快晴。
水温 6° 満水 澄み。
三島湖 豚小屋下。
三島湖ともゑ釣舟店。
2010年初釣り。
お天道さまが、岩盤に隠れるのを待っていてくれたお陰で、命拾いをした。の巻。
この春から釣りを始めて(再開して)四年目に成る。本来であれば第一章が終わって第二章に成るのであろうが、釣技に関しては心許ない限り。敢えて過去三年の釣果を書き出してみると、うーん、と唸ったきり声も出ない有様。
・2007年/釣行回数27回/平均釣果29.77枚。
・2008年/釣行回数33回/平均釣果33.48枚。
・2009年/釣行回数27回/平均釣果23.29枚。
然し、釣果を除けば、魚釣りのお陰で面白可笑しく過ごせた事はまぎれもない事実だから、本来であれば今年は頑張るとか、今年こそは、とかの言葉が出て来ても不思議でないのだが、ココに来てちょっとした心境の変化が自身の中で起きてきた。
そう、あれは昨秋に事務所の車輛の入替で二社のディーラーの営業マンと面談した時の事。二人とも社歴10年の脂の乗り切ったセールスマンであった為か、あまりの熱心さに圧倒されてしまった。そこに自身の昔の姿を重ね合わせてみたら、急に現役の真似事をしてみたくなった。
自分の本職は営業。中でも「飛び込み営業」を得意として、売上の基盤を築いてきた。それが、今の自分はと言えば職場に顔を出しに行っているだけの閑職。惨めなものだ……。
もう一度、あのギラギラした頃に戻りたい。と言っても無理な事は承知しているが、真似事位なら出来るだろう。
それには先ずは弛み切った肉体を絞らないと駄目だ。それと精神的な贅肉も削ぎ落とす必要がある。果たして何処まで出来るのかは不明だが、久々に仕事に前向きな自分が居るので、その気持ちを大切にしていきたい。
過去三年は、へら鮒釣り.ニッポンハムファイターズ.仕事の順であった生活を、今年は、仕事.へら鮒釣り.ニッポンハムファイターズで過ごす所存。
そんなわけで、今年は仕事の優先順位が上がったので釣行回数にいくらか影響が出るかもしれないが、年間二十回程度は実行するつもりだ。
ああ寒い。今朝の予想気温は氷点下三度。然し、この程度の事で尻込みするようでは、へら鮒釣りはやっていられない。
達磨の様に服を着込んで愛車に荷を積載して出発。
行き先は、今年.初の釣行なので三島湖ともゑ釣舟店。
館山道を南下しながら、今年の釣りを考える。
昨年は両団子に固執した結果が貧果を招いたが、それは承知でやった事だから良しとして、今年も継続する。
思案したいのは釣行先だ。今迄は「釣行=三島湖-ともゑ釣舟店-豚小屋下or桟橋」の構図が出来上がっていたが、少しずつ他にも出てみたい、と思う様に成ってきた。
この先、いつまで釣りをするのか分からないのと、今年の様に仕事に精を出したい時は、一回一回が貴重な時間と成ってくる。去年は戸面原に四度行って何れも良い思いをさせてもらった。そこで今年は豊英湖にも進出してみたいと思う。それらを総合すると節目の釣行は全て三島湖として十回、戸面原と豊英湖は各四〜五回。そして関越道付近の池に一度と、昨年下見をしてきた芦ノ湖へも行きたい。
自分は人見知りがキツいので、あまり新たな所に行くのを嫌うが、まぁこの際だからいいだろう。全部を合わせるとザッと二〇回と云ったところか。
遅ればせながら、麓の雑貨屋さんに新年の挨拶をしてから、三島湖ともゑ釣舟店到着。
「初釣りに来ました。今年も宜しくお願いします」ともゑ釣り舟店の皆さまにも挨拶をして入釣先を質問。
「25尺の竿は桟橋前の升でも振れますか?」
「振れる所は有ると思いますが、この時期は何故か、魚が看板下に集中するので、彼処に入らないと駄目です。寄せて釣ることは出来ませんから」だって……。
其処まで言われたら従うしかないだろう。でも、今日は月曜日だから混雑が心配。聞けば他には一名だけ、との事だが後から大勢来るかもしれないし……。
……躊躇いは感じるが、他では浮子が動かないのであれば、そうさせてもらうしか選択肢が無い。
