吉右衛門へら鮒釣り2015

  ◎第五回釣行
3月15日(火)。

三名湖。
大手張桟橋。
光月。
天候/晴天、強風。
水色/澄み、水位/満水。 

「へら鮒釣りを続けるか、社会科見学に行くか」の巻。

上州沼田へやってきた。
今年の沼田といえば、あのこと。
そう、わかる人にはわかるだろうが、うちの事務所があの仕事に関われたことにある。そして大詰めを迎えた今日。顧客への挨拶と納めたグラフィックの記録写真を撮りにきた。
今回の仕事ではずいぶんとスタッフが頑張ってくれた。
ちょっとハラハラした時期もあったが、ここまで来ると晴れやかな気分になってくる。釣行記に記すことではないが、無事に納めてくれたスタッフには感謝したい。謝謝。
今回の出張は愛車を駆って関越自動車道を登ってきた。
上越新幹線を使えばわけはないが、それを敢えて車できた。
それは仕事後に、ある秘め事を企んでいることにある。
沼田から国定忠治の赤城山を下ると関東平野が広がる。そこにはわたしのような房州人の垂涎とも云える釣り場が点在する。
三名湖、鮎川湖、丹生湖、大塩湖…。
あすはこの何処かで竿を出すつもりだ。

藤岡市内のビジネスホテルに宿をとった。
顧客への気疲れと長時間の運転ですぐに眠りにつけたが、窓を叩く風の音で目を覚ました。すると後がいけない。昼間の仕事の興奮も相まって眠れなくなった。
開業十五年でここまできた喜び。
スタッフがこの物件を納めるにあたって、それこそ昼夜を分たず仕事に傾注してくれたこと。その彼女をずぶのシロウトで迎え入れた時からの軌跡を辿ったりしていると、いよいよ寝付けなくなった。
時計に目をやると、五時を指そうとしている。
営業時間の六時半を考えると、にくいほどに中途半端な時間だ。
しかし、二度寝して寝過ごす愚を考えると、これからすぐに出掛けるべきだろう。
昨夜は数時間しか寝ていない。それに帰路の170kmにも及ぶ運転も考えると気が滅入るが、それは致し方ない。
これから七年ぶりの、三名湖へ向かう。

夜が明ける前の三名湖に着いた。
釣り舟屋の光月さんは(以下の表記、店)未だ開いていない。
しばし車内で待機していると、結構な人数が集ってきた。
みな、お揃いの帽子を被っていることから、どうやら月例会が予定されているらしい。
それに久方ぶりの三名湖。
浮き浮きした気分になって、大土手桟橋附近を散歩して戻ってくると店が開いていた。そして店はすでに先ほどの方たちで賑わっている。
それに混じって料金を支払った時のことだ。
名前を訊かれ、それに答えると、
「つつじ野べら会の方ですね。千葉からきてくれたそうで、聴いています…」
お若い奥さんに、そう云ってもらえた。
つつじ野べら会とは、昔、わたしが所属していた釣り会で埼玉県の狭山市に今も在る。余談であるが、わたしは千葉に流れてくる前、この地域を転々としていた。狭山市、入間市、そして所沢市に都合、九年半の間住んでいた。
そのつつじ野べら会が、何故、ここに登場してきたのか。
それは、過日、この会に所属されていた先輩と数十年ぶりに再会できたことにある。とても嬉しい再会であった。
そして、わたしの三名湖行きを知った先輩が光月さんに口添えしてくれたことが、先ほどの若奥さんのセリフに繋がったのかと思う。
先輩のご配慮が、とても嬉しかった。
つつじ野べら会。
わたしはあの会の隅っこの存在でしかなかったが、この会にはとてもお世話になっていた。
あれから、おおよそ三五年。
こうして懐かしい名前を訊くと、つつじ野べら会が、わたしにとっての何たるかを思わずにはいられない。

