吉右衛門へら鮒釣り2015

  ◎第十五回釣行
6月20日(月)。

戸面原ダム。
馬ノ背。
戸面原ボートセンター。
天候/曇天、中風時々凪。
水色/澄み、水位/減水、1.4m。 

「小さな魚信で魚が釣れて、大きな魚信で仕掛けが捕まった」の巻。

梅雨である。
今年は空梅雨の予報も流れていたが、どうして梅雨前線が例年と変わらぬ形でしっかりと張り出している。その前線が房総半島を覆っているせいで、わたしの住む千葉の空もぐずついた天気が続いている。
そんななか、馬の背が気になりだした。
実はわたし。
梅雨とは関係なく、落合三連戦の不甲斐ない結果を踏まえて真夏の西湖まで竿を休ませようと考えていた。それはあまりにお粗末なおのれの釣技に消沈してのものだった。
しかし、馬の背と訊いた途端に眠りかけていた血が騒ぎだし、やる気がモリモリと湧いてきた。またも悲惨な結果が待っているような気がしないでもないが、性懲りも無く、釣り竿を担いで這い出してきた。

六時。
戸面原ダム。
馬の背。
困ったことに、舟を留められない。
桟橋を離れる時、池主の相沢さんから舟の留め方と穂先を向ける方向についての説明は受けてきた。そしてしっかりと把握してきたつもりだったが、そう甘くはなかった。自分の想像と違っていたことに輪をかけて、過去に舟を留めた時との立木の違いには戸惑うばかりだ。
はて、どうしたものか…。
わたしのような底辺の技量の者が舟着けを語るのは掟破りのことだが、ロープは戸面原の空を滑空している鳶のようにできるだけ大きく広げて結びたい。それが叶わぬまでも可能な限り直角以上の鈍角で確保したい。が、今、わたしの目の前に露呈している立木ではどうにもならない。それに穂先の向きも隧道湾度のやや左側と訊いてきたが、そのようことはできるのだろうか。
もしかしたら場所の選定を間違っているのではないか…?。
そんな不安がもたげてきた。こうなると相沢さんに問い合わせて再度確認するしかないが、その後の展開を想像すると躊躇わずにはいられない。しかし、この窮状を打開するにはそうせざるを得ないだろう。

相沢さんが来てくれた。
そして、すぐ作業に取り掛かってくれた。
こうなることは薄々感じていたが、矢張りこうなってしまった。
申し訳ないなあ。
ひたすらに太った体を小さくして恐縮するしかない。
思い起こせば戸面原ボートセンターに草鞋を脱いでから七、八年にもなろうかとしている。しかし、未だ、まともに舟を着けられないでいる。
こんなに手のかかる釣り客はいないだろう。
それを思うと切なくなってくる。が、こちらの心情は別として笑顔を絶やさず、作業を続けてくれる相沢さん。その姿を見るにつけ益々、情けなさと申し訳なさで言葉が詰まる。
終わりましたっ!、これで大丈夫です。
固定された舟は思いもつかなかった鋭角な三角で結ばれていた。
そして引き揚げてゆく相沢さんの後ろ姿に頭を垂れて、こう思った。
この人を裏切ることはできない、と。

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本日の入釣場所の、正面図。
先鋒。十七尺。


 
マークした地点は大まかです。
正確性は欠如しております。
(Yahoo!地図より)。

☻本日の予定。
・目 標/型をみること。
・釣り方/底釣り(散け+グルテン)。
・釣り竿/朱門峰凌、十七尺。
・浮 子/忠相パイプム、十五番。
・釣り糸/1号。
・鉤 素/0.5号、350粍+420粍。
・釣り針/サソリ針 7号。
・納 竿/十五時。

八時半。
雨雲が眼の前の山まで降りてきている。
時たま吹く風に冷気のようなものが混じっているから、まもなく雨が降ってこよう。
そんな中、やっと底の計測が終わり、最初の餌を入れた。
計測には可なりの時間を要したが、その原因は竿にある。
昨日、この馬の背で二三枚の釣果が出た。
釣果表によると、竿は十七尺。
この長さが呪縛となった。
舟の位置は同じであろうと考え丹念に探ったが、どこに落としても余りが出た。
余りの丈は二尺ほど。
これなら十五尺でも充分にことは足りる。それでは何故ゆえ、先人は十七尺を振ったのだろうか。もしかしたら、何処かに凹地でもあって、そこが魚の溜まり場にでもなっているのか。それとも案外、十五尺を持ち合わせていなかっただけなのか。
疑念だらけの始動となった。

