吉右衛門へら鮒釣り2015

  ◎第十一回釣行
5月02日(月)。

戸面原ダム。
前宇藤木。
戸面原ボートセンター。
天候/晴天時々曇り。
水色/澄み、水位/0.72m。 

「優柔不断。四捨五入するとオデコのような釣りだった」の巻。

(釣行記十六年第三号の続き)
小学校六年生のとき、人生初の魚釣りをした。
場所は多摩川下流の丸子多摩川。
東急東横線の鉄橋のやや下流であった。
なぜ自宅近所の二子玉川でなく、丸子多摩川であったのか。
それは当時、丸子多摩川には和船に取り付けた大きな四つ手網で川魚を捕って売る老夫婦の漁師がいて、わたしも鯉っ子や小鮒を買っていたことにある。それもあって、ここで釣りをすれば鯉や鮒が釣れるものと考えていた。
釣り竿は小遣いを溜めて買った。
しかし所詮は子どものこと。たいした竿など買えるわけはない。おそらく廉価物でも手に入れたのだろう。
浮子は玉浮子か唐辛子浮子だったかの記憶は定かでない。
とにかく魚釣りができる最低限の道具を買いそろえ、嬉々として河原にでた。
河原に出たものの、魚釣りの仕方がわからない。
困ったことに、わたしは父無し子であった。
それだけに何事も教えてくれる存在がない。周囲を観察して覚えるしかなった。
それでも何とか始めてみたが、うまくいくわけがない。
そんなわたしを見かねた大学生くらいのお兄さんが、あれやこれやと世話を焼いてくれた。しかしそれでも埒があかず、最後はお兄さん自身が竿を握ったが、魚を釣ることはできなかった。
こうして人生初の魚釣りは、オデコに終わった。
わたしのオデコ人生の始まりである。
この後、わたしは中学校へ進学する。
この続きは、いずれまた。

勢いに乗っている。
二度も続けて半束(五十枚)を超えた。
この程度の釣果は上級者にとっては日常茶飯事かもしれないが、わたしにとっては快挙ともいえる出来事だ。さらにその前の西湖の釣りも面白かったから、今は釣りにゆきたくてゆきたくて仕方がない。
そう中毒的にゆきたがる自分がいるのだ。
暦はゴールデンウイーク。
そんな時ぐらいは子守りや孫娘と遊んでやればよいのに、どうにも我慢が出来ず、戸面原ダムへとやってきた。
しかし、ここで驚くような光景に出会す。
この人気ぶりは何だっ!。
先ほどゴールデンウイークと記したが、今日は五月二日。暦の色は黒いのに、だ。
これは困った。わたしのような平日のまったりとした釣りしか経験のない輩には、これをどう対処してよいのかわからない。
あちらこちらから入釣場所を相談する声が聴こえてきた。
実はわたし。
今日は密かに上郷地区の浅場へ底釣りにゆくつもりだった。
しかし、その計画は果敢なくも散った。
落胆しながら、とぼとぼと桟橋へ降りてゆくしかなかった。

五時半。
戸面原ダム。
ボートセンター桟橋。
定刻より十分早く出舟があった。
そこにぽつねんと取り残されたわたし。
ゆき先が未だに決まらない。この混雑時における避難場所が思い当たらない。
上郷橋と宇藤木橋には満員御礼の幕が垂れ下がっている筈だ。
橋を越えても上流域には、もはや入り込む余地はないだろう。
さすれば杉林から宇藤木地区にかけてか、本湖の周辺となるが、落合には入釣者がひとりいる。
さて、どうしたものか。
ひとしきり思案していると、思いついたことがあった。
そうだそうだった。馬ノ背があったのだ。
しかし、問題がないわけではない。
このような展開は予想だにしてこなかっただけに、わたしの竿袋に入っている最長竿は十五尺。今の減水具合からして難しい気がしないでもないが、他に候補がないのだから仕方がない。
とにもかくにも、行ってみることだ。

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本日の入釣場所の、正面図。
先鋒、十一尺。


 
マークした地点は大まかです。
正確性は欠如しております。
Yahoo!地図より。

☻本日の予定。
・目 標/二十枚。
・釣り方/チョーチン(散け+グルテン)。
・釣り竿/朱門峰嵐馬、十尺。
・浮 子/亀二郎パイプムクトップ、壱番。
・釣り糸/1号。
・鉤 素/0.4号、250粍+600粍。
・釣り針/アスカ針 7号+4号。
・納 竿/十五時半。

七時半。
前宇藤木。
どう考えても場所の選択を誤った。
準備をしながら、そう思った。
馬ノ背に向かったわたしだったが、無情にも竿が届かなかった。
露呈している立木の周辺を計測したが、何処も二十尺以上の釣り竿が必要であった。馬ノ背を諦めたわたしは、向田湾処への転進を計ろうと考えた。数年前、ここの底釣りで大きな魚を釣ったことがあるからだ。ところが今しがたの馬ノ背で竿が足りなかったことが、わたしを不安にした。
ここでも竿が足りないのではないか…、と。
そこでiPhoneを取り出しその時の様子を調べようとしたが、不幸にも電波の圏外であった。
竿は十二尺であったことは覚えている。が、どうにも水深を思い出せない。確か、二米くらいであったような気がするが、その確証はない。
しかしその記憶が正しければ十九尺が必要で、とても届かない。そう思った時点で、意気揚々と乗り込んできた朝の情熱がプツリっと切れた。
もう何処でいい…。
捨て鉢になったわたしは手っ取り早く対岸の、前宇藤木に舟を結んだ次第だ。
しかし、冷静になってみると後悔が大きい。
今日のわたしは底釣りにきたのだ。
上郷はさておいても、底釣りのできる場所で竿を出すべきではないか。そう考えると、またも対岸の向田湾処が気になりだした。底に届かないまでもやるだけのことはやってみようじゃないか。それでも駄目なら宇藤木橋の袂にある薮の辺りに舟を留めればよいし、最悪、ここに戻ってくればよい。
よしっ、決めた!。移動だっ!、移動。
そう決めた時だった。
爆音が聴こえその音の主を捜すと、数台のライダーが宇藤木橋を通過していった。その数、一台、二台、三台。なにげに連中の行き先を眺めていると、なんと向田湾処に舞い降りた。
彼らはブラックバス師だったのだ。