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本日の入釣場所の、正面図。
先鋒、十四尺。


 
マークした地点は大まかです。
正確性は欠如しております。
Yahoo!地図より。

☻本日の予定。
・目 標/五枚。
・釣り方/チョーチン(バラケ+力玉)。
・釣り竿/普天元独歩、十四尺。
・浮 子/忠相パイプムクトップ、十三号。
・釣り糸/1号。
・鉤 素/0.4号、300粍+600粍。
・釣り針/アスカ針 7号+5号。
・持参餌/段差バラケ、バラケマッハ、天々、力玉。
・納 竿/十四時半。

七時十五分。
三名湖。
大手張桟橋。
折角の三名湖だというのに、状況は悪い。
天気予報によると、これから強風が吹き荒れる。
上州の空っ風とでもいうのか、赤城おろしだ。
前日にみてきた予報の風速は、10m以上。
これは滅多に見られない数字だ。その避風対策として比較的風に強い大手張桟橋に陣を構えたが、運が悪かった。前述の例会参加者がわたしと同じ思惑で舟を諦め桟橋に集ってきた。
朝、店で料金を支払った折り、ポイントは中央より少し奥側と聴いてきた。が、のろまなわたしは、そこに陣を構えることができなかった。車を移動している間に桟橋の入口に釣り人がずらっと並んでしまい、中央より手前側に陣を張らざるを得なかった。
一等地の確保は叶わなかった。
それではこの場所がどうかというと、とても住めば都とはいかないようだ。地元の釣り人からは、こう云われた。
「今日は奥の方から強い風が吹くよ。その風があそこの岬をかすめてくるから、ここはまともに当るのよ。混雑はしているが、今のうち、奥の方に移動した方がいいよ」
貴重な話をもらったが、あまり簡単にいくものでもない。
そう考えると、これは天命と諦めざるを得ない。
竿は十四尺を選んだ。
根拠は事務所で、十台の半ば、と云われたことにある。
しかし、それに納得しているかといえば、あまりしていない。
それはわたしの主戦場である房総のダム湖が今だもって二四尺以上を主流にしているからだ。魚の棲息層がそこだと云ってしまえばそれまでだが、気候のうえで房州より寒冷な上州が、十尺以上も短い理由がわからない。だからと云ってそれを拒まないのが、わたしのよいところ。
釣りに関してだけは妙に素直なわたしなのだ。
次に餌だが、(力玉)なるものを用意した。
こちらもホームページの釣果表に並んでいたものを、物は試しと買ってきた。が、使い方がわからないから、サンスイ川釣り館が開くのを待って、武重店長に訊いてみる必要がある。
いつも人任せなわたしだが、とにもかくにも、釣りを始めた。
予想通り厳しいものがある。
十分、二十分、三十分と経っても、寒さに震えるばかりで浮子の挙動に変化はない。周囲からも歓喜の声は上がってこないし、悲痛な声ばかりが聴こえてくる。
昨日までの好釣果を思うと、悪い日に当たってしまった。
しかし、折角の三名湖。一枚くらいは釣りたい。
そう思っていると、突然、浮子が動いた。
しかもトップが二節が入る、奇麗な魚信。
突然すぎて、反応できずにいたが、厳しい局面から脱出できた。
そして次の一投。
使い方のわからない力玉を付けてみると、トップの挙動がおかしい。ふらふらと鈍いながらもたくさん沈みだした。半信半疑で反応してみると、やった!。
へら鮒が釣れた。
時計を見ると、八時十五分。
餌を打ち出して、ちょうど一時間のできごとだった。

