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第十九回釣行 2010年12月10日(金)
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これまでの釣行記(へら鮒釣り) 2009年〔三島湖〕

吉右衛門のへら鮒釣り 最新釣行記快晴。午前中凪、午後風。
気温12度、水温13度、減水0.4m 澄み。
豚小屋下.看板前。
ともゑ釣り舟店。   

納竿。の巻。

何となくつまらない日が続いている。
鬱というわけでもないが、何をしても虚しく充実感がない。どうしたものか、ナニが原因でこうなったのか、とあれこれ思案してみて行きついたのが、仕事。職場が面白くないのだ。
そう、あれは昨年の忘年会の席での事だ。勢揃いした社員と協力会社の面々を前に勢い余って、ついうっかりと、
「あと三年で引退をする事とその間に息子への引き継ぎと行う事」を、宣言してしまった。
吹けば飛ぶ様な十名程度の組織に社長もヘチマもなかろうが、この言葉に職場に居る息子が予想以上に発奮して頑張りだした。
これはこれで結構な事なのだが、それに伴って気がついてみると、なんだか自分の居場所が急激に狭くなってしまった。ナニをやろうとしても既決されていたり、スタッフを営業に連れて行くにも、一々許可を取らなくてはいけないような有さま。それと今までコソっとやっていた小さな悪事も暴かれそうで、密かな楽しみも奪われつつある。
仕事に関しては昔から好きな様にやって、やりたい様にしてきたので、こんなのってつまらない。
そこで一念発起して反乱を企んでみたが、既に周囲にはひとりの近衛兵も居ない状況だから、直に鎮圧されるのは必定。
今年の夏に戸面原で覚えた立木の釣りが面白くて、それにウツツを抜かしていたら、このザマ。
息子の方は、
「オレが頑張ってやるから、オヤジはゆっくりと釣りでもしていていいよ」、と言ってくれるのだが、
オレだって、もうひと花咲かせたい。
然し、そう思ってはみたものの、この不況の中、堅調に推移している数字を見るにつけ、最近では息子に任せた方がよいのではないか、と弱気の虫ももたげてきた。それと今年は頑張って営業にも精を出してみたが、若い頃とは比べようもない結果に終わってしまった。
そんな鬱積した気分を晴らしに、温泉でも行こう、と女房と娘を誘ってみたが、やれテニスだ、フラメンコだのと断られてしまった。これは衝撃だった。昔は喜んでついて来たのに、だ。
オイオイ!、みんな、どーしてそんなにオレに冷たいんだ!。
こんな事を言ってもはじまらない。彼女等は、既に温泉よりもっと素敵な時間と場所を確保しているのだから……。
オレもあと二年半で還暦。そろそろ自分の身の置き所を考えないといけない時がきたのだ。
ついこの間迄は、三島湖、戸面原ダムそして鎌ヶ谷ファイターズとバラ色の六十代を夢見ていたのだが、いざ、オレの前から仕事が無くなったら、どうなってしまうのだろうか……。
今、こうして釣行記の序文も忸怩たる思いで書いている。
どうやら、この葛藤は年を跨いでも続きそうだ。

またも釣行が大きく空いてしまった。
前回の釣行が十月の後半だったから、かれこれ一月半もブランクが出来た。原因は上述の事が一番大きく、行く気になっても体がついていけず、起床出来ても気持ちが萎えてダメ、の繰り返し。然し、ぼやぼやしていたら2010年が終わってしまう。ココはケジメとして竿を納める事だけはしておきたい。そこで、萎える気持ちに叱咤して今回の釣行と相成った。

