吉右衛門へら鮒釣り2015

  ◎第二十回釣行
11月16日(月)。

場所、戸面原ダム。
ポイント、杉林。
釣り舟屋、戸面原ボートセンター。
天候/晴れのち曇り、無風。
気温/21度、水温/不明、水色/小濁り、水位/満水。 

「納竿。来年から鎖国をやめて開国するぞ!」の巻。

今年の釣りも最終回を迎えた。
当初は前回で終えるつもりであったが、あまりにつまらぬ釣りをした為、出直すことになった。納竿のやり直しなど、ついぞ訊いたことはないが、あんな体たらくな釣りで一年を締めくくるわけにはいかない。
そこで今回の釣りとなったわけだが、この一年を振り返ってみると、今年も随分と面白可笑しく遊ぶことができたように思う。
そんな気持ちにさせてくれたのが三度におよぶ西湖の遠征と、亀山湖で大べらを釣上げたことだ。この未知なる釣り場のできごとが久々の、釣行回数、二十となって現れた。
釣行回数が二十回を超えたのは、いつ以来のことだったか。
原稿を書きながら、ひも解いてみると、それは2009年以来のことであった。
あの頃は釣りを再開して三年目。釣行記を書きだして二年目で、今とはかなり違った価値観で過ごしていたような気がする。
ひと口で言い表すと躍動していたとまでは云わないが、気持ちに張りがあった。それに比べて最近の尻窄み感ときたら、情けないこと、このうえない。
しかし、その情けない自分を支えてくれているのが、魚釣りだ。
気落ちしたとき、土俵際に追い込まれたとき、わたしは必ずと云ってよい程魚釣りへ逃げ込む。そして気持ちを立て直してから、いつもの生活圏へと戻る。
人生のやり残しと老後を考えて再開した魚釣りであったが、あの時の決断が、吉とでた。
今日の釣りをよい形で締めくくり、来年も楽しく魚釣りができればと思う。

六時十分。
戸面原ボートセンター。
桟橋。
到着するや否や、わたしも開門前にできている行列に並んだ。
そこに並ぶ人の数は、ちょっとしたパチンコ屋の新装開店並み。
なんでこうなのか…。
そのわけは前回もそうだったが、新べらの放流にある。
三日前の金曜日。数千匹に及ぶニューフェイスがこのダム湖にお目見えしたそうだ。
今日のわたしは、オデコ明け。
そして今日こそが今年最後の釣りだから、なんとしてでも魚のいる場所へ行くつもりだ。
そんな決意で並んだものの、如何せん道具が多い。これらを運ぶとなると二度の往復が必要だ。こうなるのも写真機にある。これがあるからどうしても荷物がひとつ多くなるのだ。
列が崩れて入場が始まった。
そして、一旦、道具を小舟に置いてから写真機を取りに行く途中に出舟が始まった。気になる宇藤木方面には結構な人数が繰りだしている。そしてよく見るとその一号艇を操舵しているのが、羽田の名人であった。名人は前回も宇藤木橋の向こうで一束釣上げたそうだから、今朝もそちらに向かわれるのかもしれない。
さて、わたし。
小舟に戻るなり写真機を積み込み出航。
先頭とは、すでに十分以上の差がついている。
それでも前宇藤木の周辺で竿を出すべく櫓を漕いでいると、平行して進む方から声を掛けられた。そして幾つか会話を交わして気づいたのだが、この方はなぜか、わたしの正体を知っていた。
何故ゆえ、ご存知なのか…。
それは、この釣行記をお読み頂いているからに相違ない。
これは困った。
釣行記は足掛け八年も書いているから、このようなことは幾度も経験している。しかし本人はおのれの馬鹿さ加減を晒しているようで、これが恥ずかしくて仕方がない。今回も顔から火が出そうになった。
そんなことで恐縮しながら進んでいると、杉林がぽっかりと空いているのに気がついた。
杉林が空いている…。
残り物に福というか、この幸運を逃す手はない。
それに前宇藤木にそれほど執着があるわけではないから、お隣の方への挨拶もそこそこに、面舵を切った。
(桟橋から鎌の鼻辺りまで並走してくださった方へ)
あの日は、どこの何方かも訊かずに、大変失礼しました。
そんなわけで、恥ずかしくて恥ずかしくて、赤面の至りだったのです。今度お会いした折りには、しっかりと対応させていただきます。これに懲りず、わたしの馬鹿面をみかけましたら、お声がけくださいませ。お待ちしております。吉右衛門。

クリックで
拡大写真

本日の入釣場所の、正面図。
先鋒、十九尺。



 
マークした地点は大まかです。
正確性は欠如しております。
Yahoo!地図より。

☻本日の予定。
・目 標/十枚。
・釣り方/チョーチン両団子。
・釣り竿/朱門峰凌、十九尺。
・浮 子/亀二郎、四号。
・釣り糸/1号。
・鉤 素/0.4号、400粍+500粍。
・釣り針/団子針6号+サソリ5号。
・持参餌/天々、ガッテン、グルバラ、バラケマッハ。
・納 竿/十四時半。

