吉右衛門へら鮒釣り2015

  ◎第二回釣行
3月16日(月)

戸面原ダム。
前宇藤木。
戸面原ボートセンター。
曇天にち小雨、無風凪。
気温/14度、水温/7度、水色/小濁り、水位/減水5糎。 

「雨雲がもう少し早くきていたらオデコだった」の巻。

私には長く連れ添った女房がいる。
お世辞にも器量よしとは言えないが、気だてがよいのと明るいだけが取り柄の、何処にでもいそうな平凡な女性だ。
その彼女と私は、二十歳を過ぎた頃に所帯をもった。
気がつけば、かれこれ四十年も一緒にいることになる。
互いに赤貧の家庭で育ったせいか、価値観を同じくすることが多い。相性も合う。したがって、のろけるわけではないが、彼女と過ごす時間は初老の域に入った今となっても、とても楽しい。
彼女とは、いろいろな話をする。
必然的に家族の話題が多いが、その他にも時事であったり、私が教えて今では共通の趣味となった野球の話もする。
そんな四方山話に興じるなかで、無縁なのが釣りの話だ。
彼女は亭主の趣味である釣りには、まったくと言ってよいほど興味を示さない。
この釣行記でさえも、読んだことはないとういう。
それゆえ、私が釣りから帰っても、釣果を訊かれたことはない。
それが私のちょっとした、不満の種になっている。
いつも惨憺たる釣果の私が言うのもおかしいが、わたしだって、たまには訊いてもらいたい時もある。
「今日は、たくさん釣れてね…」なんて台詞を言ってみたし、
「ダメだったよ…」と愚痴のひとつもこぼしてみたい。
何故、私のピュアな胸の内を察さっしてくれないのか…。
初釣りから帰宅した夜のこと。
彼女と晩飯を囲んでいるとき、その積年の疑問をぶつけてみた。
「オマエ、オレが釣りから帰った時。なんで釣果を訊いてくれないんだ…?」
何を今更、という顔になって、
「だって、 なにも干さないのだから訊いたら悪いでしょ!」
「……」
思わず箸を止めた、わたし。
いやはや、すべてお見通しであった。

七時半。
戸面原ダム、戸面原ボートセンター桟橋。
桟橋へ出た。
今朝は墨色の曇り日。見上げた空は、泣き出しそうだ。
予報では、昼過ぎから雨になるという。
然すれば、それまでに勝負をつけねばならぬだろう。
今回は前回の雪辱戦というわけではないが、またも、二五尺を振るつもりだ。その場所には、光生園下を選んだ。
もう、お天道さまがどうだとか、泣き言は言わない。
本命ポイントはすでに売り切れたようだが、その先の三本杭は、まだ空き家の状態とみた。
光生園下で二五尺を振り回し、待望の長竿での釣果を得るのだ。

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曇り日の本湖。
泣き出しそうな空。

今回は期するものがあるから、いつもの私とはちがう。
小舟に乗り込むなり、脱兎のごとく目的地へ向かう。
石田島を過ぎると、目的地である光生園下がみえてきた。
桟橋から眺めた通り、本命ポイントの立木は売り切れていたが、私が選んだ三本杭は無傷で残っている。
初心の通り、あそこに入ろう…。
そう決めて、先釣者に向かい、
「向こうの三本杭にはいりまーっす!」
まさに大声で断りを入れようと思った時だった。
予想だにしなかった事態に直面し、この言葉を飲み込んだ。
対岸の方向。つまり上流に向かって右手の方向に、もうひとり、竿を出しておられる方が居たのだ。
上級者なのだろう…。
舟を斜めに着けて、辺(へち)を狙っているようだ。
これは想像もしていなかった。
三本杭に入って竿を出す分には、何の迷惑も掛けまいが、私は写真を撮ることも、釣行の楽しみとしている。
三本杭から写真機を構えると、どうしてもこの方が写り込んでしまう。他人からみればどうでもよい事と思われようが、私にとっては、とてもやるせないのだ。
遠くから撮るだけに、肖像権の心配はない。
それにエチケットとして撮る前に丁重な断りも入れるから、おそらく応諾してもらえるだろう。
しかし、そういうものではない。
静かに釣りを興じている方に、こちらの都合を押し付けるのが嫌なのだ。
となると何処かに転進しなければならないが、こればかりは譲れないことだから仕方がない。
勇んでやってきた光生園下であったが、あえなく踵を返すことになった。

前宇藤木に辿り着いた。
出航時には考えもしなかった場所だ。
宇藤木橋から川を遡るつもりでやってきたが、舟を漕いでいるうち面倒になってこうなった。
前宇藤木には、小さな湾処がある。
私にとって未踏の地であり、魅惑の場所でもある。
オデコ覚悟で、こちらに入ろうかと思った。
光生園下に入れなかったことで、捨て鉢になったわけではない。以前から一度は入ってみたいと思っていたのだ。
しかし、先ほどまで、湾処のなかで着舟の方法を悩んでみたが、どうにもよい知恵が浮かばなかった。早い話が、着け方がわからなかったのだ。
そこで湾処から出てきて、この場所に落ち着くことにした。
この場所とは、湾処を左後方に見据えた宇藤木橋寄りの立木だ。
本来は南郷岬寄りにある四本立木の方がベストであろうが、あちらでは、二日前に一束の釣果があがったそうだ。一束釣果の場所に入って釣果が十匹では、あまりにカッコ悪い。
そこで腰が引けて、こちらに舟を結んだ次第だ。

