吉右衛門へら鮒釣り2015

  ◎第十九回釣行
11月06日(金)。

戸面原ダム。
桟橋。
戸面原ボートセンター。
天候/快晴、小春日和、無風。
気温/21度、水温/不明、水色/小濁り、水位/満水。 

「性懲りもなく桟橋で竿を出したら、 またもオデコだった」の巻。

決して厭戦気分になったわけではない。
俄に腰が重たくなってしまったのだ。
前回釣りに行ったのが、九月の半ば。
西湖の供養塔での釣りから帰ると入院が待っていた。
施術そのものはそう大してものではなかったが、退院後に数日間の安静があり、九月一杯を棒に振ってしまった。そして十月に入り、四度目の西湖を計画するも、いざ、その日が近くなると、やれ気温が下がっただの、風が強そうだとの理由を故実けて、おのれの立てた計画を悉く頓挫させた。
そう、わたしの飽きっぽい性格が露呈してきたのだ。
そんな日々を過ごしていた先月の終わりの頃だった。戸面原ダムの池主である相沢さんから、珍しく職場に電話が入った。
夏の釣りで秋の入院を告げてあったことへの、お心遣いだった。
相沢さんの声を訊くと眠りかけていた虫が蠢いた。やる気満々というわけには到らないが、納竿の釣りだけでも行く気になった。

六時十五分。
戸面原ボートセンター。
愛車を駐車場に滑り込ませたのは、桟橋が解放された直後。
桟橋から聞こえてくる喧噪からして、結構な賑わいだ。
駐車場にしても事務所の前は売り切れ。桟橋側の隅っこに空きスペースを見つけて、百日ぶりにボートセンターへ入店した。
それにしても、今日は平日。
この活況は、なんだ。何があったというのか。
訊けば数日前に新べらの放流が行われたという。
それなら、わたしも慌てて桟橋へ向かわなくてはならないが、そんな必要はない。
今回、わたしが竿を出す処は、桟橋。
あそこに入ろうとする物好きはいないから、無競争で入れる。
それゆえ、奥さんに入れてもらったお茶を頂きながら、ゆっくりしていると、(光生園下)を薦められた。
なるほど、今年も光生園下の季節がやってきたか…。
しかし、お薦めの通り、光生園下の方が釣果に恵まれそうだが、今日に限っては、おいそれと舟に乗れない事情がある。
実はわたし。
昨夜、浅草で焼き肉を食べてきたのだ。
さらに下戸でありながら焼酎を三本も空けてきた。
滅多に口にしないアルコールを体内に入れたことで、すっかり酔いが回ってしまった。しかも上機嫌な連れを相手に延々と付き合ったものだから、終わらせることができない。
明日が釣りなので…。このひと言がどうしても云えない。
そんなことで果てしなく続くと思われた焼き肉だったが、突然、やってきた若い店員さんに、お客さんの時間は終了です…。と言われて、チョン。
この天の声に救われて、やっと解放された。
しかし、それも束の間。すっかり酩酊した連れが、もう一件行きたいと云いだした。こんなに喜んでもらえるなら、あすの釣りは諦めようかとも、一瞬思ったが、そこは相沢さんとの約束を優先させて、一件落着。浅草の駅前からタクシーを飛ばして、ほうぼうの体での帰宅と相成った。
そんなことで、わたしの胃のなかは、いまだもって昨夜のカルビやタン塩、それに焼酎が蠢いている。さらに帰宅するなり女房に指摘された、あの強烈きわまりないニンニクの悪臭も残っているはずだ。
こんな状態で小舟を浮かべれば、周囲の皆さまに、ご迷惑をかけるのは必定。それに退廃的な姿勢も相俟って舟に乗るのはやめたわけだが、折角、薦めてくれた奥さんには、釣れなければ舟に乗ります、とだけ伝えて店をでた。