桟橋に降りてみると、なるほど先入者の方が既に看板升で準備中。舟を漕いで接近してみると崩れ前に着舟されている。然らばと、隣に入釣する旨を申し出て黒ブイの先、対岸が凹んでいる所に舟を留めた。考えてみれば、昨年も一昨年も初回の釣りはココだった。これも何かの縁だろう。
竿を準備し、餌を作る段に成ってバラケ餌の粉を一袋忘れてきた事に気がついた。
さて、どうしよう ……。七面倒だが店に戻って買って来るか。
思案六法の末に、このまま作る事に決めたものの、忘れたのはツナギの粉。これヌキとなると水中でボロボロに成りはしないか……。のっけから、こんな心配事を抱え込んでしまった。
七時三〇分。
第一投投入前に、先ほどお店で購入して来たお御酒を湖面に注いで一年の安全を祈念する。
七時四〇分。
・目標釣果/三十枚、min二桁。
・納竿予定/陽が岩盤に隠れる十四時頃。
と設定して、2010年の第一投を投入。
緊張の面持ちで浮子を凝視していたが、何の抵抗も無くトップの先端まで沈没してしまった。これはどうも圧をかけ過ぎた様だ。
今度は少し緩めにしてやり直したら、良い感じ……。トップのナジミ方も溶解の速度も自分の中では理想型。コレは怪我の功名と言うか、ひとつ学んだ思い。
九時〇〇分。
餌打九〇分、浮子は動かず。
そこにギッタンバッコンと、ワカサギ釣りの舟もやって来て、湖面が落ち着かない。
こりゃ駄目だ ! 。一時中断して、写真を撮りながら周囲の状況を観察すると、先ずは上から二番升付近にへら鮒釣りのオジさん。次の三番升には船宿の女将さんっぽい女性と番頭さん。そして看板升は、崩れ前が例会の試釣に来ている成田の名人で黒ブイ脇がオレ。そして最後に二人乗りのワカサギ船が二杯、と言う案配。整理してみると、へら鮒釣りが三名。ワカサギ釣りが五名、二刀流が一名といったところか。
ボンヤリ数えていたら、番頭さんに「何尺でやってんの」と聞かれ「25です」と答える。そしたら「もっと長いのは無いの?」だって……。25では足りない、と言う事だろうか
? 。
この言葉が引っかかり、心の奥底に暗雲が立ち籠めて来た。
九時三〇分。
何かが起きる事を期待して、下の鉤素を600粍から750粍に延長してみた。また同刻、バラケのワンボウル攻撃も終了したが、何も起きない。
そんな時、再び番頭さんに「どう魚信る ? 」と問われ「駄目です」と答えた瞬間.浮子が微かに動いた。空かさず合わせると確かな手応え、興奮して「釣れました」と言った瞬間にハズレてしまった。これには千載一遇の好機を逃した思い。
十時三〇分。
お天気には恵まれた。背後からの陽射しが気持ち良く、一足早く春が来た感じ。防寒のジャンバーを脱いでも寒くない。
そして、やっと弱いながらも浮子が頻繁に動く様に成ってきた。こちらにも春が来れば良いのだが、微弱で決め手が無い。
もしかしたらワカサギではないか !。そんな不安が過った時、隣の名人が番頭さんに「浮子は動くんだけど決め手が無いよ。ワカサギとは思いたくないんだがね」とボヤいているのが聞こえてきた。……誰しも考える事は同じだ。コレの犯人だワカサギだとしたら夢も希望も無くなってしまう……。と心の中で呟いていたら、名人が落込みで第一号を釣上げた。
いいなあ、鮒だ。……。これを羨望の眼差しで見ていた瞬間、自分の浮子もフッと沈んだ。間髪入れずに絶妙のタイミングで合わせると…………こちらは夢も希望も無くなってしまうようなワカサギ。然も口に銜えてる……。一瞬頭がクラクラする様なショックを受けた。
コレは奈落の底へ沈んでいく展開ではなかろうか……。
十一時三〇分。
奈落の底で時報を聞くハメに成った。
奈落の底に沈んだ事は、大昔は別として過去三年の釣行で二度有る。一度目(2008年第3回)は一昨年の建国記念日。珍しく旗日に来てみたら混雑していて豚小屋に入り損なった。結果は三ツ沢から魚屋に彷徨して沈没。二度目(2008年第5回)は同年翌月ダムサイドの中央ロープに入るも酷寒に突風が重なり、更に取水塔の工事の騒音迄加わって昼でギブアップ。毎度平日にしか来ないので、零には見舞われない筈なのだが……。
閑話休題。
午前の部の釣果は零。最悪の展開。
目標三〇枚と言ってしまった事が恥ずかしい。
冒頭で記した様に減量中なので食事は無し。依って、無休憩のまま続行。