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本日の入釣場所を、対岸から見た図。
写真は納竿後に撮った。

 
マークした地点は大まかです。
実際とは違っている可能性もあります。
Yahoo!地図より。

☻本日のデータと予定。
・目標/十枚。
・釣り方/チョーチン、グルテンセット釣り。
・竿 /朱門峰神威、二一尺。
・浮子/忠相、パイプムクトップ十五番。
・道糸/1号。
・鉤素/0.4号、200粍+800粍。
・針 /8号+4号。
・餌 /Sピンク、綿グルテン。
・納竿/雨が降るまで。

今回使用する竿は、二一尺。
この竿も、久々に振る竿だ。
恥ずかしながら、私はこの竿の存在を忘れていた。忘却の彼方だった。それを思いだしたのは、二五尺を押し入れの奥から引っ張りだした時だった。
この竿はなんだろう…。
始めてた見たような気になった。
そこでパソコンから、この竿のプロフィールを調べるに及んでやっと思いだすことが出来た。
購入したのは、平成二一年の夏。
デビュー戦は同年の秋。台風一過の三島ダム三ツ沢。
その後に使用した痕跡を辿っても、デビュー翌年の春と竿納めの暮れにしかない。そしてそこから深い眠りに入ったようだから、今回振るのが購入六年目にして、僅か四戦目となる。
驚くような乏しい戦績だが、振ってみると、これがなかなか良い感じ。今回はこの竿の世話になる。

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本日の入釣場所の、正面図。
久々に登場の、朱門峰神威二一尺。

九時半。
最初の餌から浮子が動いた。
湖面から浮子が沈下していく様を眺めていたら、微弱に揺れながら沈んでいく。
早くも今日の前途に明かりが灯った。
思いも寄らぬ展開に力が入るが、そこからの展開は期待とは裏腹に進展しない。相も変わらず、半節ばかりが揺れているだけだ。
もう少し魚が集って、強く鋭い魚信が出てくれば…。
意にそぐわない展開に悩まされながらも、先ほどから気になっていることがある。
実は、またも失態を犯したのだ。
不覚にも玉網の柄と竿掛けを間違えて持ってきた。したがって、今朝は竿掛けが二本あって、玉網の柄がない。
釣れもしないうちから取り込みを心配するのも何だが、魚が針に掛かった時はどうするか。とりあえず、手元に引き寄せ、柄のない網で掬うしか手がない。しかし、竿を直角以上に掲げると天井に聳える樹木の怒りを買いそうだ。彼らとは上手く折合いをつけないと、竿と仕掛けを取り上げられることにもなり兼ねない。
そんなことブツクサ呟きながら餌を打っていると、浮子の動きは少なくなり、やがて消滅してしまった。
時計をみると、十時。
打ち始めたのが九時半だったから、私は三十分もの間、竿を一度も合わせることなく浮子を眺めていただけになる。
今にしてみれば、もっと積極的に手を替え品を替え挑むべきだった気がしないでもないが、そう悲観することもあるまい。
また、いつか寄ってくるだろう。

正午。
本日ただ今の釣果、零。
忘れてきた玉網の柄は、二五尺の一本を代替して待ち構えるも、
あれ以来、浮子は動いていない。
魚が回遊してくることを期待したが甘かった。
こうなると朝、目標に掲げた十枚はおろか、連続オデコの可能性すら出てきた。さらに、追い打ちをかけるように新たな危惧が生まれた。
雨雲が襲来してきたのだ。
雲の色が朝よりずっと黒ずんでいるから、降りだすのも時間の問題だろう。
私は野釣りのへら師でありながら、雨具を持っていない。
それゆえ、滴が落ちてきたら一巻の終わりとなる。
しかし、このまま釣れなければ、開幕早々、連続オデコという、とても可哀想な記録が待っている。湾処のなかでのオデコは納得できるが、この場所でのオデコには抵抗がある。
なんとかならないものか…。
祈るように浮子を眺めていると、沈下中に、ちょこんと動いた。二時間の沈黙を破る動きだった。
天は我を見捨てていなかった。
今度は積極果敢に攻める!。
浮子が動いたら片っ端から合わせてやる。
そう心に決めて挑んだが、結果は空振りの山。
それでもめげずに合わせていたら、とうとう銀色に輝く魚体を拝むことが出来た。
魚は八寸程度の放流べらであった。
そして、さらに二枚目が釣れた所で、それを待ってくれていたかのように雨が降ってきた。
やれやれ。どうやら写真判定で、雨に先着できたようだ。
雨雲がもう少し早くきていたらオデコだっただけに、危機一髪であった。
おのれの幸運に感謝して、一件落着。
今日の釣りを終える。

お仕舞い。

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銀色に輝く魚体。
本日の第一号は、今季最初に釣上げた魚でもあった。

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雨が降ってきた。

☻本日の釣況。
・09:30~13:00、21尺チョーチン/二枚、グルテン。

☻2015年データ。
・釣行回数/二回
・累計釣果/二枚。

2015年03月29日(日) 。
吉右衛門。



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