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本日の第一号。
背景は水神ロープだと思うが自信はない。

十時半。
本日の釣果、四枚。
この数字が多いか少ないか。
周囲に比すると明らかに少ないが、本人的には満足している。
目標数字の五枚もこの状況からして、可成り気張った数字であったが、達成の可能性も見えてきた。
しかし、状況は悪化の一途。
予報の風が、ビュンビュンと容赦なく吹いてくる。
この状態を地元の人は、兎が跳ねる、と云うそうだ。
言い得て妙だが、その兎が時々、跳ねるのを休むことがある。
その時が好機で、魚信がはっきりと認識できる。追釣した三枚はいずれもその時に仕留めたものだ。ということは風がなければ、もっと釣れていることになるが、自然が相手のへら鮒釣り。文句を言っても仕方がない。
さて、どうするか。
現在、桟橋に賑わう釣り人の数は、おおよそ四十人。
月例会の参加者と地元の釣り人が大半を占めている。
そこへ、はいッ!ごめんなさいよッ!。と云って分け入るのは難しいことだし、相手が競釣会の参加者ともなれば、尚更だ。
それならば回れ右をして竿を背後の岸側に向けるしかないが、こちらでは地元の釣り人が竿を出している。この人は可成りの人望者とみえて代わる代わるに人が集ってくる。オジさんたちの井戸端会議で笑いが絶えない。
この八方塞がりの状況に悩んでいると、沖に船外機を着けて走る小舟が見えてきた。どうやら弁当の出前が始まったらしい。あの辺りに散開している釣り舟に配ってから、この桟橋にやって来るのだろう。
それを眺めていたら、或ることを思い出した。
隣の市には一昨年、世界文化遺産に登録された富岡製糸場があることをだ。
富岡製糸場は、ここから近いのか?
この突然の思いつきを背後の釣り人に訊いてみると、弁当を食べ終わってからでも充分間に合うらしい。それにさすが釣り人。
訊いてもいない丹生湖が近いことまでも、グリコのオマケのように教えてくれた。
こうも風が強いと釣りにはならない。
昨日の出張の余韻も残っているし、折角の機会だ、富岡製糸場も見学したくなった。
それに、へら鮒釣りばかりが人生ではないだろう。
弁当を喰ったら、見学に行ってみよう。

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大手張桟橋。
入釣前に撮った。

十一時。
弁当がきた。
とても美味しい三名湖名物の、鶏弁当だ。
それを頬張りながら、ほったらかしの浮子を眺めていると、突然浮子が消し込んで、五枚目が釣れた。
しかし、この予期せぬ事が迷いを生じさせた。
一度は撤収を考えたへら鮒釣りに、未練が生まれた。
やはり、へら鮒釣りが好きなのだろう。
続けたくなった。
風に邪魔されようとも、ここで、竿を振り続けたくなった。
へら鮒釣りの続行か、社会科見学か。心が揺れた。
いつものようにうじうじと悩んでいると、決断を促すようなことが起きた。
突風が桟橋を吹き抜けて、計量カップと餌袋が吹っ飛ばされた。
唖然とする、わたし。
これは、もう無理だろう。
突風が心の迷いも吹っ飛ばした。
湖面に浮かぶ計量カップと餌袋を玉で掬って、一件落着。
心置き無く、富岡製糸場へ向かう。

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お世話になった、光月さん。

戦いすんで日が昏れて。
今回の上州行きは、とても楽しい旅だった。
沼田の出張も、三名湖の釣りも、富岡製糸場の見学も、どれもこれもが思い出として残りそうだ。
久々の三名湖は中途半端に終わったが、そのお陰で富岡製糸場にも行くことができた。それに数ヶ月後に信州の出張も計画しているから、この続きはその時にすればよい。
それにしても三名湖は、魚影が濃くて、魚が大きくて、お店の方も親切で、とても素晴らしい釣り場だった。地元の方々が自慢していたのがわかる。
今年は次回も含めて二度で終わりそうだが、来年には東京外環自動車道が市川市の高谷まで延びてくる。そうなると上州が近くなって、もっと通うこともできそうだ。
明日が不透明な人生になってしまったが、来年も再来年も、そしていつもでも、へら鮒釣りが続けられればと切に思う。

お仕舞い。

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富岡製糸場。

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同上。

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同上。

☻本日の釣況。
・07:15~11:10、14尺 チョーチン/5枚、

☻2016年データ。
・釣行回数/5回
・累計釣果/25枚。

※お断り。
この釣行記はiPad等の端末に合わせて編集しています。


2016年03月21日(月)。
吉右衛門。



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