七時半。
戸面原ダム。
杉林。
杉林が、もぬけの殻だった。
このことからして、釣り人の多くは宇藤木橋を挟んで前宇藤木から大曲にかけて散開しているに相違ない。
この杉林。
入口附近が好ポイントと訊いてはいるが、そこはドジでマヌケなわたしのこと。天井が怖くてそこには着けられない。そこで中央より入口附近の、天井が大きく拓けている場所に舟を結んだ。
さて、今年最後の釣りを始める。
十九尺の赤い竿を片手に正面に輝く、お天道さまへ向かって、第一投。
杉林を確保したからには、オデコはないだろう…。
大した根拠があるわけではないが、そんな安堵感を抱いていると浮子が、ピクっ!と動いて魚が釣れた。
釣れたのは、放流べら。
この世に生を受けて初めて釣られたわけだから、釣られることに慣れていない。針が掛かった瞬間の驚きようと云ったらない。
動転して右に左に精一杯の抵抗をするが、悲しきかな、自由を奪われた小さな魚体は、抵抗がやむと同時に、わたしに引っ張り込れ、恐怖のどん底に突き落とされる。
記念写真を撮りそっと水に戻してやると、恐怖から解放されたのか一目散に逃げ去って行く。
こんな姿を見るにつけ、罪の意識に苛まれるのは、わたしだけであろうか…。

クリックで
拡大写真
本日の第一号は、放流べら。

十時。
南郷岬に小舟が一艘、漂着しているのが見える。
誰か身体の具合でも悪くなったのか。はたまた、桟橋に係留している舟のロープが外れでもしたのか。ぼんやりとそんな光景を眺めていると、ひとりの釣り人がやってきた。
そして、わたしの左前方に舟を泊めるや、こちらを眺めている。わたしは目を合わせぬよう、何事もないかのように振る舞う。
それはわたしの厳つい顔が相手を威嚇するのを避けることにほかならない。そして何が始まるのか密かに窺っていると、隣への入釣を申し出てくれ、舟を結びだす。わたしはどーぞと云ったきり無言を貫いていたが、あまりに恐縮されている姿を見るにつけ、ついぞ声を掛けたくなった。
「俺を気にしないでくださいよ。バシャバシャやってもいいですから…」。
こう云ったわたしに、振り向いた顔は若くて、なんともいい男。
あすのへら鮒業界を担いそうなカッコいい方。
そしてこの方は、あの羽田の名人の知り合いでもあった。
そして南郷岬に漂着している舟が名人で、これからこちらにやってくるという。さらに訊けば、この方は今春に店仕舞された釣具カトウの常連さんでもあった。(今後の表記は、行徳の名人)
こうして話していると、先ほどは邪険にしなくてよかったと安堵する、わたしだった。

クリックで
拡大写真
次峰は、二一尺。

十二時半。
本日のただ今の釣果、十六枚。
内訳は、新べらが四枚と地べらが十二枚。
わたしにしては、ずいぶんと釣れたものだが、釣果よりもよかったのは羽田と行徳の名人に関われたことだ。
名人たちは今しがた引き揚げてしまわれたが、行徳の名人に至っては、きちんと自己紹介までしてくださった。
わたしは釣り場で孤独を好む。いつもひとりだ。
しかし、西湖での出会いも含め、見知らぬ釣り人と触れ合うのも改めて、よいものだと思った。
こんなことなら、いつまでも鎖国ばかりをしていないで、来年からは開国しようとも思い始めた。

クリックで
拡大写真
こんな魚も釣れた。
とてもよい形だったので写真機に納めたが、写真にしてみるとそうでもない。

十四時。
今度は明日の試釣と称する方がやってきた。
おみかけした姿は、この道何十年というような、渋めのへら師。
舟を結び終えるなり釣果を訊かれたので、
「新べらが四枚で、地魚が二十枚」と応えると、
「ジベをそんなに釣って、いい釣りをしてますね」。
こんな言葉を返してもらった。
わたしは、「いい釣り」なる言葉とは縁がないだけに、このひと言は、とても嬉しかった。
そんな時間を過ごしていると浮子が、モソっ動いて、今年最後の魚が釣れた。
これで釣果は、二五枚。今年一番の釣果と相成った。
終わりよければ全てよしではないが、納竿の出直しが上手くいったことが確認できて、一件落着。
楽しかった、今年の釣りを終える。

お仕舞い。

☻本日の釣況。
・07:30~12:00、19尺 チョーチン/16枚、
・12:30~14:30、21尺 チョーチン/9枚、

☻2015年データ。
・釣行回数/20回
・累計釣果/149枚。

2015年11月23日(月) 。
吉右衛門。



前の釣行記へ a 次の釣行記へ


掲示板
皆さま、お気軽にお書き込みください。




釣行記2014
過去の釣行記
 
三島湖写真集
〔最終更新日2008年6月30日〕
へら鮒釣りに関する話題と情報を交換する掲示板「へら鮒釣りの広場」を新設!

 
三島湖周辺地図
 
戸面原ダム地図
   
   


▲このページの先頭へ
トップページ


a
a
博物館、美術館の企画展グラフィック、展示会パネル・サインのデザイン・制作なら
株式会社ラピス・ラズリ 〔東京都千代田区〕

Copyright(c)2008 Lapis Lazuli Co., Ltd. All rights reserved.

a
釣行記2010 釣行記2009 釣行記2008 釣行記2012