午前五時半。
本年最後の釣りを行うべく、三島湖へと出発。
ケジメの釣りは三島湖の豚小屋で、が己に課している不文律だ。
早速、車中で一年を振り返る。
先ずは釣行回数の減少が気に成る。何せ、秋頃から急に失速してしまい十月が一回、十一月が零回、そして今月も今回だけだから合計回数が十九回と二十回にも届かなかった。更に掘り下げて2007年からの釣行回数もお浚いしてみると23回(9ヶ月)、33回、27回ときていたから随分と減ってしまった。
それと予定していた箱根と関越方面に行かず、恒例の麦秋会長も偲ばず、それから何だろう、そうそう三島湖の猫内橋から上流にも行かなかった。
また、辛かったのは三島湖の魚に冷たくされた事だ。この前ナニかの折りに数えてみたら、今季八回の合計釣果が百枚強しかない。然も、そのうちには五十一枚を釣った日があったので、それを除外した平均釣果は僅か七枚強と言う低落。これでは、いくらオレが釣れないのは平気、と言っても寂しすぎるだろう。
まあ、釣果を望むのであれば猛省して根性を入れ直すか、場所替えをするしかないのであろうが、今の所、三島湖から離れる気はないので、来年もこのままだと思う。
他では、戸面原へ行く回数が増えた事か。初入釣の所が沢山有ってアドベンチャー気分で楽しめた。なかでも前宇藤木、中島岬、石田島、塚山、本湖と続いた夏の立木シリーズは格別に面白く、これが今年のクライマックスだった。
各釣りでは、一番面白かったのが石田島の立木。一番興奮したのはポンプロープの大オダ脇での釣りであったと思う。あの琉金のような形をした大きな魚を釣り上げた時の感触は未だ覚えている。
こうして考えてみると、最後は垂れてしまったが、なんだかんだ言っても、それ也に楽しめた一年であったのではなかろうか。

午前六時四十分。
出舟時間に十分遅れで到着。
入店して貸舟と放流バッチの料金を支払い、「豚小屋に納竿に来た」旨を伝えると、豚小屋は隣の船宿から下ってきた例会組に既に占領された、と告げられてしまった。
今日は金曜日、滅多に例会には出会さない曜日だ。それが納竿に来た日に限って……ああ運が悪い。
遅刻なんかするんじゃなかった。それでも来ちゃったんだから仕方がない。何処か替わりに一年を締めくくるのに相応しい場所を探さないといけない。然し、探そうとしても今日は豚小屋しか考えて来なかったから、急には思いつかない。
もう何でもいいや!。若旦那に、
「桟橋でやるとオデコですか?」と尋ねてみると
「多分!」、キッパリと言われてしまい、天を仰ぎながらベランダに出てみると、ドキっ!。
天は我を見捨てていなかった。
何と看板の前がポッカリと空いているではないか!。
「一級ポイントが空いてますね」とは後ろから来た若旦那。
急に元気が出てきたものの、例会のオジさんたちの間に割って入いってやるのも野暮な気がしないでもない。然し、今日は一年最後の魚釣り。取りあえず、舟を漕いで行ってみよう!。
早速、舟に荷を積載して現場に接近してみると、他国船籍の舟に混じって崩れの前に停泊しているのは、「と」マークの舟。あれは例会組ではないぞ!。
最後の最後にいい事があった。よくぞ残っていてくれた看板前。
今日の幸運に感謝し、両隣の方に入釣したい旨を丁重に伝えて、忍び足で着舟。

◯本日のデータと予定。
・目標/断固二桁の確保。
・竿 /神威.21尺。
・浮子/忠相グラスムクトップ.15番。
・鉤素/100粍+600粍。
・餌 /宙バラ.2+ミッド.1+オールマイティ.1+水.1。
    (数字の1は100cc)
    アルファα21.1+水1.5。
    (数字の1は50cc)
・予定/07:50〜18尺、グルテンセット。
    14:00、納竿。


釣行記写真
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今年最後の入釣場所、写真中央に写るのが看板。

