吉右衛門へら鮒釣り2011

  ◎第十二回釣行
09月10日(水)

片倉ダム。
ズウダ親水公園、東屋下。
笹川ボート。
曇り日、凪。
気温/26度、水温/25度、水色/薄濁り、減水/1.7米。 

「ズウダ親水公園東屋下。愉快!痛快!スリル満点の釣りだった」の巻。

私は片倉ダムの釣りが好きだ。
オデコを喰らうのが当たり前で、浮子が動くことすらが希少なこの釣りがだ。
浮き世のしがらみや何やらで今年は幾度も来れなかったが、来年からはこちらの釣りを大きく増やすつもりだ。

七時。
曇り日、微風。
片倉ダム、笹川ボート桟橋。
公式出舟時間から遅れること九十分、桟橋に立つ。
私の道具を運んできてくれた大旦那がおっしゃるには、今朝はすでに五人のへら師が出舟したという。
これは意外だった。こちらのへら師は常連が多く、そして彼らが集うのは火曜日と訊いていたからだ。そこで私はその日を避けてやってきたのだが、どうやらその目論みはハズレたようだ。
これは、どうしたものか。
ひとしきり考えてみたら、すぐに答えは出た。
昨日、戸面原ダムで地元の会の月例会が開催されていたからだ。
戸面原ダムで例会があると、こちらに影響が出るのは、別に深い話ではない。その参加者の中に同一人物がいると言うことだ。
私はこの辺りの情報が、どうにも疎い。
いろいろな方から情報を得ても、その運用能力に欠けるから、いつもこうなってしまう。その結果として、今回の目的地であるダムサイドも売り切れてしまったに違いない。
それでも未練が断ち切れず、ダムサイドまで漕いで行くが、案の定、売り切れていた。ダムサイドはしっかりと占拠され、三名の方が竿を出していた。並びからして前回と同じ岬側なら入れなくもないが、無理は禁物。それはやめておこう。
それでは何処に舟を結ぼうか…。
少し考えると、あっさりと代替地を思いつくことが出来た。
前回の釣りで名人が終了間際に移動した、ズウダ親水公園にある東屋の下の辺りだ。
そして、その場所は直ぐそこに在る。そこを見やると舟を結ぶにはもってこいの場所を見つけた。

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本日の入釣場所の、正面図。

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本日の入釣場所の、対面図。

 
Yahoo!地図より。

◯本日のデータと予定。
・目標/一枚でもよいから、鮒属を釣り上げること。
・竿 /朱門峰嵐馬、14尺。
・浮子/萱製、太パイプトップ(名称無し)。
・道糸/2号。
・鉤素/1.2号、450粍+600粍。
・針 /巨ベラ16号。
・棚 /三本。
・餌 /尺上+マッシュダンゴ+グルバラ+バラケマッハ。
・納竿/15時。

八時四五分。
今回はバラケマッハを混入して餌を作ってみた。
浮子の長い沈黙に備えての措置だ。
鮒属を寄せる為の特効薬として投与したつもりだが、どうにも短絡的というか浅知恵である気がしないでもない。巨べらを釣るのに蛹の混入餌を使っているという話を訊いたことがないからだ。
しかし、やってみないことにはどうにもならない。
このダム湖で竿を出すのは昨季から数えても、まだ四度目だし、今は自分なりにノウハウを蓄積することだ。
そう考えて挑んでみるが、果たして、この積極策が吉と出るか。
吉と出れば万々歳だが、はずれてもタカが魚釣り。世間さまに迷惑を掛けることはあるまい。
餌にひと工夫を加えて、今季十二回目の釣りが始まった。
半信半疑で打ち出した餌だが、どうにもボソっ気が強い。
釣りをしていると、芯残りのする餌、なる言葉をたびたび耳にするが、この餌はそれとは正反対になっている。浮子の沈下が終わり数秒経つと、トップが三目盛りくらいの単位で浮上してくる。
これは餌が溶けているというよりも、割れ落ちているのではないだろうか…。
これではダメだ。使えない。
そこで今度は四種類の粉を混ぜ合わせた後で注入していた水を、芋系と麩系の間で入れてみた。しかも麩系を投入する前に充分、吸水させておいたから、前回とはまったく違った質感の餌ができた。
自分の作った餌を自賛するのも何だが、こんなことでも習得出来つつあることに妙な喜びを感じる。