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本日の入釣場所の、正面図。
先鋒、十九尺。

 
マークした地点は大まかです。
正確性は欠如しております。
Yahoo!地図より。

☻本日の予定。
・目 標/二枚。
・釣り方/チョーチン。
・釣り竿/朱門峰凌、十九尺。
・浮 子/忠相、ムクトップ十四号。
・釣り糸/1号。
・鉤 素/0.6号、600粍+750粍。
・釣り針/サソリ 7号。
・持参餌/天々、ガッテン、グルバラ、バラケマッハ。
・納 竿/十五時。

八時。
桟橋。
今年最後の釣りを始める。
目標を二枚としたのは、春先の桟橋で七枚の釣果を上げたシロウトのご老人に、追いつき追い越すためだ。
わたしの桟橋での実績は初回が五枚で、二回目が一枚。
この異様とも思える数字からして、奥さんが光生園下を薦めてくれたもわかろうかというもの。さらに推測すると、奥さんは光生園下というより、桟橋はやめておけ、と言いたかったではなかろうか。しかも、放流後で豊漁が期待できるとあっては尚更だ。
さて、釣り。
そんな悪条件でも、案外、あっさりと釣れるのではないかとの淡い期待もあったが、甘かった。そんな思いは僅か三十分で吹き飛んだ。浮子は動かないし、なにより致命的なのは、魚っけない。
水のなかに潜ってきたわけではないから、なんとも言えないが、早くもギブアップのようそうを呈してきた。

九時。
畜生!。魚なんか、いやしない。
矢張り、出発点をまちがっていた。
姿勢が退廃的だったこと。
焼き肉の後遺症が残っていたこと。
納竿さえできればと軽く考えていたこと。
そこで安易に桟橋で格好をつけようとしたのが、まずかった。
開始して一時間。一縷の望みを抱いて餌を打つも、どうなるものではない。
このままここにいては、あまりに前途がない。
銀色に輝く魚体を拝みたいのであれば、移動を考えるべきだが、果たしてどうするか。幸いなことに、危惧していた胃の方は、すっかりと安定の兆しをみせ始めている。
舟に乗るか…。
本日の桟橋帰船時間は、十五時半。
いまから舟に乗っても、五時間半は竿を振れる。
そうするべきではないか。
しかし、今日の小春日和を思うと、これも天命。
これはこれかもしれない。
さらに思い起こせば、今年の釣りはオデコで始まった。
オデコで始まり、オデコで終わる。
これも一興。オレらしくてよいではないか。
いつものように思い悩んでいると、相沢さんが背後きてに腰をおろしてくれた。
釣りをそっちのけて話に興じていると、いろいろな話をしてくれた。相沢さんが平成二十年に池主になられてから、早くも、七年半の歳月が流れたそうだ。その間のご苦労話に耳を傾けたが、なによりも感心したのはこの状況下に於いて、今年も放流をされるとのことだ。何回に別けるかは決まっていないが、すでに魚の確保は終わっているらしい。
こちらは自主放流だから大変なコストだろうに…。
そんな疑問をぶつけても、お釣りさんに喜んでもらうため、を強調されていた。最近のへら鮒業界は釣り場の閉鎖や営業縮小といった暗い話題が多い。そんななかでのひた向きな姿勢には感服せざるをえない。残念なことに、わたしは独立愚連隊。仲間を引き連れてくることはできないが、わたしにでも、お役に立てることがあれば協力させてもらいたいと思った。

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本日の入釣場所の、斜め前方からの図。
このカットは納竿後に撮ったものです。

