吉右衛門へら鮒釣り2015

  ◎第一回釣行
2月20日(金)

戸面原ダム。
上郷、寮下。
戸面原ボートセンター。
晴天、強風。
気温/9度、水温/7度、水色/澄み、水位/満水。 

「初釣り」の巻。

戸面原ダムへ釣りに向かう日の朝だった。
ひたひたと房総半島を南下していると、養老川を渡河したあたりで、霧が出てきた。
この時間に霧が出るのは、そんなにめずらしいことではない。
しかし、霧は濃くなるばかりで、木更津まで来ると完全に視界が塞がれてしまった。
これは危ない…。不安が頭をよぎる。
そこで、館山自動車道から国道127号線へ乗り換えたつもりが、どこでどう間違えたか、道に迷ってしまった。
行けど進めど、見たこともない森や川に行く手を阻まれる。
そして彷徨の挙げ句、辿り着いたのは、見知らぬ湖畔だった。
幻想的な世界に惹き込まれてしまったかのようだ。
ここは何処だろう…。
不安を覚えながらも斥候に出てみると、運よく、沖の立木に舟を結ぼうとしている、老へら師の姿があった。
両手を拡声器のようにして、尋ねてみる。
「ここは何処ですかーっ!」
老人は振り向き様に応えてくれた。
「トヨフサコだよーっ」
えっ?、豊英湖…。
意外だった。
しかし、老人は確かに豊英湖と言った。
豊英湖に、このような湖畔はあったろうか?。
不安を通り越し、狼狽える私…。
呆然と湖畔に佇んでいた処で、目が覚めた。
夢であったか…。
この夢は今年最初にみた、初夢であった。
何故、このような夢をみたのか。
それは多分、私の生活習慣にあるのだと思う。
厳冬期の釣りを禁じられている私はインターネットで、先輩へら師の方々が運営されているホームページやブログ(文末に掲出)を読み床に入る。
おそらくこの夜も、大名人こと山田さんが綴った豊英湖の記事の残像があったのだろう。
以来、釣りの夢をよくみる。
その中に、寒さに凍えながら釣りをしているシーンがあった。
それに触発されてか、夢から覚めると、実際に竿を振ってみたくなった。
厳冬期のダム湖で小舟を借りて竿をだす…。
主治医が知ったら腰を抜かすようなことにもなりかねないが、それはもういいだろう。
私は釣りに行く。

私の釣行年譜によると、今朝は釣りを再開して九年、釣行記を綴りだして八年目の朝。私にとってのシーズン開幕日だ。
プロ野球の選手は開幕日を尾頭付きの膳で祝うというが、私は誰からの見送りも受けることなく自宅を出発。
穴川ICから京葉自動車道(蘇我からの名称は館山自動車道)に突入し過日みた夢の通り、房総半島をひたひたと南下して、戸面原ダムへと向かう。
今回は数年ぶりに長い竿を振る。
その為に押し入れの奥で眠っていた、二五尺を引っ張りだしてきた。先輩方が振っておられるような三十尺とまではいかないが、果たして私に、この竿が振れるかどうか。
過去の釣行記録を調べても、この竿を振ったのは五年前の豊英湖のタツボの検量台にまで遡らなければ成らなかった。
それだけに自信はないが、序でと言っては何だが、この当時使っていた竿掛けと玉網、そして万力も含めて鞄に詰めてきた。
今回は、このオールドファッションで臨むつもりだ。

クルマは夢に出てきた、養老川の辺りまできた。
ここからは年頭に相応しく、今年の釣りを考えようと思う。
釣行には毎月二回程度を予定できればと考えている。
主戦場を戸面原ダムに据えて、三島ダムの農道跡と片倉ダムにもバカ面を出す。ここまではいつもの年と同じだが、夢を語らせてもらえば、今年は富士山にも行ってみたい。
富士山のなかでも竿を出したいのは、西湖だ。
西湖を思いついたのは、おもわぬ朗報が入ってきた事にある。
私が読んだ新聞に拠ると、この春、首都高速道路の中央環状線が全線開通して湾岸線の大井まで延びてくるとあった。
JCT(ジャンクション)の接続がわからないから何ともいえないが、うまくすると都心環状線を通らなくても中央自動車道との乗り入れが可能になるのかもしれない。往路は夜中だからどうでもよいが、帰路の渋滞を考えると気が滅入る。その精神的、肉体的負担が緩和できるかもしれないのだ。
それでも私が住んでいる千葉の市内から西湖までを往復すると、三百キロを優に超える長旅になる。しかし、これからの残された時間を考えると、あまり悠長にもしていられない。
行くとしたら、今年だ。
それ以外には、あまり考えることはない。
今年も釣れたの釣れないだのと、一喜一憂するであろうが、そんなことは大したことではない。
健康と安全。そして世間さまに迷惑を掛けずに遊んでくること。それが出来さえすれば、何もいうことはない。

