吉右衛門へら鮒釣り2011

  ◎第五回釣行
05月30日(金)

戸面原ダム。
宇藤木川、大曲。
戸面原ボートセンター。
晴れ、無風。
気温/28度、水温/不明、水色/小濁り、減水/2.7m。 

「宇藤木川大曲。何とも長閑な釣りだった」の巻。

春は馬ノ背、夏は前島。そして秋は向田湾処。
今年の始めに私が密かに計画した季節ごとの入釣目標ポイントを書き並べてみた。
このいずれのポイントでも、底釣で魚を仕留める。これが今年の目標であった。
そして馬ノ背から前島へと続いた三連戦を終えた。
春の目標であった馬ノ背をすんなりと突破できたことから、一足早く、前島へ転戦した。夏の予定を繰上げたのは、偶然にも竿が絞られていたのを目撃したからだ。
前島の初戦はオデコに終わったが、リターンマッチで迎えた二戦目で無事、目標を達成することが出来た。今にして思えば大願成就した二戦目よりも、苦心惨憺した初戦の方が面白かった。これは恐らく滅多に出来ない体験をしたからだろう。
それにしても、この三連戦は夢中になり過ぎた。過去にない加熱ぶりだった。しかし、それもリターンマッチで魚を仕留めてみたら、すぅーっと力が抜けていった。
そこで、ここまでをひと区切りと決め、来月に予定している三島湖のダムサイドまでは休むつもりだった。けれども、燃え尽きた跡の残りカスにようなものが燻っていて、又も行きたくなった。
居ても立っても居られないというほどではないが、今朝も館山道をひたひたと南下する。
いやはや、今年の私はどうしたのだろうか…。

六時半。
戸面原ボートセンター、桟橋。
天気晴朗、無風。
公式出舟時間の、六十分後。
いつものように、ひとり桟橋に立つ。
今日は西からの風が吹くらしい。
それならば、杉林で宙釣りでもをやろう…。
漠然とそう思いやってきたが、既に四名の方が向かわれたいう。
今更、一時間前に売り切れた場所へ行っても仕方がない。
取りあえず、今日の落ち着く先を決めねばならない。
落ち着く先と言っても特別な穴場を知っているわけではない。
考えられるのは本湖でお茶を濁すか、久々に上郷地区へ遠征するか、はたまた宇藤木橋を越えるか。このくらいだ。
このなかで避風を優先順位の最上位にもってくると、経験のある宇藤木橋を越えて川筋を遡るのが無難だろう。
さすれば、宇藤木橋から大曲(第1カーブ)の間の何処かに落ち着くとしよう…。
大して悩むことなくもなく決めると、穏やかに出航。
今回の釣行は過去三回とは違い、燃えるものがない。
燻った燃え残りのカスだけでは、どうにも気合いが入らない。
そんな腑抜けた状態だが、たらたらと漕いで行くと馬ノ背が見えてきた。ひと呼吸をして周囲を見渡すと、四名いる筈の杉林には一人きりしかいない。残る三名はというと道跡に並んで何やら楽しそうだ。仲良きことは美しき哉。
途中、秋の目標である向田湾処へ寄り道。流れ込みがある立木の辺りを測量をしてから宇藤木橋を越える。
さて、何処に舟を結ぼうか…。
宇藤木川を、またもたらたら遡ると格好の立木が並んでいた。
しかし、測量した結果は五米(メートル)以上。この深さでは今回持参した最長竿の17尺を出しても底には届かない。
それでも、ここでやりたければ宙釣りになるが、どうせやるなら底釣りをやりたいから、ここはパス。
結局行き先がなくなり、二年前にオデコを喰らった、大曲の内側に落ち着くことになった。

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本日の入釣場所の、正面図。

 
地図。

◯本日のデータと予定。
・目標/五枚。
・竿 /朱門峰嵐凌、15尺。
・浮子/忠相パイプトップ、13番。
・道糸/1号。
・鉤素/0.5号、300粍+350粍。
・棚 /底。
・餌 /ペレ道+つなぎグルテン+粒戦細粒+バラケマッハ。
・納竿/十五時。

八時。
宇藤木川、大曲。
第一投を合図に、今季五回目の釣りが始まった。
今回はいつになく、すんなりと浮子下の設定が出来た。
二年前の記憶が生きていて、迷うことなく竿を決められた。それにいつも悩ませられる湖底にも、障害物はないし、大した凹凸もない。
浮子は穂先の先端から壱尺伍寸位の所で収まった。
ともすれば穂先とぶつかりそうな気もするが、やってみるとそうでもない。それにこの位置なら餌の落としどころも安定するから釣り方としては良好だ。
しかし、良いことばかりではない。困ったこともある。
肝心の魚の棲息している気配がないのだ。
浮子が動かないのは始めたばかりで当然としても、もじりがないし泡も浮いてこない。これは宇藤木橋から漕いできた道中もそうだった。
魚が棲息していなければ、またも寂しい結果に終わるが、今回に限っては、それならそれでもよいと思っている。
冒頭に挙げた三ヶ所は私にとっては聖地のようなものだが、ここは違う。野球に例えるなら東京ドームと河川敷くらいの大きな隔たりがある。それだけに、何がなんでも釣りたい、というような思いはない。