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いつもの正面図。

午前八時。
はやる気持ちを抑えて丁寧にエサを付け、第一投。
一級ポイントの豚小屋下看板前で、本年最後の釣りを始める。
ブランクだった一月半の間に数回の放流が行なわれたようなので、前回(第18回、釣果五枚)のような事はなかろうと、期待を込めて始めたが、開始六十分でその期待は暗澹たるモノに変わった。浮子が動かない事もだが、周囲の何人の竿も曲がらない。更に例会のオジさんたちの愚痴と釣れない自慢が聞こえてくる。
釣れない事、耐える事には慣れている、とはいえこの状況にタメ息が出る始末。
然し、今日は竿納めの日。簡単には引き下がれない。無駄な抵抗かもしれないが、やれる事、思いついた事はすべてやってみよう、と徹底抗戦の覚悟だ。
先ずは下のハリスを700粍に、次に上のハリスを300粍に延長してみたが、効果無し。更に最近よく行く四街道の釣り具屋さんで居合わせた方から教えてもらった下記のエサを試す。
・アルファ21.50cc+綿グルテン.50cc+水.125cc。
それと序でに買った力玉とやらも試してみたが、何も無し。

午前十時半。
先程から右隣の方の竿が曲り出した。人の釣果を羨むわけではないが推定五枚程度はフラシの中に泳がせていると思う。
いいなあ……オレなんか魚信すらない。
ハリスやエサを替えるだけではどうにもならない。然らば、残る手段は竿替えという事に成るが、先ほどから正面の枝が気になって仕方がない。そこで竿を枝に向けた状態で左隣の方に四尺延長の可否を尋ねてみたら、大丈夫との返事。
長竿を振るのには抵抗があるが、この際だから仕方がない。とブツブツ言いながら竿袋から出そうとしたが、無い!。何度探しても、無い!。またもや迂闊に忘れてきてしまった。
今年は何度このような失敗をしたであろうか……。ドジな事、間抜けな事を悔やんでも仕方がない。
このまま21尺で続行するしかなくなった。

午前十一時半。
いつもの昼前を告げるサイレンが流れる。
まだ昼前なのに、早くも土俵際まで追いつめられた。
小手先の細工ではどうにも成らず、そして長い竿を忘れて来た現状ではマグレの一発しかない、と悲嘆に暮れていたら本日初の魚信。そして大願成就!。
お陰さまで初魚信を逃す事無く、無事に仕留める事が出来た。
ああ、良かった。土俵際で踏みとどまれた。
そして、千秋の思いで釣った魚は記念写真を撮って直ぐに放流。

釣行記写真
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千秋の思いで釣った魚は壱尺くらいか。

さあ、蓮荘!。
二枚目は蓮荘で!……と夢をみたが何も無い。
一瞬我が世に春が訪れたかにみえたが、全くそのケが無い。
今日というか今年というか、三島湖での釣りの厳しさを改めて思い知る。

十二時半。
天気は晴朗そして風は無し。未だ紅葉も所々に残っている。
釣れない事、寒い事を除いてはマズマズの釣り日和と言ってもいいのではないか。
ココで遅ればせながら、本日の豚小屋組を書き留めておく。例に依って上流から書くと一番升に一名、二番升も一名、三番升は三名、そして崩れ前には「と組」の一名、次の看板前も「と組」所属の舟で主はオレ、最後は右隣の沢山釣っている人で、計八名。そして「と組」の二艘以外が例会組、という事に成る。

釣行記写真
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澄みきった青空

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まだ紅葉も残っている。

閑話休題、釣りに戻る。
あれから何も無い。多分これからも無い気がする。
然し、帰り支度には未だ早い。出来る事ならもう一度浮子の動く所を見てみたい。既に技術ではどうにも成らないから、再び気まぐれなヤツの登場を願うしかないのだが、今更ながら気づいた事がある。どうやら両隣の竿はオレの依りズッと長そうだ。推定で24、25尺くらいはありそう。今日みたいに魚が下層に居る時は、これは大きなハンディになるのだろう。
どうすればいいのかなあ。
致し方ない、竿の長さは打ち込み回数で補おう。そう心に決めて半狂乱の如くひたすらに打ち込んでいたら、お待たせしました、とうとう浮子が動いた。
好機到来!。
本日二度目の魚信。
そして、これは自分で頑張って作った最後の好機だ!。故に、これを逃す事は絶対に許されない!。そう心に誓いグリップをグッと握りしめ浮子を凝視する事、数秒……そして浮子が大きく動いた瞬間、シメタっ!とばかりに合わせてみたが、敢えなく空振り、次も空振り、更に次も空振りして、チョン!。
「オレを甘く見るな!」、誰かの声が聞こえたような気がした。