十一時。
浮子が揺れている。
餌落ち目盛りの辺りで、カチカチと餌が啄まれている。
これは、新べらに相違いない。
やっとわたしにも季節外れの春が訪れた。
これが釣れれば十枚程度も夢ではない。
桟橋を離れなくてよかった…。
そう思って頬を緩ませるが、新べらとて、へら鮒属。
そうは簡単に釣れてくれない。いつものように、空振りの山を築いていると、餌箱の片隅にグルテンがあったのを思い出した。
しかし、このグルテン。使うには二つの不安がある。
先ずは春に買った商品だから消費期限が怪しい。しかし、この秋デビューしたばかりの一年坊主には、消費期限などわかるまい。
それはよしとしても、問題は作る時にある。
グルテンの粉を服に付着させようものなら、エラい目にあう。
以前、グルテンの付着したジャージを洗濯機に放り込んだら、女房にこっぴどく叱られた。わたしは遠い昔の子どもの頃、遊んでいて肥溜めへ落ちたことがある。その時だって母親はこうも叱らなかった。
わたしの女房は温厚だ。怒ることは年に一度あるかないかだ。
その彼女をこうも怒らせるものが、グルテンにあるのだと思う。
それだけに、できることなら使いたくはないが、ここは勝負所。使わずにはいられない。
怒られることを覚悟して袋に手が伸びた。その時だった。
幸か不幸か、グルテンを使わずに済んだ。
魚が釣れたのだ。
が、釣れたのは、ブルーギル。
うなだれる、わたし。
新べら十匹の夢は、果敢なくも散った。

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本日の次峰、二一尺。

十四時。
本日のただ今の釣果、零。
一時間ほど前に竿を替えた。
このところ矢鱈と出番の多い、二一尺を出した。
しかし、竿を替えた処で事態が好転する筈もなく、無情にも時は過ぎてゆく。
竿を仕舞うまでの時間は、六十分。
誠に残念ではあるが、本日のオデコが確定したようだ。
ため息がでた。
最初からオデコ覚悟の釣りであったが、いざ、オデコが目の前に迫ってくるとガッカリ感は否めない。しかし、ここで最後の悪あがきとでも云うのか、落胆しながら浮子を眺めていると、「なじんでは戻す」単調な動きに変化が現れた。
またも浮子が、餌落ち目盛りの手前でカチカチと揺れだした。
しかし、この動きに魅力はない。
先ほどブルーギルを釣上げた前科があるだけに、期待度は低い。そんな思いで眺めていた時だった。
突然、浮子がググッと水中に没した。
おっと!。この動きは!。
最後の最後にして、見せ場がやってきた。
そんな期待を抱かせるに、充分な動きだった。
いまの力強い動きからして、今度こそ、思いを遂げられそうだ。
土壇場で俄然盛り上がるわたし。
餌を小さく丁寧に丸めて、放り込む。
竿を持つ手に力が入る。すると思惑通り。
餌落ち前で停滞していた浮子が、一気に消し込んだ。
しめたッ!、とばかりに竿を合わすも、プルっプルっプルっ。
またも、釣り針に掛かったのは、ブルーギル。
悄然たり!、
ふたたび、うなだれる、わたし。
今年最後の釣りが終わった。

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本日の入釣場所の、後方からの図。
このカットは右側の葉っぱに焦点があった、ピンボケ写真です。

十五時。
桟橋の片隅で道具を仕舞っていると、久方ぶりに羽田の名人が立ち寄ってくれた。お会いするのは、数年前の春以来のこと。
名人は宇藤木橋の上流で一束以上も釣上げてきたらしい。
わたしの釣果も訊かれたので、オデコだったことを告白すると、
「やめてよ」、「今度は並ぼうよ」とも言ってくれた。
ありがとうございます。嬉しいです。
名人と別れ、本日の釣り座を撮るべく徘徊していると桟橋や駐車場のあちらこちらで、釣果自慢をしている釣り客に出会した。
樽いっぱいに魚を入れてきた、お爺ちゃん。
大きな魚を相沢さんに検寸してもらってご満悦の、ご老体。
あんな顔、こんな顔。どの顔も楽しそうだ。
仲良きことは美しき哉。
そんな姿を見るにつけ、例会もいいものだと思った。
また、こんなに釣り客が喜べるのも、相沢さんの放流事業の賜物だと思った。
それに引き換え、わたしの体たらくぶりときたら…。
情けないぞ!。
そう思うと、今一度の来訪を決めて、一件落着。
戸面原ダムを後にする。

お仕舞い。

☻本日の釣況。
・08:00~12:00、19尺 チョーチン/○枚、
・12:30~15:00、21尺 チョーチン/○枚、

☻2015年データ。
・釣行回数/19回
・累計釣果/124枚。

2015年11月30日(月) 。
吉右衛門。



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