何とか釣るぞ ! 。
己を叱咤激励しながら後半戦に臨む。
何とかしたい一心から、仕掛けの修正を試みた。
これが打開策に成ると良いのだが……。
下の鉤素を850粍に延長して上の鉤素は100粍に短縮。ちょっと振込み難いが贅沢は言っていられない。釣れるまでは四の五の言わずに、徹底抗戦をする。
状況に変化無し。
徹底抗戦をするつもりで、仕掛けが何度もクチャクチャに成りながらも頑張ったが、時間ばかりが空しく過ぎていく。
段々、分って来た。鉤素の長さを替えた位では、如何ともし難いのだ。
時計の針は十三時〇〇分を廻った。
相も変わらず針に掛かるのはワカサギだけ。
陽が岩盤に隠れるまでは残り六〇分前後。
「釣果零.其の三」の恐怖が目前迄迫って来た。
過去の釣果零は、入釣場所に溢れたり、悪天候だったりで、納得が出来た。然し、今回は絶好のポイントに入釣しているのだから、言い訳なんか、出来やしない。
十三時五〇分。
いやはや、参った。全く困った。土俵際でもがいたら、光明がひとつ。
陽が岩盤に隠れない。
お天道様が「釣れるまで、待っててやるから、頑張れ!」とでも言ってくれているかのよう……。
……そうか、昨年の最終回の頃より日が延びたんだ。考えてみればあと四〇日でお彼岸だし……。
何はともあれ、時間の延長が可能に成った。
十四時〇〇分。
釣れるアテは無いが延長戦突入。
敗者復活に向けて、精一杯、最後の足掻きをしてみたい。
……十分後、何だか魚信に力感が出て来た様だ。先ほど迄のワカサギの魚信とは明らかに違う気がする。錯覚かもしれないが、藁をも縋る思い、からかコチラの気持ちにも力感が出て来た。
これは、好機到来 !。かもしれない。
本日.最初で最後のヤマ場がやって来た。
浮子が動いただけで、先程まで悲嘆に暮れていた気持ちが俄然ひき締まってきた。
そして十五分後、浮子がツッと動いたので、合わせると確かな手応え。思わず「アッ」と叫ぶと、成田の名人が「今度はバラさないで」と掛声。約一分後、玉網で掬った時は、仇討ちで本懐を遂げたヘボ侍が、腰を抜かして地べたに.へたりこんだ様に成ってしまった。「よかった。よかった。……」
ひとりで何度も呟いていると、再び成田の名人から「ねばってよかったですね」との暖かい言葉。ありがとうございます……。
更に五分後、ナジンだ浮子を誰かが持ち上げた。餌が割れたのか ? 。合わせてみると又.釣れた。
更に更に二分後、ナジンだ浮子がカチカチっ、と動いた。この動きに反応すると思いがけず三連荘。
もういい……。ご馳走さま。
感激をありがとう。
次ぎの一投を空振りして、あっさり納竿。
絶望の縁で、思いがけず三枚の釣果を得る事が出来て、一件落着。
終ってみれば、辛く苦しい釣りだったが頑張った甲斐が有った。
危なく館山道を泣いて帰る処だった。
お仕舞い。
25尺天々バラケ+グルテン
3枚(07:40〜14:30)
合計 三枚。
九寸〜九寸半。
次回は22日からの週のどこかで豊英湖。
後記。
今年もへら鮒釣りを始動しました。
初っ端から苦しい釣りでしたが、最後に、感激と興奮を味わう事が出来ました。
本、「吉右衛門の釣行記」では釣技についてを語る事は出来ません。毎度毎度の駄文をお読みいただければお分りかと思いますが、何故釣れないのかは吉右衛門自身が一番分っています。
早い話、役不足と言うか、ヘタの横好きが糸を垂らしているだけなのです。
ですから、とても舞台にあがれるレベルにはありません。
然し、そのレベルなりに釣行で味わった感激興奮をボヤキと愚痴を交えて、記事や写真で表現出来ればと思っています。
小学生の作文レベルのモノしか書けずに図々しいのですが、本年も宜しくお願いします。
通算百回迄残り三十九回、頑張ります。
追記、
不況の影響もあるかと思いますが、へら鮒釣り業界に元気がありません。そこで私の様な初心者が生意気ではありますが掲示板を設置してみました。
へら鮒釣りに関します事なら、釣行、釣果、情報等、何でも結構です。ご投稿くだせれば幸甚です。
こちらの方も宜しくお願いします。
2010年2月14日
吉右衛門
|