吉右衛門へら鮒釣り2015

  ◎第十七回釣行
2016年7月04日(月)。

西湖。
沖ブナイ。
西湖レストハウス。
天候/晴天、弱風。
水色/澄み、水位/不明。 

「釣行年表にゴチック文字で記したくなる一日だった」の巻。

西湖へやってきた。
この浜に立つのは四月以来のこと。
あの日の釣りは面白かった。泊りがけで来た甲斐があった。
初日のユースホステル下はもとより、二日目の精進湖も八王子の名人のお陰で楽しく過ごすことができた。そんなこともあって、毎月ここにくる筈であったが、豈図らんや、二ヶ月も空いてしまった。
なんやかやと野暮用があっただけではない。あの日の釣行で泊まりを覚えたこともある。昨年の釣行はすべて日帰りであったが、泊まってみるとすこぶる楽チンなことがわかった。
以来、禁断の果実でも齧ったかのようにカラダが泊まりを望むようになった。
となると、日程の調整が難しくなる。いくら私が暇人でも、まだ多少は世間さまが必要としてくれているから、平日に二日続けて休むのは難しい。そんな中、なんとかやり繰りをして抜け出してきた。
そこで今朝は沖ブナイ。明日は長駆喉っ首を越えて、初の溶岩地帯で竿を出せればと思う。

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本日の入釣場所の、正面図。
先鋒、十八尺。


 
マークした地点は大まかです。
正確性は欠如しております。
(Yahoo!地図より)。

☻始まりのデータ。
・目 標/定めず。
・釣り方/チョーチン(両団子)。
・釣り竿/普天元独歩、十八尺。
・浮 子/亀二郎、四番。
・釣り糸/1号。
・鉤 素/0.6号、500粍+650粍。
・釣り鈎/バラサ針 9号+9号。
・納 竿/十五時。

五時十五分。
無事に沖ブナイを確保できた。
そこで舟を結んだのは、四番ブイ。
レストハウスの女将さんからは、「出舟するのは九名」と聞いていが浜に集結したのは五名。
で、その連中がユースホステル下に三名、エゴに一名と散らばってゆき、ここ沖ブナイには私しかいない。
どうも計算が合わないと思っていたら、浜の方から賑やかなる声がして一団がこちらへと向かってくる。その数をかぞえてみると四名。これで計算が合った。
が、四名となると私が陣取るブイは四番だからブイが足りない。
それならばと気を利かせて五番ブイに移ることも一瞬考えたが、
たった今、竿掛けを万力に取り付けたばかり。
三つのブイの間に四名が入るのは狭くて気の毒だが、そこのところは先住者の特権のようなもの。申し訳ない気がしないでもないが、ここは鹿十しておこう。

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てっぺんに雲を被った富士山。
その下辺りが、沖ブナイ。
出舟前に撮った。

静寂だった沖ブナイが、俄かに活気づいた。
仲良きことは美しき哉。で、この方たちは泊まりできていて昨日は溶岩地帯で竿を出していたらしい。後学のためにそちらの情報も収集していると準備ができた。
さて、釣りを始める。
もじりが少なく、どうかなとも思ったが、そんな危惧は必要なかった。浮子の下にはたくさんのへら鮒が棲息していて、釣り糸を落とすと、すんなりと二枚が喰いついてきた。
よかった…。
前回の釣りがあまりに悲惨で、今回もそうなれば、釣行意欲が完全に砕け散るところだっただけに、事なきを得た感じ。
しかも両の鈎に付けているのが団子餌ということが、なおのこと嬉しい。
これが続けばよいのだが…。
そんな夢想に耽っていたら満艦飾りとはいかないが、ぽつり、ぽつりと釣れ続け十枚目を釣り上げたのが、九時二十分。
釣りを始めたのが六時頃だったから、ちょうど二百分で十枚を釣り上げた勘定となる。
二十分で一枚のペース。
この適度な釣れ具合に喜んでいたら、お隣たちが早くも道具を仕舞い始めた。
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本日の次鋒、十六尺。

☻次鋒のデータ。
・釣り方/チョーチン(両団子)。
・釣り竿/特作伊吹、十六尺。
・以 下/変更なし。

十時。
またも独りぼっちとなった。
こうなると否が応でも、ここいら一帯の魚を私ひとりが相手にしなくてはならない。これだけでも大変なことなのに、おのれの作る餌のでき映えをも考慮すると毎度ながらの、大混乱に陥ることは必至。
それだけはご勘弁を、と、釣り竿の短縮を試みた。
この程度の対策しか思いつかない私だが珍しく、この対策が吉と出た。
それに西湖のへら鮒は優しい。
ロクに寝もせず、遠路はるばるやって来た私を邪険に扱わない。
私のような下級者にも分け隔てることなく接してくれる。
そんな魚たちにも助けられ、女将さんが弁当の出前に来てくれた十一時の時点で、十五枚。そして正午には二十枚となって、確実にペースがあがった。

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本日は晴天成り。
朝陽のコントラストを浴びた本日の、第一号。
背景は、根場の浜。

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同、第二十号。
気に入った写真が撮れたので、ここに載せた。
背景は、喉ッ首。

正午半。
本日ただ今の釣果、二二枚。
釣れている。
しかも両の鈎が団子餌ならば、獲物も地魚だ。それに釣れてくる魚の大きさたるや、すべて壱尺の玉網からハミ出ている。
このような機会は滅多にない。
それだけに春に届かなかった、三十枚を超えてみたくなった。
そんなことを思いながら日傘を据え付けていたら、横浜の名人が電話をくださった。何でもレストハウスさんに備え付けてあるライブカメラを見ておられたそうで、開口一番
「沖ブナイには一人しかいない」とおっしゃる。
「それが私です。これから三十枚を目指します」
そう答えると、ずいぶんと激励してくださった。
名人はその名に相応わしく大した方で戸面原ボートセンターの釣果表も賑わすが、こちらの方が主戦場らしく女将さん曰く、
「エゴとユースホステル下にポイントを持っていて、いつもたくさん釣ってくる」そうだ。
そんな名人に気にかけて頂き、恐縮でございます。

