吉右衛門へら鮒釣り2015

  ◎第十回釣行
4月26日(火)。

戸面原ダム。
西川淵。
戸面原ボートセンター。
天候/晴天、無風。
水色/澄み、水位/減水0.6m。 

「新宿の名人のお蔭で春の釣りを楽しめた」の巻。

今季の釣行が早くも十回を数えるに至った。
このまま進んでいくと晩夏から初秋にかけて二十回となり、年の瀬には二五回位になって、今季を終えることになりそうだ。
今の勢いでいけば、さらに回数を重ねることにもなりそうだが、そこはいい加減なわたしのこと。いつ何時、鬱が襲ってくるかわからないし、何か起これば、平気で竿を投げ出しかねない。
しかし、本日ただ今の状況は、極めて意気軒昂。
前回の旅釣りが気分転換となって、主戦場の戸面原ダムへと戻ってきた。
今年のテーマは、「へら鮒釣りの四季を楽しむこと」。
それに沿ってゆくと今回は宇藤木川を遡上して、春の釣りを楽しもうと思う。

五時十五分。
戸面原ダム、
戸面原ボートーセンター事務所。
いつも遅刻をしてくる怠惰なわたしが、このような時間にやってきたのにはわけがある。先週の末あたりから上流域でハタキが始まっているようなのだ。そしてさらにもうひとつ。
わたしは戸面原ダムが主戦場などとのたまわっているが、宇藤木橋を越えたことはあまりない。大曲(正式名称、第一カーブ)の辺りまでなら何度かあるが、さらに上流の西川淵となると、数年前の炎天下に一度行ったきりで、とんと縁が無い。そんな不案内なこともあって早くきたのだ。
出舟時間が残り数分に迫り、それを待っている時だった。
いつもこちらの釣果表を賑わせている、新宿の名人がやってこられた。挨拶もそこそこに行き先を尋ねられ、西川淵へ行きます、と応えると、それなら案内をしてくださるとおっしゃる。
今回の名人は、さらに上流までゆかれるそうだ。それだけに競争相手がいるわけではなく、先に行って場所を確保しておく、とまでいってくれている。
これは願ったり叶ったりの話であるが、如何せん、相手が大御所ともいえる方だけに気後れしてしまう。しかし、折角のご厚意。
厚かましくも、ありがたく受けさせて頂くことにした。

五時五十分。
戸面原ボートセンター桟橋。
名人が場所取りをしてくださるとのことだったが、そんな失礼なことはできるわけがない。そう思い並走をしようと思ったが、ここから名人の凄さを思い知る事になる。
実はわたし。
若い頃はボート漕ぎには自信があった。腕っ節が強かったこともあり、円良田湖の競争では負けた事などはなかった。
それだけに老いたとはいえ、多少の自信はあった。名人はあのように云っておられたが本気で漕げば、鎌の鼻あたりで楽に追いつけると思った。
それがだ。
鎌の鼻のカーブを折れた頃には追いつくどころか、みるみると差が広がり、現地に到着した頃には陸上競技でいうところの周回遅れ。競馬ではタイムオーバーにもなりかねない態たらくぶり。
いやはや、参りました。
しかし、驚くことは尚も続く。
舟を留めてみてくださいっ!。
そう云われて立木に舳先を結ぶと、結び方が違います、とおっしゃる。そして右のロープは名人が結んでくれたのだが、名人はロープをクラッチの辺りにまで伸ばして結んだ。で、その結び方たるや、まるで手品でも見ているかのよう。瞬く間に結んでしまわれた。こうして結んでおくと撤収の際、立木までロープを解きに行かずともすむという。
なるほど…。
ひとしきり感心していると、左のロープはわたしがやるように云われた。
えっ!?、わたしが…。
このような神技みたいなことは、わたしには出来るわけがない。
わたしの不器用さときたら筋金入りだし、先ほどの技も鏡面の形で見ていたから、尚更のことわからない。
それをやんわり云うと、こちらも名人がやってくださった。
この結び方は、徳利結び、というそうだ。
わたしはただただ感心して、呆然とするばかり。
そして、この一連の動作を見ていて思った。
名人の動作のひとつひとつが理にかなっている。
そして技を飛び越え、芸の域に入っているのではなかろうか。
そしてわたしが今までやってきたことの、すべてが我流であり、シロウトの真似事にすぎなかったことを思い知らされた。

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本日の入釣場所の、正面図。
先鋒、十一尺。


 
マークした地点は大まかです。
正確性は欠如しております。
Yahoo!地図より。

☻本日の予定。
・目 標/二十枚。
・釣り方/底釣り(散け餌+食わせ餌)。
・釣り竿/朱門峰凌、十一尺。
・浮 子/忠相パイプムクトップ、十一号。
・釣り糸/1号。
・鉤 素/0.4号、350粍+420粍。
・釣り針/サソリ針 7号+4号。
・納 竿/十五時。