十三時。
遂に魚は居なくなった。
最後の好機、逃してはならぬ好機を逃した。
残念だが、最後にやれるだけの事をやってダメだったのだから、よかったじゃないか。自分で自分を慰めていたら、陽が雲の影に隠れて気温が下がった。ちょっと早いが、ヤメ時かなあ。
今、ヤメても未練はないか?、自分に問うてみたら、未練は無いが不安が有る、と言う。不安というのは平均釣果の事。
もしかしたら今年の数字が二十枚を割り込むではないか?。常日頃から釣果は二の次を自認しているが、いくらなんでも二十枚以下では、恥ずかしくて釣りが趣味だと世間様に言えやしない。
故に、これの確保が出来なければ、石にかじりついてでも不足分を釣り上げなければなるまい。
そこで恐る恐る舟上でパソコンの端末を開いて確認してみたら、前回迄の合計釣果は381枚、それに今日の1を足して、今回も含めた釣行回数の19で割ってみたら、答えは、20.10枚と成った。
良かった、まさに写真判定。ギリギリだが何とか20台である事の確認が出来た。やれやれ、史上最低のお粗末な数字だが、これで未練も不安も無くなった。そして、安堵出来た瞬間に情熱も無くなった。
これ以上続けても、いい事なんかありゃしないだろう。
弱気の虫が鳴きだしたら早い。カエルが鳴くから帰ろう。
十三時三十分、納竿。

お仕舞い。



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桟橋風景。

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ともゑ釣り舟店さんのベランダより。
未だ十四時、みなさん熱心に竿を振っている。

釣果続編。
陸に上がり、ともゑ釣り舟店さんに挨拶。
本日の釣況と結果を報告したら苦笑いをされてしまった。
何でも一昨日迄は好調で昨日行われた釣友会の優勝予想重量も40キロだったらしいが、昨日からパッタリと不調に転じたとか。
それでも優勝された方は宿原迄遠征されて沢山釣られたらしい。
(帰宅して結果を調べてみたら優勝されたのは大名人の山田さんだった。おめでとうございます)。
矢張り、釣られる方は違う。技術もさる事ながら、試釣に遠征にと釣る為の努力を厭わずにされている。それに引き換えオレときたら、ココでいいや、と安易に近場に舟を着け、竿も忘れて来る始末……これでこの結果は当然だろう。
最後に改めて、
一年間の御礼を申し上げ、来年の暦と玉子をいただき一件落着。
館山道の君津ICに向かうべく麓へとくだる。
2010年の釣りが終わった。

○この日の釣況及びスペックと結果。

釣行記写真
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この日の釣果。

(スポーツ新聞の記事より抜粋)

記事掲載のPDFデータはこちら > > >

・21尺天々・グルテンセット/1枚(08:00〜13:30)。
・合計/一枚。
・サイズ/壱尺零寸零分。

◯2010年データ。
・釣行回数/19回。
・累計釣果/382枚。平均/20.10枚。

後記。

吉右衛門の釣行記をお読みくださっておられる皆さまへ。
2010年の釣りが終わりました。
相も変わらずのお粗末な結果でしたが、貴重で楽しい時間を過ごさせてもらいました。
釣行回数の減少に伴って、更新回数も減らしてしまいましたが、また来年、気持ちを整理してから望みたいと思っております。
どうぞ、皆様におかれましてはお体をご自愛されて、良い年をお迎え下さいませ。
一年間のご愛読ありがとうございました。

 

2010年12月23日(木)
吉右衛門。


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