Google Earthより流用。

◯本日のデータと予定。
・目標/一枚。
・竿 /朱門峰嵐馬、14尺。
・浮子/忠相パイプトップ、13番。
・道糸/1号。
・鉤素/0.5号、300粍+360粍。
・棚 /底。
・餌 /ペレ道+つなぎグルテン+粒戦細粒+バラケマッハ。
・納竿/十五時。

八時。
前島。
天気晴朗、凪。
リターンマッチのゴングが鳴り響き、雪辱戦が始まった。
舟を前回と同じ位置に結び、竿も同じ物を出した。
今朝の水位は、減水3.8米(メートル)。
前回(2.9米)より減水が進み、三尺浅くなった。
それに伴い穂先と浮子の間隔も広がった。竿を立てると浮子は二本半の上くらいの所にぶら下がっている。
私の技量では、このような釣りは難しい。
餌の着水点が散けてしまうからだ。それならいっそ遠浅も考慮して12尺でよさそうなものだが、そうはいかない理由があった。
出船前にボートセンターの管理人である相沢さんが、前号でも紹介した、前島名人の釣りを話してくれた。
名人は私が悲嘆に暮れた翌日の例会で、三十枚も釣ったらしい。その時の竿は16尺。前回の釣りでも名人が16尺を振っていることに疑問を感じたが、その怪も明かしてくれた。それは、魚の警戒心を解く為だという。
なるほど…。
言われて納得したが、残念なことに、私は二本半を16尺で振るだけの技量を持ち合わせていない。そこでやむなく14尺を選択したわけだが、この竿にしたって前述の通り難しい。
しかし、手を拱いてばかりは居られない。
ぎこちないながらも餌を打ち始めると、案ずるより産むが易し。
餌を付けた状態で、赤、黄、緑、と三節露出するように設定したトップの、五節目にある赤が出てきた時だった。
力感には欠けるが、ふわッと二節沈んだ。
不意な動きに虚をつかれたが、空かさず反応すると、オっ!。
針に魚が掛かった。
しかし、それは一瞬だった。
次の瞬間、針は空針となって宙を舞った。

九時。
どうやら先ほどのは、冷やかしだったようだ。
あれ以来、浮子は動かないし、もじりさえも滅多にない。
そして矢張り、竿を上手く操れない。
餌の着水点は左右にはズレないが、前後にズレる。着水予定点(浮子を立たせる位置)を意識し過ぎると手前に落ちる。それを嫌って沖めに投げると、今度はトップが水没する。
これではまずい…。
竿尻を引っぱり調整するが、どうにも上手くいかない。
改善に乗り出し、浮子下をいじり始めると、最初にゴムで測った設定点より浮子の位置が随分と高くなった。こうなってしまうと改善ではなく、改悪の方向へ転がったような気さえしてくる。
これで大丈夫か…。
餌が底を這いすぎていないか…。
浮子下のズレが気になりだした。
自分の仕事に自信がないから、半信半疑に陥った。
その時だ。何の前触れも無く、突然、浮きが消し込んだ。
迷路の入口で彷徨い始めていたが、その動きに反応すると、針に魚が掛かった。
いつもそうだが、私の釣りは、突然、釣れる。
この時もそうだ。前触れがないから一瞬驚いたが、魚は無事、玉に納めることが出来た。
しかし、これが前回果たせなかった大願成就の瞬間かと思うと、あまりにもあっけなかった
そのせいだろう。
あんなにも恋い焦がれていたのに、感激も小さかった。
これが前回だったら…。
未練がましいが、これが偽りのない素直な気持ちだった。
魚はあまり大きくはない。尺の玉を僅かにはみ出す程度だ。
とりあえず、記念写真を撮ろう…。
魚にとっては迷惑な話だが、写真機を向けると、少しだけ冷静さを欠いていたのだろう。持ち上げた瞬間、逃げられた。
釣行記には釣った魚の写真は必須材料だ。何とかもう一枚、と思っていたら、またも、消し込んだ。

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本日の、第二号。

十一時半
すぅーっと力が抜けていった。
大願成就の瞬間から二時間が過ぎ、自分に取り憑いていた瘧のようなものからも解き放たれた。
あれほど迄に執念を燃やしていた事が、嘘のように思えてきた。
魚を仕留めたことは嬉しさよりも、安堵感の方が大きかった。
そしていつもの長閑な釣りに戻ると、これから先は釣れようが釣れまいが、もうどうでもよいと思えるようになってきた。
時を報せる鐘の音が聴こえてきた。
正午だ。
今日は好天に恵まれた。
昼だというのに湖面はそよとも動かない。
鏡のような湖面に存在するのは、私のトップだけだ。
このトップが久々に、ツンっと鋭く動いた。
この動きに反応すると、今度の魚は大きかった。右に左に可成りの抵抗を受けたが、馬ノ背で用いた赤い竿とは違う。
時間は掛かったが、こいつも無事、玉で掬うことが出来た。
尻っぽが無いので40糎(センチメートル)は微妙だが、相沢さんへの戦果報告にもなる。今回も魚籠を出すことが出来た。

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大きな魚が掛かった。

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魚籠が竿掛けと玉置の間に並んだ。

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事情があって掲出が遅れたが、
本日の入釣場所の、正面図。
昼に撮った。湖面はべた凪だ。

十四時。
この過疎地に魚が集まってきた。
朝から真面目に餌を打ち、誘致した結果だ。
浮子の動きに躍動感が出てきた。
浮子の周辺でも、もじりが見られるようになった。
本来は好機到来なのであろうが、私の場合はそうでもない。
宙釣りでもそうだが、空ツンが頻発して釣れないのだ。
これが釣技の優者と劣者の差なのだと思う。
優者はバンバン釣り上げ、劣者は空振りの山を築く。
朝に連発した消し込みも、劣者ならではの現象だったと思う。
私が今、書いているのは釣行記。
それだけに、この続きも書きたいが、あまりのお粗末ぶりに、これを書くのは厚顔無恥な私でも憚られる。
そこで結果だけを、ひっそりと書いておく。
十四時から十五時までの結果。
釣り上げた魚の数、二枚。
魚が湖面に姿を現す前に逃げられた数、五枚。
空ツンの数、無数。
宙でやっても、底でやっても、へぼはへぼでしかないのがよくわかった。
序でに、今日の釣果もお浚いしながら書いてみる。
朝、蓮荘後にもう一枚釣れて三枚。
昼、四十糎を釣った後にも二枚釣れて三枚。
そして先ほどの二枚を加えた、合計八枚が今日の釣果だ。
私には技術がない。だから釣果はいつもこんなものだ。
しかし、今回は大願成就出来たし大型のオマケまでもついた。
これなら胸を張って桟橋へ凱旋出来る。
それが確認できると破顔一笑、一件落着。
バッカンに入れた大型を連れ、桟橋へと舟を漕ぐ。

お仕舞い。

○本日の釣況。
・08:30~15:00、14尺底/八枚、両団子。

○2014年データ。
・釣行回数/四回
・累計釣果/二二枚。

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正午に釣った、大型。
検寸の結果、四十糎ピッタシだった。

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釣果記録。名前を載せてもらえた。

2014年05月25日(日) 。
吉右衛門。



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