快晴.真夏日。午前中風、午後凪ぎ。
気温34度、水温28度、減水2.7m 澄み。
前宇藤木。
戸面原ボートセンター。
先生ごめんなさい。
オレは釣りが好きなんです!。の巻。
前回の、石田島立木での興奮が冷めやらぬ翌日の事。
大きな魚を沢山釣った余韻の心地良い痛みと、炎天下で焼けて赤黒く成った腕に喜びを感じつつ、紀尾井町の病院へ定期検診に出掛けた。
検診と言っても問診と薬の処方箋を受け取るだけなので、この日も順調に進んでいたのだが、最後に脈拍を測る段に成って、
「随分と、腕が黒いですね。どうしました?」
「昨日魚釣りに行ったのですよ。湖上の炎天下で最高でした!」
と誇らしげに言ったら、
「えっ!、炎天下で釣りをした!。どのくらいしたんです?」
「五時半から十六時です。沢山釣れちゃって……」
「馬鹿な事をしてちゃ駄目ですよ。いいですか!、何度も言いますが、貴方は心臓にキズが有るんです。それに血管を拡げる薬も服用しているんですから熱中症に成り易いんです。だから暑い時と寒い時は大人しくしていないと、駄目なんです!」
……なんだ、慌てずにノンビリ過ごせるのであれば、夜明けから釣りをしてもいい、って言ったくせに。然し、オレの身を案じて言ってくれているのだし、マサか目の前の男が、炎天下の湖上で傘も差さずに釣りをする馬鹿、だとも思わなかったのだろう。
「夏の間は釣りを、我慢出来ないのですか?」
……段々、ぐうの音も出なく成ってきたので、小さな声で
「我慢は出来ますけど……。でもやりたいです」
「では、日陰で数時間だけならいいです!」
「ハイ!、わかりました」。
いやぁ、怒られちゃったよ。
なにはともあれ、「私が悪う御座いました」。
午前四時。
娘に、魚釣りのユニフォームとして誕生祝いに買ってもらったポロシャツを着て、ルンルン気分で戸面原ダムへと向かう。
その暇な道中、入釣場所の思案をする。
陽のあたらない場所って何処だろう?。
考えるまでもなかった、前宇藤木だ。彼処ならお天道様は昼頃まで背後の岩盤に隠れて出てこない。然し、今春から彼処には二度も舟を留めているので、ちょっと新鮮味に欠けるきらいがある。では、前回気が変わって入らなかった宇藤木橋の上流へ行ってみるか。彼処の右岸なら陽も避けられそうだし……。
そんな他人からみると、どうでもよさそうな事をああでもない、こうでもないとブツクサ言っていると、現地到着。
午前五時。
車外に出ると、幸運にも大名人にお会い出来た。丁重にご挨拶をすると、明日の「湖集会」の試釣に来られているとの事。
いつもホームページ(太字をクリックすると名人のブログにワープします)を見て勉強させてもらっています。
ありがとうございます。
名人に続いて事務所に入り朝食をとりつつ、ご主人に川筋から宇藤木方面について尋ねてみると、釣れる魚は大きいが数が出ないので最近は不人気……故に人気の前宇藤木の立木でさえも多分空いているのではないか、との事。
釣れなくても不人気である事は、自分にとっては好都合。釣果は別として、車中で思案した通りの展開に成りそうだ。
外に出て、出舟前の数分、大名人にお話をしてもらったり、湖集会のメンバーの方をご紹介して頂いたりしたのだが、自分のような釣技のレベルの者が、恥ずかしい限り。
いやはや柄にも無く緊張してしまった。
午前五時半。
大名人に質問をしすぎて出舟を遅らせてしまった。
ごめんなさいでした。
名人が上郷方面に向かわれたのを見送ってから、自分も出発。
旋回して櫓を漕ぎだした処でハタと気がついた。
朝一の出舟風景を見ていなかったので、宇藤木・川筋方面に向かった人数がわからない。何名くらいがコチラに向かったのかを、聞いてくればよかった。
ちょっと後悔したが、まあいい。何とか成るだろう。
…………。
いつもと景色が違う。
更に水位が下がったようだ。二十日前より確実に1m以上は減っていて、露呈している立木の数が増している。そんななかで目に飛び込んできたのは馬ノ背の立木群。
彼処に入りたい!。
まさに垂涎の的。誘惑に負けそうでクラクラしてきた。
然し、悲しいかな今回は、「日陰で数時間」の処方箋を守らないといけない。それくらいの我慢はしないと、あまりにも先生に対して不誠実だろう。ココはグッと堪えて、後ろ髪を引かれながらも川筋方面に向かう。
…………。
宇藤木橋を眺めていたら、舟が一艘こちらに引き揚げて来る。
ハハァー、上流が満杯で入れなかったんだな。
ココで勝手に決めつけたのが、凶と出た。(この事は後で知る事に成るのだが、この時点では知る由もなかった)
売り切れちゃったよ、それでは仕方がない。例の立木に留めるとするか。妥協半分でいつもの場所へと近づいてみると、今回はちょっとばかし勝手が違う。普段右後方の縄を結ぶ枝が頭上に成っていて結べない。それでは、と水中から露呈している木を代替にして完成に至った筈だったのだが……。
