戸面原ダム。
桟橋。
戸面原ボートセンター。
快晴、猛暑日、弱風。
気温/36度、水色/小濁り、水位/満水。
「戸面原ダムの桟橋で初めて竿を出した」の巻。
戸面原ダムの桟橋で初めて竿を出すことになった。
その経緯は前回の向田湾処(むかえだわんど)の帰りにある。
あの日の帰り。わたしは以前から竿を出してみたかった桟橋釣りの可否を、池主の相沢さん尋ねてみた。
すると、「いいですよ」。
内心ではダメが出るかと思っていたが、いとも簡単に応諾してもらえた。それはいつも貧果のわたしへの特別な計らいかと思ったがそうでもないらしい。過去にも解放したことがあって、あまり釣りには精通していない、ご老人が七枚釣ったという。
これには夢と希望がわいてきた。
シロウトのご老人が七枚ということは、いくら、わたしでも、二十枚は釣れるのではないか…。
そんな甘美な夢をみて、初めての桟橋に挑んでみようと思う。
八時。
戸面原ダム、ボートセンター桟橋。
桟橋へ出た。
梅雨が明け、夏空真っ盛りの朝だ。
今朝は舟には乗らない。
桟橋の左隅、戸面山の麓で竿を出す。
そして、釣り場に到着。
先ず最初に思ったのが、準備不足。
釣り台(mini銀閣5)が小さかった。この製品に附属してある横木では竿掛けしか装着できない。それと足下の板敷きには二十粍以上もの隙間が空いているから、うっかりするとそこに小物を落としそうだ。次回もここで竿を出すなら、大きな釣り台と落下防止の為のブルーシートを持参してくる必要がある。
景色は見慣れた光景だけに特別な感慨はない。
そんな桟橋で準備をしていると舟陰や立入禁止のブイの辺りで、もじりが散見される。あまり多くはないが、釣趣を掻き立たせるには充分の数だ。
竿は十四尺。
この竿を選択した理由は、釣果表に載っていた竿の長さにある。十五尺前後の竿が並んでいたから、それに従ってみたまでだ。
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マークした地点は大まかです。
正確性は欠如しております。
Yahoo!地図より。
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☻釣況。
・目標 /二十枚。
・釣り方/チョーチン、両団子。
・竿 /普天元独歩、十四尺。
・浮子 /忠相、ムクトップ十一番。
・道糸 /1号。
・鉤素 /0.4号、450粍+600粍。
・針 /アスカ7号+アスカ6号。
・持参餌/凄麩、天々、バラケマッハ、PBH。
※PBH、パンダーベイトへら。
・納竿 /十五時。
八時半。
さて準備ができた。
桟橋とはいえ、初めて竿を出す場所。何が起きるか楽しみだ。
戸面山から鳴り響くニイニイゼミの大合唱のなか、最初の餌を投げ入れた。
わたしは以前から、ここで竿を出せることを切望していた。
それが釣果も見込めるとあって期待は大きい。
その釣果だが、少なく見積もって、ご老人が釣上げた数の三倍、二十枚は釣りたい。以前は二十枚など普通に釣れていたが、昨今はわたしの偏狭な嗜好も相まって、滅多に叩ける数字ではない。
今年は特にきびしい。
過去十度の合計釣果が、五二枚。平均すると五枚でしかない。
これはある意味驚異的な数字だ。上級技術者からは、どのようにすればそうなるのかと疑われそうだ。そのような惨状だけに、これに奮起して、少しでも上積みができればと思う。
そんな皮算用をはじいていると、早くも一枚目が釣れた。
サイズは目測推定、壱尺壱寸。まずまずの大きさだ。
そして、ここから一気に量産といきたいところだが、そう上手くはいかない。浮子の動きに精彩がなくなってきた。
どうも思惑とは違うようだ。
いつものように悶え苦しみだすと、遊びにきてくれていた相沢さんと入れ替わり相沢さんの奥さんがやってきた。ご近所の方と紹介された穏やかそうな男性と小学校四年生前後と思われる浮き輪をもったお嬢ちゃんを連れてだ。
三人ものギャラリーに囲まれることになった。すると予期せぬこに、何故か体が強ばり、えも言われぬ緊張に包まれてきた。