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舟の固定図。
過去に経験したことのない鋭角で結ばれている。

十時。
長期戦は覚悟のうえ。
そうは思いつつも、ひと雨降る前に一枚でも二枚でも確保しておきたい。しかし、今の所、魚信どころか前兆すらもない。
そんな時だった。雨より先に風が吹いてきた。
が、風は順風。
この背後から吹く風に助けられ二尺の余りに悩まされていた振込みが、すんなりと運べるようになった。自在とまでは言わないが、お陰で狙った処へ楽に餌を落とせるようになった。目標にしているズレは三寸以内。それが上手く収まるようになってきた。が、だからと言って、浮子が動くものではない。
これはもしかして…。
最悪の場合が脳裏にチラつきだすと、i-Phoneが鳴った。待ち受け画面に現れた電話の主は、新宿の名人。
名人は朝、勇躍、宇藤木川に向かわれたはずだが、今は石田島におられるそうで、珍しく窮地に立たされているとのことだった。
あの名人でさえもが窮地なら、わたしなどに釣れるわけはない。
そう考えると昼前に道具を畳んでしまいたくもなるが、今日は相沢さんにご苦労を掛けてしまったことから、そう簡単にやめるわけにはいかない。なんでもよいから数枚でも釣って戻らねば、相沢さんに会わす顔がない。
そんなことを思っていると、とうとう浮子が動いた。
これで桟橋に戻れる。
次の魚信で仕留めてやる。
そう思い竿尻を強く握ると、驚いた事に釣れたのはブルーギル。
ということは、へら鮒はいないのか。
落胆しながらも次の小さな魚信にも竿を同調させると、
よかった…。
そう世の中悪い事ばかりではない。へら鮒もいて、窮地を脱することができた。

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本日の第一号。
背景は隧道湾度。

正午。
本日ただ今の釣果、一枚。
やっとの思いで一枚を釣りあげたものの、あれから又も浮子は深い眠りに入った。
これではどうにもならない。
ここは一番、底釣りの第一人者である横浜の名人に御助成を願おうとしたら、i-Phoneの電池が虫の息。出舟時に満タンにしてきたというのに、何か操作を誤ったに違いない。これでは電話をしたくても出来やしない。最近、新規の営業先から夏のイベントに関する問合せが多いことから、へたに操作をすると残量がゼロになることは必至。あきらめた。
となると、今日はこの一枚で終わりか…。
ガッカリしていると、久方ぶりに浮子が動いて二枚目。
さらに連荘で三枚目。
水の中で何かが起きたのか。
わたしは浮子をボンヤリと眺めているだけだから、わかるわけはない。そんな無責任でいると天罰が下った。
次の大きな魚信に合わせると、これがスレ掛かり。
悪いことに尾鰭にでも掛けてしまったのだろうか。緊急避難所の水中立木に逃げ込まれて、仕掛けが囚われた。
悲惨なことなった。
ここは鉤素を切断するしかない。そう思って強引に竿を動かすと鉤素でなく、道糸が切れた。
折角、反撃の狼煙が上がったというのに、なんたることだ。
思わず、天を仰ぐ。

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本日の入釣場所を対岸から見た、近景図。

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本日の入釣場所を対岸から見た、遠景図。

十四時。
どうせ仕掛けを作るならと、十五尺に替えてみた。
それでも一尺程度の余りは出たが、大分と収まりがよくなった。こうなるとピッチは上がる。リズミカルに餌を打ちだすと、早くも浮子が動いて、四枚目。
これに気をよくして、あわよくばの夢を見るが、又も根掛かり。
どう考えてもすれ掛かりとわかっていても勝手に腕が動いてしまう、下級へら師の悲しい性だ。ため息をつきながら、竿を手前に引くと、好事魔多し。再び湖底の立木との綱引きに負けて、道糸が切れた。
どうしてこうなるのだ。
この一事でやる気が失せて、一件落着。
ギブアップと相なる。

お仕舞い。

☻本日の釣果。
・へら鮒/4枚、
・ブルーギル/1枚、

☻2016年データ。
・釣行回数/15回
・累計釣果/211枚。

※お断り。
この釣行記はiPad等の端末に合わせて編集しています。


2016年06月26日(日)。
吉右衛門。



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