九時。
ブラックバス師の釣りゆえ、そう長くは滞在すまい。
そう決めつけて気のない釣りを始めていたが、時計の針がひと回りしたところでやっと引き揚げた。
さあ、オレの出番!。
舟を結ぶロープに手が伸びたところで、今度は上流から釣り人が下ったきた。
向田湾処はマイナーポイント。
よもやと思うが、不吉な予感が脳裏をよぎる。
ここを通り過ぎて本湖か上郷にでも向かうものと眺めていると、そのよもやだった。無情にも舟は向田湾処で停止し、湾処の奥のわたしが狙っていた場所に舟を留めた。
ああ、なんとることだ…。
このタイミングの悪さには、声もないわたし。
どうしてこうなってしまうのか…。
今回は向田湾処とは縁が無かったようだ。
諦めてここに沈没しよう…。
しょんぼりしながら浮子を眺めていると不意にツンっと動いて、放流べら鮒が釣れた。

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本日の第一号。
背景は向田湾処。

正午。
本日のただ今の釣果、一枚。
悲惨なことになって、昼の音を聴いた。
対岸の釣り人は単独ではなかった。お仲間がふたりいた。
仲良きことは美しき哉で三人衆となった対岸からは、わいわいと賑やかな声が風に乗って聴こえてくる。
後釣者から竿を訊かれた先釣者は、十二尺、と応えた。
えっ!、十二尺?
十二尺でも届いたのか…。
あの時、面舵を切らなかった後悔が頭をよぎる。
しかし、いまさら悔いたところで仕方がない。眼の前の釣りに集中しようとしたが、今度は先釣者が大きな魚を釣り上げた。
でっけぇー!、四十糎はありそうだ。歓声が上がる。
それを皮切りに交互に竿が曲がるようになった。そして最後のひとりも今しがた、四十糎を釣上げた。
さながら、四十糎の競演でもしているかのよう。
それに引き換えわたしときたら、朝の放流べらに後続がくることを期待したが、それはなかった。あの魚は群れからはずれた、はぐれべらだった。そして今は、時たま、ブルーギルらしき魚が浮子がポコンと動かすだけ。そんな雑魚と悪戦苦闘をしている我が身の不幸を思う。
四十糎の競演とはぐれべらが一枚。
この凄まじいコントラストに打ち拉がれてゆく、わたしだった。

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本日の入釣場所を対岸見た、近影図。


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同上、遠影図。

十四時。
対岸に釣り人はいなくなった。
大きな魚を釣った三人衆は意気揚々と引き揚げていった。
そして、わたしだけがとり残された。
四捨五入すればオデコのような釣りだ。
ため息が出る。
勢いに乗りやってきた釣りも思わぬ展開で、土俵際に追いつめられた。もうすっかりと戦意は喪失して、今、すぐにでも引き揚げたいが、そうすると、三人衆と桟橋で出会すことになる。
それはあまりにも惨めだ。
意気消沈した傷口に塩を塗るようで、あまりにも可哀想だ。
そう考えると、ジッと我慢してここに留まるしかない。
帰りたくても帰れない…。
ひたすらに時が過ぎるのを待っていると、人生、そう悪いことばかりではない。突然、浮子が勢いをつけて消し込んだ。
オッと!。
驚いて竿を合わすが痛恨の、ハリス切れ。
一瞬大きな手応えを感じたから、四十糎がこちらにも回遊してきたのかもしれない。
朝の情熱がムクムクと戻ってきた。
俄然やる気になるわたしだったが、十分後にまたもハリス切れ。
オイオイ、これはスレではないか…?。
いやいや、そうではあるまい。ハリスの番手は0.4号だがこの仕掛けでついこの間、五十糎のブラックバス釣りあげた。そう簡単に切れる筈もなかろう。そう思いながらも、ハリスを0.6号に替えてみた。
今度こそはと得体の知れない魚の来訪を待つが、痛い思いをして懲りたのか、これ以上、浮子が動くことはなかった。
時計の針が十五時を指した。
思えばあの時の、優柔不断がすべてだった。
無難にいこうとしたことが悔いをうんだ。
それにしても前宇藤木と向田湾処。数十米、離れた両岸の明暗は凄まじかった。
ため息、反省、愚痴が止まらず、一件落着。
本日の釣りを終える。
もう桟橋へ戻っても問題はなかろう。

お仕舞い。

☻本日の釣果。
・へら鮒、1枚、

☻2016年データ。
・釣行回数/11回
・累計釣果/187枚。

※お断り。
この釣行記はiPad等の端末に合わせて編集しています。


2016年05月08日(日) 。
吉右衛門。



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