十時。
三十分ほど前から浮子が動き出した。
動き出したというよりも揺れだしたと表現した方がよいのかもしれない。そんな微弱な動きだが、兎に角、反応が出始めた。
これは積極策の効果であろうか…。
よくはわからないが、そういう事にしておいた方が、今後の励みになる。
しかし、気になる魚の正体がわからない。
揺らすだけ揺らしておいて何の進展もないから、犯人は案外ジャミなのかもしれない。ジャミを集めても仕方のない話だが、こればかりはどうしようもない。そこで浮子下を長くしたり短くしてみたりと、いろいろ試してみたが何の変化もない。どの層に餌を入れても数分経つと揺れが始まる。これは、浮子の下にジャミしか棲息していないからだろう。

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本日の入釣場所の、周辺図。
帰路に片倉橋から撮った。

正午。
埒が明かないから、思い切って竿を替えてみた。
18尺を竿袋から抜き出した。この竿を選択した根拠は希薄だ。とても根拠などと言える代物ではない。お隣の亀山ダムの釣果データがこの竿になっていたからだ。しかし、いくらこの片倉ダムが亀山ダムの上流にあるとはいえ、それだけで関連づけるには無理がある。どう考えても、それはこじつけというものだ。
しかし、このこじつけが膠着していた事態を動かした。
瓢箪から駒が出たのだ。
竿を替えると気分転換が図れる。
朝の情熱が蘇ってくる。
ぼんやりと眺めていた浮子も真剣な眼差しで見れるようになる。そして数分が経った。
見開いた目に飛び込んできたのは、浮子が湖面から力強く消え失せた瞬間であった。
間髪を入れずその動きに竿を合わすと、ズンっ!。
凄まじい手応えがあった。
大きな魚が掛かった!。
応戦を始めたが、何せ、力が強い。
これは持久戦に持ち込まなくては…。
そう考えていると魚は、右前方、七分半の方角に向かって一直線に走り出した。
もしや、彼らの緊急避難所のオダがあるのかもしれない…。
怯えるものがあった。
前回の二の舞になるからだ。
そうはさせじと、竿を持つ手に力を入れたが防戦感は否めない。我が釣行史上、最大の力持ちとの勝負になった。
覚悟は出来た。
一か八かの勝負に出よう。
前回の釣りで構築したシミュレーションの手順で仕留める。
それにはもう少し竿を立てたい。しかし、相手も必死だ。
ここは火事場のクソ力に頼るしかあるまい…。
そう考えて、竿を持つ手に最大限の力を入れた時だった。
スポッ!。
なんと、穂先が抜けた!。
唖然!!呆然!!びっくりした。
昨年は穂先のリリアンを持っていかれたが、今回は穂先そのものを持っていかれた。これは信じられないことだった。
目が点になるとは、この事だった。

暫し、呆然としていると、またも信じられないことが起きた。
予備の浮子を持たない私が帰り支度を始めようとした時だった。
私の浮子が向こうの方から流れてきた。
浮子は湖面から垂直に立っていない。寝たままだ。
まだ魚が付いているのか…。
そうも考えたが、取り敢えず、手繰り寄せよう。
そして浮子が目の前を通過する時、穂先の無くなった竿を浮子の下に入れてみたが、何の手応えも無いまま通り過ぎて行った。
浮子は辺(へち)に辿り着くと、枝や塵のなかに埋没した。
その浮子を見失わないよう、急ぎ舟縄を解いて回収しに行った。辺に辿り着き、塵の中から浮子を拾い上げたが、期待した穂先はついていなかった。
意外なことに回収できたのは浮子だけだった。
何故、そうなったかはわからないが、浮子ゴムの道糸を通す部分が切れていた。それで浮子だけが流れてきたのだった。

十三時。
未だ昂奮さめやらずにいる。
しかし、浮子が戻ってきたので再開することが出来た。
竿は16尺を出したかったが仕掛けがない。残り時間を考えて、やむ無く、元の14尺に戻した。
チョーチンで餌を打ちだしたものの、どこかうわの空でいる。
それほどに、衝撃的なことだった。
あの穂先が抜けた瞬間は、数十分が経った今でも目に焼き付いている。
恐らく、今回の事は後々まで忘れることはないだろう。
気分を切り替えたいところだが、あまりも刺激が強すぎた。
それが、十五分ほど経った頃だ。
浮子がポコンっ!、と鈍く動いた。
大した動きではなかったが合わせてみると、魚が掛かった。
抵抗からして、これも大きな魚かと思ったが、やり取りをしているとそうでもなかった。
魚種は尺の玉網から二寸ばかしはみ出た、ま鮒であった。
ま鮒ではあるが、意外な形でオデコから脱出することが出来た。

