水温推定10度 満水 濁り。
戸面原ダム 杉林。
戸面原ボートセンター。
天高く鳶が舞い、今年も絶景.杉林の春。の巻。
桜の花がちらほら咲き始めて、いよいよ四月。
年度も新しく成って、真新しい背広や学生服を街角でも見かける様に成ってきた。そしてウチの事務所にも今年も新卒社員がやってきた。某大学.芸術学部出身のお嬢さん。
毎年新卒を採用する度に痛感するのは、自分との年の差が確実に拡いていく事。今年の彼女は、年号が平成に代わる一年前の1988年生まれ。故に、その差は実に35才。
なんと言うか自分の子供よりもズッと下なのだから、言葉を交わすだけで緊張する。これが大きな会社だと接触は不要かもしれないが、人口十人の職場ではそうはいかない。先日も何気ない会話から趣味を聞かれ
「へら鮒釣り」と答えると
「ヘラブ……何ですか ? 、それ 」だって……。
あー、野球と答えておけばよかった。
午前四時。
若いお嬢さんの認知度の低いへら鮒釣りをするべく、今回の目的地.戸面原ダムへと出発する。
自宅からの距離は大凡73キロ。イメージ的に三島湖より大分遠く感じられるが、あらためてナビゲーションで計測してみると館山道がプラス9キロで、地べたがマイナス3キロだから相殺してみると、遠いのは6キロだけ。道路交通法を遵守しても八〇分あれば到達出来る距離だ。
さて、今回の戸面原は、満を持しての釣行。何せ、昨年は毎回(四回)良い釣りをさせてもらった。故に、一番いい時期の四月迄、ココに来るのを控えていたのだ。
午前五時二五分。
殆ど計算通りの時間で到着。
先ずは管理人さん.ご夫妻に
「今年は沢山来ます。よろしくお願いします」と挨拶をして、釣況を伺うと
「昨日の雨量が可成りだったので濁りが……」との事。この事はさして気にも止めず、前日.好釣果の前宇藤木の着舟場所のレッスンを受ける。お話を聞いていると、どうやらオレでも出来そうな気がしてきた。今日は杉林を予定して来たが、まぁいいだろう。今回はこの.前宇藤木とやらにお世話になろう。
午前五時五〇分。
朝食をいただき、桟橋に立つ。いよいよ出発。
一号艇の常連っぽい方が上郷方面に漕ぎだし二号艇もそれに続く。そして三号艇はオレ。宇藤木橋を目指し出発。然し、漕ぎ出した途端に弱気の虫がもたげてきた。矢張り、着舟に自信が無い。舟が留められずに引返して来る頃には杉林は後続の漁師に占拠されているだろう。曇天が不安な心中に拍車をかける。未練は残るが、前宇藤木は次回と言う事にして、面舵いっぱーい、と大きく舵を切り杉林へ。
杉林到着。ココに縄を張るのは四回目。これだけ回を重ねると流石に要領は会得出来ていて、そそくさと無事完成。
ひと休みして周囲を見渡してみると、昨秋の幻想的な光景とは.まるで別世界。正面の山にかかる雲はちょっと手を伸ばせば掴めそうだし、池の水はまっ茶色。晴れの予報が疑わしく成ってきた。
さて、準備開始。
竿は18尺を選びかけたが、釣果ノートに好釣果が13尺と記してあったのを思いだし16尺に変更。この時、適合の番手の浮子を持参してきてない事に気づく。いやいや.それだけではない、16尺以下の浮子はすべて無い。参ったなー、折角仕事を休んできても、こんなつまらない事で妥協を強いられてしまう。仕方がないので、ひとつ上の番手を代用して竿に結ぶ。
午前六時五〇分。
餌落ち目盛りの調整も終り、準備が出来た。
・目標釣果/二十枚。
・竿、仕掛/16尺、鉤素.300粍+600粍。
・納竿予定/大凡14:30。
前宇藤木の下見に行くので早めに終了。
上記の設定で最初から下針にグルテンを付けて始動。
端から下針にクワセを付けたのは、七時迄の十分間で一枚目を釣り上げよう、と企んだから……然し、甘かった。如何に名ポイント杉林でも、そうは問屋が卸ろしてくれない。
くれないどころか八時迄の七〇分間、魚信無し。
今年の釣りの大きな特徴は、釣れる.釣れない以前に浮子が動かない。前回も釣果記録は辛くも零を逃れたが、浮子の動いた回数は、確実に.ひと桁だった。
そう言えば今更だが、朝の管理人さんの言葉が気に成って来た。昨夜の雨で濁りが……どうとか.おっしゃっていた。これはどう言う事なのか。濁りが悪影響を与えていると言う事か
? 。キチンと聞いておけばよかった。
ブツブツ言っても仕方ない。先ずは浮子を浅い方に三尺程移動して数投.入れてみた……結果は無反応。次に浮子を戻し、鉤素を延ばしたり縮めたりしたが……これでも駄目。
今日の釣りに赤信号が灯る。
午前八時五〇分。
開始二時間。竿替えを決意。
浅い方が駄目だったので、思い切って4尺延長の22尺を思案したが、残念でした、仕掛けが有りませんでした。
仕方がない、妥協の産物として18尺を取出す。