九時。
そんな思いとは裏腹に、釣りに変化が出てきた。
餌の沈下速度に異変が起きたようなのだ。
餌は魚粉を中心に扱き混ぜたものを用いている。だから重量がある。錘も160粍のパイプトップを沈ませるだけのものを背負わせている。それだけに普段なら湖面から湖底迄をノンストップの直行便となって一気に落下する。それがそうでなくなりつつある。
これは落下途中に何ものかが邪魔をしているからに相違ない。
確証を得るため、餌の着水から浮子がなじむ迄の時間を計ってみたくなった。
実は私。昔は二十秒位迄なら、一、二、三、と頭で数えて、ほぼ正確に時間を測ることが出来た。四十年も昔の懐かしの工員時代に、暗室で写真の焼き付け作業を行っていたからだ。その時に養った感覚が失われていなければ、出来ないことはない。
面白そうなので、右前方の深場に餌をいれてみた。
一、二、三、…。二十秒強であった。
次に定点に入れてみた。
一、二、三、…。二五秒前後であった。
これは意外だった。
湖面に落とした餌が湖底に到達し浮子が立つまでの時間は、せいぜい十二、三秒と考えていたからだ。結果については三秒程度の誤差が出たが、誤差が出た、と言えるものでもない。昔もそうだったがこれで計れるのは二十秒位が限界で、それを越えると緊張が持続出来ないから、どうしても誤差が生じてしまうのだ。

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本日の入釣場所。
この写真は納竿後に対岸から撮った。

どうやら誤差ではなかったようだ。
上から五節目にある赤い塗料がチラチラと見え隠れするようになった。小さな動きだが、これは魚がいる証拠だろう。
しかし、魚種を問われると自信はない。
二年前のここではへら鮒を期待して、ブルーギルだった。
昨年の西川淵ではブルーギルと諦めていたら、へら鮒だった。
そんな頼りない経験しかないが、期待半分、諦め半分で眺めていたら、今日初めて、浮子が強く明確に動いた。
オっ!。
空かさず腕を伸ばすと、魚の手応えが伝わってきた。
魚は驚いたようにグルグルとあたりを廻り抵抗したが、直ぐに湖面に顔を現した。顔を出したのは年端もいかない子どもだった。針に掛けた瞬間からその予感はあったが、今年初めて、放流べらを釣り上げた。
ここは放流べらの棲家か…?
もし、そうなら沢山釣れるかもしれない…。
そう思ったら違った。
次は大きいのが掛かった。
一瞬、今季三度目の魚籠が頭に浮かんだ。今回の竿は馬ノ背の時と同じ胴調子の赤い竿だ。この竿で大きな魚を掛けると大変なことになる。これは馬ノ背で経験して実証済みだ。
今回もそうだった。
腕力がないから右に左に暴れられて制御が出来ない。しかも、肝心の利き腕である右腕は写真機の操作で忙しい。脆弱な左腕一本だけで応戦していてはとても敵わない。そこで写真機をぶん投げ右腕も加勢させると、やっと互角になり、魚も動きを止めた。
膠着状態が続いた。
これは最後の抵抗に備えて力を溜めているに違いない…。
こちらも竿を強く握りしめて、決戦に備えた。
しかし、数秒が経っても動きがない。
何か、おかしい…。
そこで、一、二回、竿を強く振り上げると、驚いたことに、いつの間にか魚はオダと掏り替わっていた。

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本日の、第一号。
今季初の放流べらでもある。

大きいのを逃がした悔しさより、おのれのお粗末ぶりには、ただただ呆れるばかりだ
先ほど下流に駆け抜けて行った川鵜も、樹々の小鳥たちも、さぞかし大笑いをしていただろう。しかも、仕掛けが切れるというオチまでついた。
そして切れた仕掛けを作り直しながら思う。
このダムの底には大きな魚が棲息している。それだけに、この竿を使うのは無理があるのではないか。しかし、そうはいってもこれしかないのだから仕方がないが…。
この竿を求めた七年前のことを思いだした。
渋谷のサンスイ釣具店でこの赤い竿を奇数竿として買い揃えようとした時、武重店長からこう言われた。
この竿は軟らかいので釣り堀で使うと廻りに迷惑を掛ける、と。
それでもこの竿を選んだのは、私の性癖からだ。
私は何を買うにも機能より意匠(デザイン)を優先する。いくら機能に優れていても意匠が気に入らなかったり、センスのない商品名が付けられているものは選ばない。
この竿もそうだ。
「武田の赤備え」ではないが、この赤を基調とした意匠を気に入り求めたのだ。それだけに店長の貴重な助言より性癖を優先したツケを払うのは致し方ない。。