七時十五分。
西川淵。
準備をしている最中にお隣さんの竿が曲がった。
そのお隣とは距離にして数メートルくらいしか離れていない。
こちらの方は月例会の参加者で、とても温厚そうな方。時おり、
下流に陣取るお仲間と楽しげな会話を交わされている。仲良きことは美しき哉。
準備も終わりに近づいた。
名人が去り際に、言い残されたこと。
竿の長さは、十一尺。
穂先の照準は、岩盤の樹木の垂れ下がっている枝。
それを微に入り細に入り、説明してくださった。
そして愛嬌のある笑顔で、頑張ってくださいっ!。
そう言い残して、上流へと向かわれた。
名人の後ろ姿に、謝謝です、ぺこりを頭をさげたわたし。
ここまでお世話になったからには、頑張らなくてはならない…。
ちょっとした責務のようなものが湧いてきた。

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本日の入釣場所を、対岸から見た図。

竿の長さと穂先の照準は忠実に守れそうだ。
が、例によって底の計測に不安が残る。それゆえ、今日も一日、浮子下に悩むことになりそうだ。しかし、これは性分というか慢性的な病気のようなものだから仕方がない。
したがって棚は例によって、底釣り擬としておく。
餌は周囲の状況から上針には魚粉系の散けを付け、下針には最初からグルテンを付けてみた。
さて、釣りを始める。
大きく深呼吸をしてから湖面に、上と下に黒と白のコントラストのついた餌をいれてみた。
一投目、二投目、三投目…、七投目で浮子が動いた。
浮子の動きは鋭くひと節、沈んだ。
この誰にでもわかる魚信に竿を同調させると、へら鮒が釣れた。
釣れたのは放流べら。
最初の魚信で釣れることなど、滅多にないことだ。

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本日の第一号。

十一時。
本日ただ今の釣果、三八枚。
信じられないほどに、たくさん釣れている。
わたしは過去の底釣りでこんなにも釣れたことがない。それだけに頬をつねってみたくもなる。もしかすると先ほど擬と表した棚は適棚になっているのかもしれない。だとすると、明日に向かっての光明が見えてくるのだが、今日の相手が放流べらということを考えると、そこのところは割り引いて考えねばならない。
それに、あまり浮かれてばかりもいられない。
一時間当り十枚のペースが減速してきて、さっぱりと釣れなくなってきた。
天気は晴朗、波は凪。
写真業界で云うところの、ピーカンだ。
果たしたこの浅瀬のピーカンで状況は好転するのであろうか。
それにあまりの出来過ぎた釣況だけに、そろそろツケを払わされるのでないか。そんなつまらぬことを考えていると、その通りの展開に陥った。

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宇藤木川。
西川淵はこの奥。

十三時半。
あれから釣れていない。
二時間前に本日の釣果を記したが、その数字に上積みはない。
とはいえ、その間にしたことといえば何もない。けっして手を拱いていたわけでないが、どうしてよいのかがわからないのだ。
それに周囲も釣れていない状況に甘えたこともある。釣技に劣等感を持つわたしは、周囲が釣れていないのに自分に釣れるわけはない、と、つい思い込んでしまう。
しかし、だからといって、いつもでも手を拱いているわけにもいかない。ここは一番、積極果敢に打って出ようと思った。
そう前回の精進湖の後半で施行したことの再現であった。
そして浮子を替え餌にひと工夫を凝らし、再開。
とにもかくにも、積極的にいくこと。
これをおのれに言い聞かせて、奮い立たせる。
すると数分をおいて、朝の状況が戻り釣れだした。
しかも、どんどんと釣れだして、その勢いたるや前回の精進湖の釣果(56)をも上まりそうな展開となってきた。
やったろうじゃねえかっ!。
そう意気込んでみたが、嗚呼無情!。
残念でした。時間切れ。
カウンターの数字は、(55)。
あと二枚釣りたいが、そこはのろまなわたしのこと。もたもたしていると帰船時間に戻れない。
ここは次回に期待して、ヤメにしよう。
それにしても二回続けての、大漁謡節。
本日のご指導くださった新宿に名人に謝意を表して、一件落着。
桟橋へ戻る。

お仕舞い。

戦いすんで日が昏れて。
わたしが初めて新宿の名人の存在を知ったの数年前の石田島の立木の釣りであった。こちらに初の入釣を試みようとしていた時に道案内をしてくださった。その次は二年前の春先。わたしが道跡の附近を彷徨いていた時、杉林にいた名人は大きな声で助言をくれた。そして今回。上流域から戻ってきた名人は、わたしが釣れているのを見てとても喜んでくださった。
このようにずいぶんと親切にして頂いていることには、感謝と恐縮しかない。
わたしが初めて就職をした町工場は中企業であったが、転職後は零細企業の渡り鳥となった。二十台の半ばで管理職となったわたしは、仕えた上司の数より受け持った部下の数の方が圧倒的に多い。わたしはその部下たちにこのように親身になって接したことはあっただろうか。趣味と仕事の差こそあれ、昼の前後の釣れなかった時には、そんなことをずっと考えていた。
わたしも還暦をすぎた。
いまさらであるが、多少は自分を犠牲にしても、もっと周囲に優しく気を遣えるように精進できたらと思う。そんな事を教えられた一日だった。
ありがとうございました。

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新宿の名人です。
この写真は二年前の夏。馬ノ背で撮りました。
とてもダンディに撮れたと自負しております。
※この写真の掲出にはご本人からの許諾を得ております。

☻本日の釣果。
・へら鮒、55枚、

☻2016年データ。
・釣行回数/10回
・累計釣果/186枚。

※お断り。
この釣行記はiPad等の端末に合わせて編集しています。


2016年05月01日(日) 。
吉右衛門。



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