午前九時。再開。
何かが起きる事を期待したが、何も起きない。
浮子は餌の溶解で上がってくるだけで下へは動かない。
大凡三〇分、そろそろ緊張が切れかけて睡魔の囁きが始まった頃、浮子が微かに動いた気がしたので、期待度10%で、本日の初合わせをしてみると……ありがとう。釣れてしまった。昨秋デビューの七寸半程度の小僧。
前回の豚小屋から通算五時間、やっと浮きが動いての快挙。素直に嬉しい。
小僧でも尺上でもいいや。兎にも角にも今回もオデコの呪縛から開放されたのだから……。
小僧の記念写真を撮ってから二枚目に挑戦。
どうやら杉林地区唯一の魚を.たった一回の魚信で釣上げてしまった様だ。またも沈黙の時間がやってきた。
アクビをしながら緊張感の無い時間を過ごしていると、二匹目のお馬鹿さんがやって来た。コイツもさっさと釣上げて魚籠の中では両目が開いた。
十時。
段々、魚が集まってきて、浮子が躍動し始めた。
然し、こうなると、こうなったで新たな問題が生じて来る。オレの場合、浮子が動かなくても釣れないが、動き過ぎても釣れなくなってしまう。これが丸三年目を経過しようとしているのに越えられない、高い高い壁だ。
矢張り.今回も魚達に翻弄され空振りの山を築く。さぞかし奴らは水の中で笑っているだろう。
餌を替え鉤素を替え針も替え、己の持てる技術の粋を集めても届かず。それでも面白い事に仕掛けやら餌やらをマイナーチェンジした直後に、その労をねぎらってくれるかのように一枚だけは律儀に釣れてくれる。それが楽しくて、鶏よりも早く起きて出掛けてくるのだ。
教会の鐘の音が流れて来た。
時を確認すると、正午。
気がついてみると、先程から浮子の付近を影がよぎる。見上げてみると鳶が数羽.天高くを舞っている。いつの頃か、お天道さんも顔を出し青空が広がってきた。いいなー。
この長閑な光景は、いつ見ても飽きる事がない絶景だ。
去年の今頃、この場所で仕事を思い、感極まった事を思いだした。あれから一年を経た今も厳しさに変わりはない。然し、気持ちにだけは余裕が出てきた。そんな事で明日の夜は、前述のお嬢さん他二名を連れてカラオケに行く。少年時代でも歌ってみるか……。
閑話休題。
本日只今迄捕獲した魚の数は八尾。
ふた桁迄はもう直ぐだし目標の二〇枚だって夢じゃない。
然し、緊張が解け、長閑な時間にとけ込んで、少年時代を口ずさむ。
それとは裏腹に、水中の様子が変わってきたようだ。明確な魚信が出だして、十枚達成は十二時半。その後も継続して適度に釣れ続くが、異変が起きた。浮子のなじみ巾が大きく成りトップが水没しだした。そこで餌落ち目盛りを測り直すと、矢張りズレていた。穴が開いたのかは不詳だが兎に角、交換するハメに。
十四時。
魚籠の中で泳ぐ魚の数は十六尾。
釣果的には満足。もうヤメてもいいのだが、目標迄.四枚。可能性は未だ残っている。然し、今日は納竿後に前宇藤木の現地調査に赴きたい。四尾釣って現調経由で十六時桟橋帰舟はしんどいが、朝.駄目だった16尺の竿にも一死報いさせたやりたい。よって続行を決意。
難航が予想されたが、ありがとう。三〇分で難なく達成。
今回.捕獲した魚の数は二〇尾。
年が明けて、やっと釣りらしい釣りが出来た。
道具を撤収し前宇藤木へと向う。
ローケーションは想像以上。沖に出ている立木に舳先を留めるらしい。それと、ワンドの釣りもいい感じ。先釣者に
「底釣りをなさっているのですか ? 」と尋ねると
「そうです」と簡潔な答えが返って来た。
桟橋に戻ると管理人さんがいてくれたので、疑問であった、濁りと棚について質問。
「濁ると宙は駄目で、棚は底に成ります」と言う事だった。
これは、ひとつ学ばせてもらった。
最初から18尺で施行すれば朝の空白の二時間は回避出来たかもしれない。然し、釣れなかったからこそ試行錯誤が面白かったわけだし、18尺にしてからは時速四枚の釣りが出来た。これで満足しなければ、罰が当たる。
魚も釣れたし、管理人さんご夫婦の暖かさにも触れられ、序でに天気も晴朗で楽しい一日だった。
帰路に桜の写真を撮って、富津中央へと赴く。
来週も又来る。
お仕舞い。
16尺天々バラケ+グルテン 零枚(05:50〜08:40)
18尺天々バラケ+グルテン 16枚(09:00〜13:40)
16尺天々バラケ+グルテン 4枚(14:00〜14:30)
合計 二十枚。
七寸半〜一尺一寸。
◯2010年データ。
・釣行回数/5回。
・釣果/41枚。平均/8.20枚。
・次回は4月12日からの週に戸面原ダム.前宇藤木。
2010年4月9日(金)
吉右衛門
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