納竿時間は漠然と十五時に設定しているが、今晩世話になる宿はお隣の河口湖に在って庄内や藤岡でも利用したことのある施設。こちらは木賃宿だけに食事の用意があるでなし、何時に着こうと構わない。それだけに気を遣わねばならぬのはレストハウスさんだけとなる。が、こちらにしても女将さんの面倒にならない時間に戻ればよいから、十六時頃までなら延長するもことが可能だ。
これなら今日の魚の機嫌も考えて、余程のことがない限り達成できるだろう。
さて、再開。
可なり間が空いてしまったが、相も変わらず、よく釣れる。さらに時間が経つごとに益々、その好調さが増してきた。
浮子が立つ。
そしてゆっくりと沈下が始まる。
餌落ち目盛の辺りでフワフワと停滞してから、ずんッと水面から搔き消える。誰にでもわかる明確な魚信だ。
こういうのを、地合いとでもいうのだろうか。
それでは、何が因でこうなっているのか。
餌か、仕掛けか。
いやいや、そんなことはあるまい。
餌はこの私がこき混ぜたものだし、仕掛けだっていつものワンパターン。現場に合わせたものでなく自分に合わせた、いい加減なものだ。それでも釣れているのは単に、
「よい日に来て、運がよかった」ということか。
とにかく、盆と正月が一緒にきたような最高の気分となった。

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曲がりに曲がった、十六尺。

十五時。
釣りも釣ったり、五十枚。
午後の二時間半で三十枚近くが釣れた。
こんな豊漁はいつ以来のことか。
頰を抓りながら水面を眺めていると、あちらこちらで浜へ引き揚げる舟が見える。エゴに入った釣り人はとっくに帰ったし、ユースホステル組もロープを解き始めた。こうなると十六時までやろうとしていた私も撤収しないわけにはいかない。そう決めて釣り竿を拭いていると、一通のメールが舞い込んだ。そしてこのメールの処理に手間取ったことが思わぬ、恐怖をよんだ。
それはメールの処理が終わると同時だった。
それを待っていたかのように、青く晴れ渡った空が雲に覆われ、夏の太陽が姿を消す。
あたり一面が、薄気味悪い墨色に染まった。
と、思った瞬間、凄まじい突風が吹きだし、愛用している紺色の帽子がフっ飛ばされた。見れば五番ブイの奥の溶岩の際を彷徨っている。急ぎロープを解き救出に向かおうとするも、この風だ。容易く艪を操ることができない。
これは天変地異にでも出会したのではないか。
もう帽子どころではない。
一刻も早く浜へ戻らねばならない。
なのに帽子を救い出そうとする私。結局帽子は救い出したが、強風が高波をよび、どうにもならなくなってきた。
これは、どうすればよいのだ。
思いがけない、窮地に陥った。
とりあえず、辺地に沿って迂回して戻ろう。
そう思ったが、それは浅知恵だった。
辺地は高波に洗われ、飛沫さえもが上がっている。そこに舟を入れれば、あっけなく転覆しかねない。
盆と正月気分はとっくに消え去り、呆然とする私。
冷静になって考える。
ここに留まって、天気の回復を待つか。
いやいや、待つと云っても回復する保証などどこにもない。それに、ヘタをすると高波に浚われそうだ。
さらに、この異様な空模様。
いつ豪雨に晒されたって不思議でないし、雷だって落ちてきかねない。
何年か前に戸面原の前島で大風を経験したこともあるが、あの時とは池の器が違う分だけ、スケールが違う。
迂回策も待機策もダメとなれば、残された手は、沖へ突っ込むしかない。
この荒波に突っ込むのか…。
想像しただけで眩暈がしそうだ。が、家族のこと。会社のこと。自分の置かれた環境を考えると、奮い立つしかない。
それでも頼みの綱が救命胴衣だけというのは、あまりに心細い。
なにかよい手はないか。
そうだッ!。
舟が波と並行にならないように、舳先を風上に向ければよいのではないか。
が、しかし、問題は私の腕力が、この強風を、この高波を、凌駕できるかだ。
長考一番、決めた。
八方が塞がった以上、もやは、火事場のくそ力に頼るしかない。
ずいぶん枯れたとはいえ、私も男。勝負に出よう。
いったれ!。
逆風に突っ込んだ!。
猛烈に舟を漕いだ。人生で一番力を入れて漕いだ。
死に物狂いとはこういうことかもしれない。
三歩進んで二歩押し戻されるような状況だが、二進も三進も行かないわけではない。
とにかく頑張ることだ。
怯む心を叱咤しながら懸命に艪を動かすと、なんとか途半ばまでこれた。
するとどうだ。漕げば漕ぐほどに、風が弱まってきた。
危機一髪。どうにか脱出できたようだ。
浜が近づくた時の喜びというか、安堵感といったらなかった。
本日は豊漁の喜びと、山の気象の変化の恐怖。
この両方を味わえて、一件落着。
釣行年表に赤のゴチック文字で記したくなるような一日だった。

お仕舞い。
☻本日の釣果。
・へら鮒/50枚、

☻2016年データ。
・釣行回数/17回
・累計釣果/267枚。

※お断り。
この釣行記はiPad等の端末に合わせて編集しています。
下に記した日付は下書きを終えた日です。

2016年07月17日(日) 。  

吉右衛門。



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