◯本日のデータと予定。
・目標/早上がりの為、十五枚。
団子.十枚、角麩.五枚。
・竿 /朱門峰 凌11尺。
・浮子/忠相グラスムクトップ9番。
・鉤素/450粍+600粍。
・餌 /ミッド2+オールマイティ1+グルダンゴ1+水1。
・予定/団子と角麩のミックス作戦。
06:30〜団子。
11:00〜角麩。
12:00、納竿。
六時半。
いつもと同じような仕掛けとエサでスタート。
普段なら、ここから魚釣りが始まるわけだが、どうにも舟が安定しない。特に舳先が立木の右へ、左へと動きすぎる。
これじゃ駄目だ。何と言うか、普段は岩盤から舟を垂直に着けているのに、今日は竿掛けが確実に上流を向いている。これは意図した結果ではなく、成行きでそうなってしまったのだ。
それと、左右の縄をピーンと張っても、直ぐに弛んでしまう。これは縄を結んだ角度に問題があるのではないか?。今の角度は時計の針で表現すると、大袈裟だが五時三十五分くらい。これが拙いのだろう。周囲を見渡すと、幸いな事に右には沖に露呈している立木がある。コイツを使って工夫すれば、三時四十五分の角度迄拡げられるかもしれない。
…………。
面倒だなぁ。
然し、これを直さないと一日が台無しに成りそうだ。
ブツブツ言いながらも、何とか着舟のやり直しを敢行。
お陰で思惑通り、安定を得る事が出来た。
然し、風が吹いてもビクともしなくなった代償に払ったロスタイムは三十分。結果、未だ殆ど何もしていないのに、時計の針は七時半を廻ってしまった。
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修正後の本日の入釣場所。
いつもと同じ景色に成った |
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本日の入釣場所を側面から。
舳先は写真中心のロープが垂れ下がっている立木。
左は沖に出ているの二本木の手前側、
右は沖の竹の様な立木に結んだ。(写真は帰路に撮影) |
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舟も安定したし、後顧に憂いが無くなった。
ここで新たな気持ちで再始動すると、ドキッ!。待ってました、
とでも言わんばかりのタイミングで浮子が沈み、釣れた。
釣った魚を目で測ってみると、ご主人のおっしゃる通りで壱尺零寸五分程度の所謂、尺上ってヤツ。
…………。
幸先よく釣れたのだが、なかなか二の矢が放てない。
ここで悩んでいると、上流から釣り人が下ってきた。明日の試釣に来ている、お話の好きな方。引き止めていろいろと窺った序でに、橋向こうの混み具合を聞いてみると、
「誰もいません」だって……。
ナヌッ!、誰もいないっ!。オマケに、
「日陰で、風が吹けば涼しいですよ」と、迄言われてしまった。
あーあ、行けばよかった。
悔いてみても、後の祭り。もう舟の着け直しは、嫌だ。
二の矢は放てないし、入る場所にも悔いが残った。
今日はロクな日じゃない。そろそろ気持ちが暗く成りかけていると、浮子が久々に強く動いたので空かさず、オッ!、と竿を上げてみると、次の瞬間には仕掛けが空を舞った。
チキショー、ハリスが切れた!。と思いきや、切れたのはクッション。上の金具を残してブチ切れていた。
なんたる事だ。
ブツブツ言いながらも補修してみたが、道糸がグリップの上側より100粍も短かく成った。これじゃあ、今日は我慢するとしても、次の事まで考えると、作り直さなくては駄目だ。
またも面倒な事が起きた。
ロスタイムの連続にもめげることなく、
再々開出来たのは、九時ピッタリ。
然し、魚の反応はと言うと、一生懸命直した甲斐無く、冷淡なもの。魚信どころかピクリともしない。
これじゃあな。
今日は、頭上に陽が昇る昼頃には納竿するつもりだから、残りは二時間半。思わぬ苦しい展開に……さてどうするか?。
前回は八時半に竿を四尺延長して成功した。時間は無いが今のままでラチが明かない。今回も積極的に竿を替えよう。
思うや否や、竿袋から前回活躍した15尺を出して仕掛けを結ぼうと途端に、思い出した。
この竿の仕掛けは石田島でクチャクチャに成ったんだ。
…………。
オレは今日ココへ何をしに来たのだ!。
泣きそうに成りながら、仕掛けの残骸を手に三度目の仕掛け作りに精を出す。
十時ピッタリ、再々々開。
残りは二時間。その全てを、この15尺に賭ける。
期待を背負わしての第一投。いきなり浮子が力強く沈んだ。
不意をつかれた感じだが、しめた!、とばかりに、竿を上げたその瞬間、再び仕掛けが空を舞った。
道糸が切れるなんて……こんなのって、有りか!。