七時半。
戸面原ダム、戸面原ボートセンター桟橋。
桟橋へ出た。
さほど寒くはない。
凍えるような寒さを予想してきただけに、拍子抜けした感もあるが、折角、この時期にやって来たのだから、酷寒に身を晒してみたかった思いもある。
それに今朝は珍しく定刻に着いた筈だが、このような時間になってしまった。これはボートセンターの管理人である相沢さんと、戸面山の崩落から始まり、かれこれ一時間あまりも世間話をしていたからだ。
いやはや、ご迷惑をお掛けしました。

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崩落した戸面山。
この崩落で大切な生活道路が埋没しました。
住民の方にとって可成りの不便が生じています。
一刻も早い復旧を望みます。

さて、出航。
向かうは上郷橋の向こうに構える竹枠。寮下。
今年の初釣りは、ここで竿を出すことに決めた。
現在、戸面原ダムで釣れているポイントは、杉林と光生園下。
ここに魚が集中しているらしい。
杉林は私の中でも、「初釣りは杉林」としていた時期もある冬場の名所だが、その名所で一昨年、不幸にもオデコを喰らってしまった。それゆえ、験を担ぐわけではないが、ここは避けたい。
次に光生園下だが、私はこの場所で過去に舟を結んだ事はない。それだけに魅力を感じないわけでもないが、ここは終日、お天道さまが顔を見せないそうだから、凍えてしまいそうだ。
酷寒に身をさらしてみたかったと前述したが、いざとなると、
根性無しの私が貌を出す。
そこでお天道さまの恩恵を受けられる寮下を選択したわけだが、果たしてこの選択が、吉と出るか。
小舟を漕いで往くと、石田島の島裏でへら師をみかけた。
こちらの水中には立木が潜んでいたような気がするが、それを知ってか知らずか、はたまた、私の記憶ちがいか。
そして光生園下までくると、本命場所を獲得した上級技術者らしきへら師がいた。しかし奇妙なことに、この方は、澪筋でなく、
岩盤と平行、つまり石田島を背にして上流に向かって竿を出している。
何故、澪筋を向かないのか。
やがてこの疑問の答えを思い知ることになるのだが、この時点では何も気がつくことはなかった。

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本日の入釣場所の、正面図。

 
マークした地点は大まかです。
実際とは違っている可能性もあります。
Yahoo!地図より。

☻本日のデータと予定。
・目標/三枚。
・釣り方/チョーチン、グルテンセット釣り。
・竿 /飛天弓閃光R、二五尺。
・浮子/忠相、パイプムクトップ十七番。
・道糸/1号。
・鉤素/0.4号、200粍+800粍。
・針 /8号+4号。
・餌 /Sピンク+ダンゴの底釣り冬、綿グルテン。

九時。
今朝もいろいろあったが、やっと準備ができた。
そして毎年恒例の儀式。
湖面に向かって、今年一年の釣行の安全と、戸面原ボートセンターの発展を祈年。
殊勝な気持ちで第一投を投げ込んだが、お粗末なことに失敗。
穂先の可成り手前に落ちてしまった。
なんとも冴えない第一投だったが、気を取り直して、第二投。
やっと今年の釣りが始まった。
今朝も忘れ物をしてしまった。
度の入った偏向眼鏡が何処を探しても見当たらなかった。
昨夜の準備段階では見かけたような気がしたのだが…。
それにしてもだ。選りに選ってこんな長い竿を振る日に限って、裸眼で釣りをするハメに成ってしまった。
トップの設定は、浮子を目の前に落として行ったが、こうして所定の位置に納まったトップを眺めていると、とても辛い。
まるで、焦点の合わないピンぼけ写真でも見ているようだ。
昔、厳冬期の釣り堀ではスコープを用いてトップの微細な動きを追っていたへら師を見かけたが、私は今、八mも先にあるトップの動きを、腐りかけた目で追わなけらばならない。
これは消し込みでもない限り、判別がつかないのではないか。
心ならずも、大きなハンディキャップ背負ってしまった。
そして落胆している私に、天は更なる試練を与える。
上郷橋の方向から、強い風が吹いてきたのだ。
この風の影響で、竿掛けが中島岬の方向にまで大きく振られだしした。
竿掛けを支える万力の締め方に問題があるのではないか。
解決すべく、きつく締め直してみたが、改善するに至らない。
これは困った。どうしたものか…。
万力を外し手に取ってみたが、単純な構造にしかみえない。
しかし、いくら螺子を〆ても何故か締まりが悪い。
これはどうやら、あるべきワッシャーが一枚、抜け落ちているのではないか。しかし、原因がわかったところで、代替できるような物は持ち合わせていないから、どうにもならない。
思案に暮れていると、思い出したことがあった。
この万力は壊れていたのだ。
そうだ、そうだった。
数年前の三ツ沢で壊れてしまい、玉網置きに使う万力のパーツを代替して急場を凌いだのだった。
押し入れで眠っていた道具に、日の目をみせてやろうと連れてきたが、それはどうやら、余計なお世話だったようだ。
オールドファッションが仇と成った。