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本日の第一号、
尺上の、ま鮒くん。

ま鮒を釣り上げたら、段々と冷静さが取り戻せてきた。
すると脳裏に意外なことが浮かんできた。
あまり考えてたくはないが、先ほどの魚は鮒属だったのであろうか。もしかしたら髭が生えていたのではあるまいか…。
そうだとすると、その魚は特効薬の成分のひとつである蛹を求めてやってきたのではなかろうか。
そう考えると今まで思考してきた事との辻褄があってくる。
特効薬は劇薬だったのかもしれない…。
特効薬の積極的使用に躊躇いが生まれた。
特効薬をはずそう…。

十四時半。
餌を替えて以来、心無しか浮子の動きが素っ気ない。
揺れはするが、沈む事はない。
納竿時間まで残りは三十分。
さあ、どうするか。
特効薬を入れて、もう一度、勝負に出るか。
さもないと、このままでは確実に終わってしまうだろう。
副作用というか副産物を覚悟の上で、最後の勝負に出た。
勝負に出ると、直ぐに浮子が動いた。
ま鮒を釣った時の動きだ。
素早く合わせてみると、一瞬、魚の唇に針が刺さったかのような手応えを感じたが、すぐに針は外れた。
今度は針を突き刺す。
そんな決意で、喰いいくように浮子を見つめるが、何もない。
今度は棚をかえてみる。
間もなく納竿だというのに、三本にして餌を投げ込むと数投目で魚が掛かった。しかし、釣れたのは真っ赤な魚体をしたブルーギルの親玉だった。
こんなことをしていたら、納竿予定時間になってしまった。
これは延長するしかないだろう…。
船宿に正式な帰舟時間を問合せると、十六時半に桟橋、なる応えが返ってきた。

十五時。
延長戦突入。
何としてでも、もう一匹釣りたい。
執念のようなものが生まれた。
今度は二本半にしてみた。
しかし、状況に変化はない。
こうなってくると山勘に頼るしかない。
もう一度、唇に引っ掛けたチョーチンに戻そう…。
最後の攻撃が始まった。
浮子が動くと片っ端から、竿を合わせた。
空振り、空振り、空振り…。どうにも魚が掛からない。
それが二十分くらいが経った頃だろうか…。
へたな鉄砲も数撃っていたら、とうとう命中した。
針に掛かったのは、それなりの重量の魚だった。
へら鮒だと嬉しいが、ま鮒でもよい。しかし、鯉は勘弁して欲しい…。究極の三択だった。
祈るような気持ちで湖面をみつめた。
そして数分の格闘の末、湖面に出てきた魚の貌は、へら鮒であった。
やった!。
祈りが通じて、へら鮒を仕留めた!。
玉網で掬った瞬間、心の中で、歓喜の雄叫びをあげた。
バンザーッイ!、バンザーッイ!、バンザーッイ!。
声なき万歳も三唱してをして、片手を突き上げた。
今回の片倉ダムも強烈だった。
愉快で痛快だった釣りにスリルも加わった。
そして記念写真を撮り終えると、一件落着。
大満足の釣りを終え、桟橋へと凱旋する。

お仕舞い。

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苦心惨憺で釣りあげた、本日の第二号。

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計測結果、壱尺三寸三分三厘三毛。

おまけ。
片倉ダムの釣りから数日が経ち、釣行記を書き始めた時だった。
写真を整理していると、納竿間際に釣った魚の魚体がおかしい。
これは、へら鮒なのか…?。
疑問が生まれ鑑定士にみせたら、半べらと言われた。
半べらだったのか…。
いやはや失礼しました。

○本日の釣況。
・08:45~15:30、
・14尺チョーチン/二枚(ま鮒1枚、半べら1枚)。

○2014年データ。
・釣行回数/十一回
・累計釣果/127枚(ま鮒2匹、半べら1匹を含む)。


2014年09月14日(日)
吉右衛門。



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