11尺の仕掛けが切れたのは使用頻度からの劣化だと考えられるが、今のは何だ!。キズでも入っていたのか?。
もう、仕掛けを作り直す気力なんてありゃしない。となると、嫌でも竿を替えざる得ないのだが、あと袋に入っている残りの竿は、9と13と17。考えるまでもない、ここは展開からして17尺だろう。
…………。
十時半。
段々、厭戦気分に成ってきたのだが無理矢理、士気を鼓舞して、
再々々々開。
然し、ここで.この日初めての良い事があった。
二枚目が労せずして釣れたのだ。そして三枚目も四枚目も……。
今迄の嫌な展開から脱却出来て、朝の情熱を取り戻しつつあったが、何故か、釣れたのはこの三枚だけ。
そしてそのまま何事もなく、昼を迎える。
正午。
パッとしない一日だが、未だお天道様はお出ましにならない。
ならば黙って戦闘を続行させたいが、今のままではラチが明かない。普段であれば昼からは角麩釣りと成るのだが、今日に限っては、あと三十分で、ジ・エンドとなるかもしれない。
然し、ここでヤメて帰るよりはいいだろう。消極的動機だが、仕掛けを替えて午後の部と言うか、延長戦に突入。
そして釣れない序で、と言うわけでもないが、竿は普段角麩では馴染みのない15尺を選択する。
一年に一度の15尺での角麩釣り……さて、如何に?。
と始めてみのだが、何もない。蛹爆弾の溶解度の確認にエサを目の前に落としてみると、ワッ!、と稚魚が集合してくる。あれらは誰の子だ。体系と側面のキラビヤさからして、ウグイ、ヤマベ系であるような気がするのだが、それにしては親が針に掛からない。書き始めた序でにだが、この池に棲息している魚の種類はなんだろう。知ってる限りを書いてみると、へら鮒、ブルーギル、大口バス、それと舟の傍に遊びにくる草魚ってとこか。
閑話休題。
浮子が動かざる事、三十分。そろそろ捨て鉢に成りかけた頃に、やっと釣れた。そして三枚を釣りあげた十二時五十分、
遂に、お天道様がお出ましに成った。
本日ただ今、釣った魚の数は七枚。
この数字自体は慣れ親しんでいるので、どって事はないのだが、戸面原ダムにおける釣行史では過去最低だ。今迄のminimumは
二十枚だから大幅更新になってしまう。
それじゃ、寂しいじゃないか!。
…………。
日陰で数時間の制約も何処へやら、ヤメて帰りたくないので、何かと理由をこじつけて、更に戦闘続行。
…………。
続行した甲斐なんて、たいしてありゃしない。
ちっとも、釣れないじゃないか……。
これじゃ己の行為を正当化出来ないだろう。
然し、釣れなくてもオレは釣りが好きだ。
それだけでいいじゃないか。
そもそも、お天道様が怖くて魚釣りなどやってられるか!。
最後は、わけのわからない言葉をホザキながら足掻いてみたが、残念でした。本日の角麩釣果は八枚。
この辺で、先生の言う事を聞かなかったウシロメタサに耐えかねて十四時半、納竿と相成る。
…………。
先生ごめんなさい。
オレは釣りが好きなんです!。
だから、ちょうど百分、お天道様にあたってしまいました。
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入釣場所の脇のワンド。
写真中心の立木に結んでワンドの中心を底釣りで狙うらしい。
今秋か初冬には頑張ってみたい。 |
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この日着用したユニフォームと帽子。
こんな格好で釣りをしているのが私です。
見かける事がありましたら、是非お声がけください。 |
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桟橋に戻り、ご主人と奥さんにいつもの様に釣況を報告してブラブラしていたら、朝、ご紹介頂いた、湖集会の会長さんがおられた。ここは蛮勇を奮って
「自分も三年後に仲間に入れてください」と、頼んだら、
満面の笑顔で、「いいですよ!」だって。
これには、ちょっと嬉しい気分になって、一件落着。
ボートセンターを後に富津中央へと赴く。
釣れなかったけど、其れ也に楽しめた。
お仕舞い。
11尺天々・両団子 1枚(06:30〜09:30)
15尺天々・両団子 零枚(10:00〜10:10)
17尺天々・両団子 3枚(10:20〜12:00)
15尺天々・角麩 8枚(12:15〜14:30)
合計十二枚。
九寸五分〜壱尺壱寸五分。
◯2010年データ。
・釣行回数/15回。
・釣果/325枚。平均/21.67枚。
・次回は八月三十日 戸面原ダムの何処か。
2010年8月20日(金)
吉右衛門
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