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朝の本湖。
この時間は無風だった。
前島名物の一本木が無くなっている。
写真は出舟後に撮った。

十時。
風がやめば、釣りに成る。
先ほどから、いく分か勢いが弱まってきた感がある。
トップの動きを確認できないことに変わりはないが、大きく動いてくれさえすればなんとかなりそうだ。
充分とは言えないまでも、何とか戦えそうな気がしてきた。
落ち着きを取り戻せれば、やはり釣りは楽しい。
寒さをついてきた甲斐があった。
魚信はなくとも、トップの沈下と餌の溶け上がりを眺めているだけで、釣りをしている実感が湧く。
そうそう、餌のことも書く。
今年から、モデルチェンジを実行した。
餌は単品で済ませることにした。
幾種類の餌の特徴と成分を研究して、その場の状況に応じた餌を作る。これもこの釣りの面白さのひとつであろうが、それをやるには、私の能力は低すぎる。積年の経験がそれを物語っている。
そこで過日、(S、ピンク)なる、わけの分からない名前の餌を買ってきた。この他にも釣具店の陳列棚にはバラケ用とか両団子用とかの姉妹商品も並んでいたから、今年はこの単品餌だけで賄うつもりだ。

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本日の入釣場所の、対岸から見た図。
写真は納竿後に撮った。

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本日の入釣場所の、側面図。
写真の撮影時は同上。

十一時。
またも、風が吹きだしてきた。
しかも、今度の風は強い。竿の操作がままならなくなり、餌の着水位置が前後左右にズレまくる。
こうなると、この場所での継続は難しい。
ここにくる時に見かけた先輩方の舟付け方向の、謎が解けた。
彼らはすでに、今日の風が計算できていたのだ。
おくればせながら、私も風を計算しての移動を考えなければならなくなった。
それを実行するには、上郷橋を背にする必要がある。
そう考えると、この竹枠の先にある曲がり角の向こう側に移り、舟を反時計回りに、九十度、回転する必要がある。
そうすれば、風を背で受けられる。
しかし、水深がわからない。
あちらは底釣りのポイントだから、二五尺では余ってしまうのではないか。今朝はこの竿を振ることしか頭になかったから、補欠竿の持ち合わせがない。それゆえ、移動したはよいが、またも、この場所に戻ってくるハメになる気がしないでもない。
そんなことなら潔く諦めて、今回は撤収すべきではないか。

正午。
右手に竿を持ち、左で竿掛けを押さえる。
なんとも滑稽な格好での釣りとなった。
滑稽なだけならよいが、竿掛けを押さえるのに身を乗り出さねばならぬから、腰が痛くなってきた。
それでも、ここに踏み留まって継続するのは、撤収する勇気がなかったからではない。釣りをしたという充足感が得られてないからだ。
もうすでに、銀色に輝く魚体を拝むことは諦めた。
しかし、一度くらいは浮子が動くのを見てみたい。
小さな願望を胸に十四時まで頑張ってみたが、風は治まるどころか強まるばかりだ。
そして、腰の痛みも限界と成って襲ってきた。
未練がましく、へら鮒釣りの真似事をしてみたが、滑稽劇はここまでとしよう。
こうして息の根が止まり、一件落着と相成る。
今年の釣りは、のっけからオデコに終わった。

お仕舞い。

冒頭で記した、私が拝読させてもらっている、ホームページとブログを順不同で、紹介します。
・戸面原ボートセンター、
http://www.geocities.jp/tozurahara/
・三島湖・豊英湖へら鮒釣り
http://blogs.yahoo.co.jp/yutaka_hera
・保谷のへらじぃさん
http://blogs.yahoo.co.jp/houya_kazu
・新中川ヘラへらおじさん
http://blog.goo.ne.jp/147399
・老へら師の独り言
http://blogs.yahoo.co.jp/herabuna_1
お断り。
こちらのタイトルとアドレスは、運営主様には無断で掲出しております。問題がありましたらご指摘くださいませ。
速やかに消去致します。

☻本日の釣況。
・09:00~14:00、25尺チョーチン/零枚、

☻2015年データ。
・釣行回数/一回
・累計釣果/零枚。

2015年03月08日(日) 。
吉右衛門。



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