そして、恐れていた方向に事が進みだす。
「何が釣れるのですか?」
「たくさん釣れましたか?」
「魚は大きいですか?」
矢継ぎ早に、あどけない質問が飛んできた。
それに、適当な作り笑顔で答える、わたし。
しかし、釣れないことに痺れを切らしたのか、
「なかなか、釣れないね…」
お嬢ちゃんから、鋭い言葉が発せられた。
困った…。
これは何としても期待に応えねばならない…。
ズシリっ!とした、強迫観念に襲われた。
そして、さらなる不幸も襲ってきた。
餌を切った針が、上層を泳いでいた魚に刺さってしまったのだ。
まずい…。と思った瞬間、
「あっ!釣れたっ!」、と喜ぶお嬢ちゃん。
グイっグイっ、と沖に逃げ惑う魚との格闘が始まった。
これは尾鰭に相違ない…。
「大きい!、大きい!」
興奮気味のお嬢ちゃんをよそに、釣り上げた時の気恥ずかしさを思うと、ひたすらに、バレてくれることを切望する、わたし。
そして道糸が最大限に伸びきったところで、プッツーン。
よかった…。
ギャラリーには気づかれぬよう小声で呟いた、わたしだった。
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本日の第一号。
目測推定、壱尺壱寸。
背景は戸面山。 |
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十三時。
本日ただ今の釣果、一枚。
とんでもないことになっている。
こんな筈ではなかった。
開始早々に釣った魚が、最初で最後の魚だった。
楽勝ムードはとっくの昔に吹き飛んだ。
ギャラリーが立ち去ったあと、竿を替えて頑張った。
十一尺で一時間、十五尺で二時間。都合三時間。浮子はピクリっとも動かなかった。可愛い竿を二本も討ち死にさせてしまった。
もはや打つ手はない。
ギブアップすべく餌を廃棄用のビニール袋に入れた時、女房から連絡があった。娘と孫娘を連れて船橋にムーミンとやらの寸劇を見にきてるという。ということは帰宅しても、誰もいないことになる。
さてどうするか…。
このまま無人の家に帰って、一人寂しく膝を抱えて家族の帰りを待つか。
ここに踏みとどまって、絶望的な釣りを続けるか、だ。
ひま人が真夏の炎天下でそんなことに悩んでいると、富津市の宣伝カーが、猛暑日だから出歩くなだの、運動を控えろだのと言っているのが聴こえてきた。
十四時。
踏みとどまって、釣りを続けることにした。
この日唯一の魚が釣れたのが、九時前。ということは、あれから五時間も、浮子が眠り続けていることになる。
上層の魚に針が刺さったことから、居場所を上と判断して十一尺を出したが、何もない。そこで今度は十五尺に替え三時間も粘ったが、こちらも無反応。ならば、これより長い竿を出したいが、持ち合わせがない。十七尺には出番がないと決めつけてきたことを悔やんだ。
長い竿がないとなると、逆も真なり。
もう一度最短竿の、十一尺に戻すしかない。しかも、どうせ戻すなら、一本半でやろう。
矢吹ジョーではないが、やけっぱちの天使になって、それをやったのが、吉とでた。
三投目で突然、浮子が目覚めたのだ。
遂に魚を見つけた。居場所が分かった。
そしてバタっバタっと、三枚釣り上げ、溜飲を下げる。
いやはや、炎天下で粘った甲斐があった。
目標の二十枚には遠く及ばないが、ご老人の七枚には少しでも迫りたい。
そう思っていると、ひと仕事終えた相沢さんが激励にやってきてくれた。その相沢さんの前であがりべらを釣上げ、一件落着。
ご老人の記録には及ばなかったが、それは次回ということで。
お仕舞い。
☻本日の釣況。
・07:30~09:50、14尺 チョーチン/1枚、
・10:00~10:50、11尺 チョーチン/0枚、
・11:00~13:50、15尺 チョーチン/0枚、
・14:00~15:00、11尺 一本半/4枚、
☻2015年データ。
・釣行回数/11回
・累計釣果/57枚。
2015年07月27日(月) 。
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