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本日の入釣場所の、上流図。

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本日の入釣場所の、下流図。

十時半。
再開にこぎ着けた。ロスタイムは四十分もあった。
それでも魚は待っていてくれたようだ。
浮子は直ぐに躍動し始めて、釣れだした。
浮子の動きは明確だ。鋭く、そして強く動く。その動きに合わせると次々に魚が掛かってくる。こうして釣れだすと、前回の前島での終了間際の釣りは、いったい何だったのかと思う。
浮子の動きはあの時とまったく同じだ。それなのに今回は面白いように釣れて、前島では空振りの山を築いた。
そのうえ前島では、連続二回の消し込みも経験した。
餌を底に這わしているのに、何故、浮子が消し込むのか…?。
こんなことを思案していると、カウンターの数字は十八を数える迄になった。

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魚のサイズはこんなもの。

正午。
宇藤木川が、おかしい。
先ほどから流れが出てきた。
川だから流れがあるのは当たり前だが、眼の前の川は、水が下流から上流に向かって流れている。
これは不思議なことだ。
川の水は上流から中流を経て下流に流れるものと、昔から相場は決まっている。桃太郎もそうして流れてきた。
しかし、そうでない場合もあるようだ。その証拠に浮子の頭は上流に向かってお辞儀をしている。
そのうえ流速もある。流れ出した頃は斜め前方にあった浮子も、いつの間にか真横にまで流されるようになった。
※突然ですが、これでお断りを書いておきます。
今回の記事を書くにあたり川の名を、「宇藤木川」。場所を「大曲」。と表記しましたが、この宇藤木川とは正しい名前です。
記事によく登場します戸面山は、私が勝手に名付けた嘘の名ですが、宇藤木川は正式名称です。この釣行の直後、河川の管理者である富津市役所に問合わせて確かめました。間違えありません。
そして大曲ですが、こちらは横利根川から拝借して私が勝手に名付けました。こんなことばかりを書いていると、誰かに怒られそうですが、第一カーブではあまりにも情緒と色気がありませんので、お許し願えればと思っております。
閑話休題。
本日ただ今の釣果、十八枚。
よく釣れている。私にとっては、釣行二回分の釣果だ。
しかし、流れが出てからは、釣れなくなった。
そこでやむなく、ぴたりと決まっていた浮子下に手を付けざるを得なくなった。
すでに先ほどから三、四回は糸を延ばしている。この分でいけばこの竿では賄いきれなくなる。そんな危惧も生まれてきたが、魚はもう充分に釣ったから、今は釣りよりも前述した川の逆流の方に興味がある。
私には今年の夏、二才になる孫がいる。片言を喋り始めたばかりの孫娘た。
この孫娘に眼の前で起きている現象を、家の長、として言い伝えねばなるまいと思う。底釣りをしていても消し込みがあることはどうでもよいが、このことはどうでもよくない。
しかし、「爺ちゃん。なんで?」と訊かれたら、なんと答えればよいのか。
ここは渓底にあって風は無縁だから、風による流れではない。
また数カ所ある流れ込みからの増水もない。それは朝、向田湾処を見学してきたときに確かめた。
更にここダム湖はだから、潮の干満の影響を受けることもない。
これは、困った。確かな答が見つからない。
これは市役所に問い合わせても分からないだろう。
誰かこういったことに詳しい人物はいないか…。
暫し考えたが、誰も居ないから自力で調べ解決を図ろうと思う。

十四時半。
流れが出てからも、幾つか釣ることが出来た。
カウンターの数字を確かめると、先ほどより五枚増えて二三枚となっていた。
釣りをそっちのけて思考が脱線したが、よく釣れたと思う。
今朝桟橋を出航するにおいて、行き先が決まっていなかったこともあり、ボートセンターの管理人である相沢さんに行き先を告げずにきてしまった。竿を出す前に連絡を試みたが生憎と電波圏外だった。あいつは何処に行った、と心配しているとこもあるまいが、これにて、一件落着にしようと思う。
今回は情熱に欠けた分だけ、長閑な釣りを満喫できた。
そんな結果に満足して、桟橋へと舟を漕ぐ

お仕舞い。

○本日の釣況。
・08:00~14:30、14尺底/二三枚、両団子。

○2014年データ。
・釣行回数/五回
・累計釣果/四五枚。


2014年06月08日(日) 。 
吉右衛門。



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